第61話 『異邦人召喚』



◇◆◇



『ロンベリダム帝国』の皇帝、“ルキウス・ユリウス・エル=クリフ・アウグストゥス”には『野望』があった。

『ハレシオン大陸』の統一。

この世界アクエラの『偉人』や『英雄』と呼ばれた者達でさえ、まだ誰も成し遂げた事のないその『偉業』を、彼は幼い頃よりその胸の内に秘めていたのである。

とは言え、それは中々に実現困難な話でもあった。

『主義』・『主張』・『思想』は、当然ながら人それぞれだ。

更に、この世界アクエラには、『民族』どころが『種族』さえ違う『他種族』も存在する。

そうなると、その『野望』を実現するとしたならば、最も実現の可能性が高いのが、『武力』による『征服』であろう。

とは言え、いくら『ロンベリダム帝国』が『ハレシオン大陸』屈指の『強国』と呼ばれていても、大陸全土の『国々』や『民族』・『種族』と対立するのは、これも『茨の道』と言わざるを得ない。

となれば、『現代』の常識では測れない『古代魔道文明』の『遺産』・『失われし神器ロストテクノロジー』の『力』に傾倒していくのはある種必然と言えた。

また、『ロンベリダム帝国』が『ライアド教・ハイドラス派』を受け入れているのも、当然ながら計算あっての事だ。

腐っても『ライアド教』は、この世界アクエラの1・2を争う強大な『宗教団体』である。

となれば、『ライアド教』に認められた皇帝となれば、つまりは『神』に認められた皇帝とも言える訳だ。

所謂、『神寵帝思想』である。

『人心掌握』の観点からも、『思想統一』の観点からも、『宗教的権威』を『政治』に取り込む事は決して珍しい話ではない。

更に、『ハイドラス派』は、ルキウスに取っても喉から手が出るほど欲していた『失われし神器ロストテクノロジー』・『召喚者の軍勢』を持参していたのだからルキウスとしては雑に扱う事も出来よう筈もない。

こうして、密かにルキウスと『ハイドラス派』の『蜜月関係』は続いていたのであるーーー。



『ロンベリダム帝国』の帝都・『ツィオーネ』にある皇帝・ルキウスの居城『イグレッド城』の地下には、様々な手段で収集した『古代魔道文明』の『資料』や『物品』が管理・保管されている『メイザース魔道研究所』が存在した。

ここでは、各地から集められた『魔法使い』・『魔術師』・『魔道士』らが、皇帝の勅命を受け『古代魔道文明』の『研究』を独自に行っていた。

『ロンベリダム帝国』は、元々『ハレシオン大陸』においては、所謂『魔法技術先進国』で、『強国』と呼ばれる由縁もそこら辺が大いに関係していた。

それが、ルキウスの代となり、更に発展して『古代魔道文明』にまで手を広げていったのである。

その地下の一室には、『龍脈』を利用した大規模な『魔法陣』が描かれた大きな部屋が存在する。

『研究員』によれば、これは一種の『魔素集約装置』なのだそうだ。

その『魔法陣』の中央には、『ハイドラス派』から持ち込まれた『失われし神器ロストテクノロジー』・『召喚者の軍勢』が恭しく祀られていた。


「いよいよだそうだな、ランジェロ?」

「はっ、陛下!『召喚者の軍勢』に必要な『魔素エネルギー』を蓄える事が叶いました。ニル殿から持ち込まれた『資料』も参考にして、我々でも『再調査』・『再調整』しましたので、まず間違いなくの『力』を十全に発揮する事が可能でしょう。」

「うむ。」


豪華絢爛ながらも、どこか実用性も感じるきらびやかな衣装に身を包んだ30そこそこの金髪碧眼の男、彼が『ロンベリダム帝国』の皇帝、ルキウス・ユリウス・エル=クリフ・アウグストゥスその人であった。

一方、ルキウスにランジェロと呼ばれた60間近のやや白髪混じりの額が後退している男が、この『メイザース魔道研究所』の所長にして、『主席魔道研究員』のランジェロ・カーターであった。


「いよいよですねぇ、陛下、ランジェロ殿。」

「おおっ、これはニル殿。まもなく『召喚者の軍勢』の『起動』が開始されますぞっ!」

「流石は古今東西の『魔法・魔術・魔道』に深い見識をお持ちの『メイザース魔道研究所』の皆さんですねぇ。フロレンツ侯の集めた『研究者』達とはレベルが違いますな。」

「おいおい、ニルよ。余の集めた精鋭達を田舎者の侯爵風情が集めた有象無象と一緒にされては困るぞ。」

「おっと、これは失言でしたな。失礼。」


どこからともなく現れたニルに、ルキウスもランジェロも彼の『実力』を知っているので、今さら特に疑問に思う事なく言葉を交わしていた。

『メイザース魔道研究所』は、帝国でも非常に重要度の高い部署なので、当然ながら『機密性』も極めて高い。

しかし、『ハイドラス派』、特にニルの所属する『血の盟約ブラッドコンパクト』のメンバー達は、ルキウスから『協力者』として認められているので、特別に立ち入りが許可されていた。

三者三様に『召喚者の軍勢』を眺めていたが、ここでその様子に変化が現れる。


「ランジェロ様、『召喚者の軍勢』の『魔素エネルギー』が臨界に達しました。『召喚サモン』開始しますっ!」

「そうかそうかっ!!よしっ、各員『データ』収集を怠るな。今この場には陛下もいらっしゃっている。万が一の場合に備えて、緊急事態にも各員備える様にっ!」

「「「「「「「「「「了解っ!」」」」」」」」」」

「・・・今さらなのですが、この様な場所で『召喚者の軍勢』を使用しても大丈夫なのですか?」


慌ただしく動き始めた『研究員』達を眺めながら、ニルはかつての自身の『経験』から、そう疑問を呈した。


「ご心配なく、ニル殿。確かに以前貴方が使用した際には、『召喚者の軍勢』の『設定』を不完全かつランダムで『起動』させたので、制御不能な『』や『』が『召喚サモン』されてしまった様ですが、貴方が持ち込んだ『データ』と『至高神ハイドラス』様からの『神託』、そして我々の『研究』によって、『召喚者の軍勢』の『真の力』の解明は済んでおります故。古い『文献』によれば、そもそも『召喚者の軍勢』と言うのは・・・。」

「よい、ランジェロ。お主は優秀だが、説明が長いのが玉にキズだぞ?結論だけ申せ。」


『オタク』特有の早口の説明にウンザリした様に、ルキウスはランジェロの言葉を遮った。

うっかりランジェロに水を向けてしまったニルも、内心ルキウスに感謝するのだった。


「こ、これは失礼しました。え、えーと、結論から申しますと、『召喚者の軍勢』の『真の力』とは、複数名の強大な『力』を持った『』を『召喚サモン』する事の様なのです。過去の名のある『偉人』・『英雄』も、その『』であった可能性が高いのですが・・・。」

「ふむ。確かにそれほどの者達を配下と出来れば、余の戦力も大幅に上がると言うモノよな。しかし、それほどの『力』を持った者達に離反されてはかなわんぞ?」

「そこもお任せ下さい。過去の『文献』によれば、『』達の『人格』は希薄で、容易に操る事が可能だったとか・・・。まぁ、万が一の場合に備えて、『同調の指輪』の用意もありますし、最悪の場合は『隷属の首輪』もあります故、準備は万全でございます。」

「ふむ。それならば問題なかろう。」


以前にも言及したが、『隷属の首輪』はそのあまりの強力な効果故に、『国際的』に製造・販売が禁じられている。

しかし、裏を返せば、それほどまでに強力故に、信頼性も高いと言う事でもある。

それ故に、ルキウスもランジェロの発言に納得していた。

とは言え、『隷属の首輪』はぶっちゃけ相当高額な物でもある。

『国際法』を破る事に何ら抵抗はないルキウスであるが、コスト面から見れば出来れば使わずに済ませたいと言うのが本音であった。

皇帝のくせにセコイと言われるかもしれないが、『金策』や『経済』でコケると『大国』だろうと『強国』だろうと、意外と簡単に潰れてしまう事が往々にしてある。

上に立つ者としては、時に大胆に、時に臆病でなければならないモノである。

そうした意味では、ルキウスは相当優秀な『指導者リーダー』であると言える。

もちろん、必要とあらば使用に一切の躊躇ためらいはないのであるが。


「来ますっ!」

「「「っ!!!」」」


そんな会話をよそに、『召喚者の軍勢』の『起動』は粛々と行われていた。

気付けば眩い『光』を放ち、『召喚』は最終段階に向かっていたーーー。



◇◆◇



以前アルメリアが言及した通り、『召喚者の軍勢』には『地球』の『神話』や『伝承』・『伝説』、そして『ゲーム』などの『』を『』する事が可能だった。

先程ランジェロが「過去の『文献』にある『』達の『人格』は希薄であった」と発言していたが、それは当然の事で、過去の『』達には『』故に『』と呼べるモノがなかったので、その『器』を動かす為に便宜的に『召喚者の軍勢』が読み取った『』から『』を与えられたに過ぎないからである。

それ故、普通の人が持つ様な『自立性』や『自主性』に乏しいのである。

『召喚主』に対して従順で、強力な『力』を持つ『』を手に入れられると言う意味では、『召喚者の軍勢』は非常に完成度の高い『アイテム』であった。

しかし、今回の『召喚サモン』にはが生じていた。

フルダイブ用『VRMMORPG』に“ログイン”していたタリスマン達『LOL』のメンバーが、『アバター』ごとこちらの世界アクエラ

これは、『地球』の『技術』が高度に発達し、『プレイヤー』と『アバターデータ』を『フルダイブ技術』によって『同期シンクロ』していた事によって起こった、不幸な“事故”であった。


[こ、ここはっ?]

[何だか、どこかの『研究所』みたいな雰囲気だなぁ~。]

[お~、何だか少し『世界観』変わった感じするぞ?]


しかし、『LOL』のメンバー達は、今だにその事に気付けず、これが『』の新たな『』であると思い込んでいた。

まぁ、しかしこれも当然であろう。

いくら『マンガ』・『アニメ』・『ゲーム』などで、もはやテンプレ化した『異世界転生』・『異世界転移』ではあるが、まさかそれが自身の身に起こるとは誰も思わないからである。


「やったっ!『召喚サモン』は成功したぞっ!」

「こ、これは凄いっ!の『ステイタス』は尋常じゃないぞっ!?」


『データ』を計測していた『研究員』達は、にわかに活気づく。

『LOL』のメンバーは完全に置いてきぼりであった。


[あれっ?何かこの『NPC』達、何言ってるか全然分かんないんだけど・・・。]

[確かに。今までそんな事無かったですよねぇ~?『』の“”かなぁ~?]

[・・・言語を理解する『アイテム』なんかあったっけ?]

[もしかしたらあるかもしれませんね。よく分からない『アイテム』も多かったですし。]

[・・・あれっ?『ステータスオープン』出来ないんですけど・・・。]

[えっ!?・・・あれ、本当ですね・・・。]

[つか、『UIユーザーインターフェイス』も無いんだけど・・・。]

[より『リアリティ』を求めて、って訳でもないですよね?使いづらいだけですしねぇ~。]

[一時的に“消す”だけならともかく、『プレイヤー』の任意で出なければそれはただの『』ですよね。]


アキトは、自身の『英雄の因子』の『能力』である『言語理解』によってこちらの世界アクエラの言語を習得していたが、『アバター』が強力な『力』を持っていても『LOL』のメンバーは一般人であり、特殊な『能力』を有している訳ではない。

それ故、当然ながら別の『世界線』に来れば『言葉』は通じる筈もない。

その事に違和感を覚えて、『LOL』のメンバーは自身の状態を把握しようと『ステータス』を確認しようとしたが、それも反応しなかった。

まぁ、これも当たり前である。

この世界アクエラは、まぎれもなく『』だからである。

それ故、『道具』や『技術』もなしに、『ゲーム』の様に『ステータス画面』を『立体投影』する事は不可能である。

しかし、それでも『LOL』のメンバーはまだ楽観的であった。

確かに『ステータス』から任意で“ログアウト”する事は未知の『』で出来ないが、『フルダイブ技術』には“安全装置”として、『現実』の身体が『生理現象』などを訴えた際には強制的に“ログアウト”する機能が備わっているからである(そうした『機能』がなければ、特に『廃プレイヤー』のベッドの上は割と悲惨な事になってしまうからだ)。


[まぁ、しばらくは様子を見てみるか。]


そんな訳もあって、『LOL彼ら』は慌てふためく事もなく、事のなりゆきを見守る事としたのだった。



部下から続々と報告を受けていたランジェロは、血走った眼でそれを熟読していた。

一方のルキウスとニルは、若干蚊帳の外であったが、『専門家』であるランジェロ達の『仕事』が一段落つくのを根気よく待ち、初めて見る『』である『LOL彼ら』を観察するのだった。


「何だか、少し変わった格好をしておるな。」

「そうですねぇ~。しかし、いささかを感じます。『歴戦の猛者』の様な雰囲気を漂わせていますが、『武器』も『防具』も使、その立ち振舞いは素人のです。何だかちぐはぐな印象を受けますねぇ~。まぁ、“敵対”の意思は感じられませんがね?」

「ふむ。」


ニルのその感想も当然のモノだ。

LOL彼ら』の『アバターガワ』は、立派な『騎士』や『狩人』や『魔道士』などであるが、その『プレイヤー中身』は一般人だ。

自身の『才覚』で、S級冒険者クラスの『実力』を持つに至ったニルからしたら、不自然な印象を受けるのも否めないだろう。

と、ここで、ランジェロが動いた。

どうやら『LOL彼ら』とコンタクトを取ろうとしている様だ。


「始めまして、『勇者』達よ。私はランジェロ・カーターと申します。」

[[[[[[[[[[???]]]]]]]]]]

「・・・『言葉』が通じてないのではないか?」

「おそらくそうでしょう。彼らは独自の『言語』を先程話していた様に見えましたから。」

「・・・おかしいな。過去の『文献』によれば『言葉』が通じないなんて事は無かったのだが・・・。」


それもその筈である。

先程も言及したが、過去の『』達は、『召喚者の軍勢』が読み取った『』から『』を与えられるので、『言語機能』もこちらの世界アクエラを基準に与えられる。

しかし、『LOL彼ら』は、『アバター』は『』だが、それにくっついてきてしまった『人格』は『同期シンクロ』していた『プレイヤー』のモノだ。

それ故に、『』を与える必要がないので、必然的に『言語機能』が与えられずに、『言葉』が通じないといった現象が起こってしまったのである。

ブツブツと呟きながら、ランジェロは次の手段を模索した。

そして、すぐに思い当たり、ランジェロは『研究員』達に指示を出した。


「諸君、『同調の指輪』を『勇者』達に与えたよ。確か、『同調の指輪』には『意志疎通』を可能とする『効果』あったと記憶しているが・・・。」

「あっ!確かにそうでしたねっ!」

「何にせよ、『言葉』が通じないと話になりませんからな。」


急ぎ『同調の指輪』を持ってきた『研究員』達は、ボディランケージで『LOL』のメンバーに身に付ける様に伝える。


[身に付けろと言っているのだろうか?]

[そのようですね。]

[特に怪しい『気配』は感じないが・・・。]

[ああっ!『パッシブスキル』ですか?]

[そうです。『盗賊』系の『スキル』ですね。]

[なら大丈夫ですね。もしかしたらこれで『言葉』が通じる様になるのかもしれませんし。]

[その可能性は高いな。身に付けてみるか。]


今だにこの世界アクエラを『仮想現実VR空間』であると思い込んでいる『LOL彼ら』は、すでに『パッシブスキル』など存在しないのにも気付かずに(正確には『直感』的なモノに置き換わってはいるのだが)、特に疑問にも思わず『同調の指輪』をはめるのだった。


「どうですか、『勇者』達よ。私の『言葉』が分かりますか?」

「おおっ!分かるぞっ!」

「中々面白いですね。『異世界』感を出すでしょうか?」

「ああ、通じた様ですね。では改めまして・・・。始めまして、『勇者』達よ。私はランジェロ・カーターと申します。今回は、我々の『召喚サモン』に応じて下さって、誠にありがとうございます。」

「やはり、儂らがおった『』とは別の『』の話の様じゃな。」


召喚サモン』と言う『単語』を聞き、ティアはそう結論付けた。


「さて、早速ですが、『勇者』達には我が陛下の下で働いて貰います。」

「これは『』なんだろうか?」

「質問、よろしいですか?」

「・・・はっ?」

「ですから質問です。『情報』もなく我々も“はい”とは言えませんからね。」


ポカンとしたランジェロに、『LOL』を代表して『ギルド長』であるタリスマンが言葉を繰り返した。

『ゲーム』においては、『攻略』の『ヒント』として、『NPC』から『情報』を得るのは基本中の基本である。

しかし、ランジェロとしては、タリスマン達がそんな反応をするのは予想外であった。

と、言うのも、過去の『文献』でも、『』達は『召喚主』に従属したとあるし、今回は些か様子が違うが、それでも『同調の指輪』を身に付けさせたので、まず間違いなく『LOL彼ら』が自分達に対して恭順になると思い込んでいたのである。

これは、ランジェロ達の『同調の指輪』に対する『誤解』によるであった。

ランジェロ達は『同調の指輪』が『隷属の首輪』の『下位互換』であると『認識』していたが、そうした『部分』も内包してはいるが、『同調の指輪』の『真価』は別の所にあった。

まぁ、これは後述するとして、タリスマンは早速質問に取り掛かった。


「ここは“どこ”なのでしょうか?」

「・・・ふむ、雲行きが少し怪しくなってきおったな。」

「そうですねぇ~。お聞かせいただいていたお話とは大分食い違う様ですし。」


その中で、ルキウスとニルだけが余計な『』を持っていなかった為に、ある意味冷静だった。

それ故に、『』とは言えタリスマン達を『』と『認識』しているので、ここでランジェロが余計な事を話す前に待ったをかけるのだった。


「・・・しばし待たれよ、『勇者』達よ。」


生来持つ『高貴さ』と『カリスマ性』、『帝王学』を学び後天的に身に付けた『人身掌握術』により、よく通る声でルキウスはタリスマン達に呼び掛ける。


「あ、貴方は・・・?」


本物の“皇帝”と『LOL彼ら』“一般人”とでは、そもそも役者が違う。

謎の『存在感』に圧倒されて、タリスマンはそう呟くのだった。


「余は『ロンベリダム帝国』の皇帝、“ルキウス・ユリウス・エル=クリフ・アウグストゥス”である。『勇者』達を喚んだのは余だ。まずは『召喚サモン』に応じてくれた事に礼を言おう。」


『演説』でもする様に、ルキウスは大仰に立ち居振舞う。

その中で、さりげなくランジェロを下がらせた。

人を扱う事に長けた者故に、その仕草には一切の違和感がなかった。


「さて、早速『勇者』達を喚んだ経緯を説明させて貰いたいが、流石にこの様な場所では些か礼を失するだろう。余の自慢の『サロン』に招待する故、そちらで話させて貰おう。誰か、『勇者』達を案内せよ。」

「「「「「はっ!」」」」」


一瞬で『場』の『主導権』を握り、自身の都合の良い様に、しかし、不自然でない様に『流れ』を決めてしまうルキウス。

ルキウス自身には、ランジェロ達の様な『専門知識』はなく、また、ニルや『LOL』のメンバー達の様に『強者』ではないが、事『』においては海千山千の猛者であった。

ルキウスの側に控えていた近衛とは別に、世話役と思わしきメイド達が即座にタリスマン達の誘導にかかる。

その間に、ルキウスはランジェロを呼びつける。


「・・・『勇者』達奴等使?」

「は、はっ、それは間違いなくっ!『勇者』達彼らの『ステイタス』は全員レベル500です。」

「ご、500っ!?」


ランジェロの言葉に一番衝撃を受けたのはニルだった。

ニルは、S級冒険者クラスの『実力』を誇る『使い手』だが、そんな彼でさえ、今現在レベル400そこそこしかない。

彼の年齢を考えると、これ以上『実力』を伸ばすのは中々に難しい話であった。

そんな彼を大きく引き離し、もはや『神話』や『伝承』・『伝説』でしか語られる事のないレベル500カンストの者達が複数名存在するのだ。

多少の『』は感じるが、ニルは純粋な『ステイタス』由来の『身体能力』で『LOL彼ら』に対抗する事は不可能だと理解した。


「ふむ。ニルの反応を見るに使。」

「しかし、陛下。予定と違い、『勇者』達彼らを陛下の傘下に収めるのは難しいかもしれません。」

「ふむ。『勇者』達奴等が恭順を示さなかった件であるな?まぁ、多少予定は違ったが、それはどうとでもなる。」


ランジェロの進言に、ルキウスはそう応えた。


「離反される危険性は出てきてしまったが、そこは上手くやるとしよう。いくら『』と言えど、いくら『強者』と言えど、結局は『』だ。必ず食指を動かす点がある。それが『金』なのか『名誉』なのか『女』なのか、あるいは別の『何か』なのかは今はまだ分からんが、そこを見極めれば『』とする事はそう難しい話ではない。後は、しっかり『』を握れば良い。まぁ、任せておけ。」


自信満々にルキウスはそう言い切った。

この『大国』・『強国』を手中に収める稀代の『政治家詐欺師』に取っては、この程度の事態は問題ですらない。

ルキウスは『LOL彼ら』を恭順させ絡めとるべく、思索に耽るのだったーーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『LOL』のメンバー達の、この世界アクエラでのステイタス。



名前:タリスマン

性別:男

種族:人間

職業:『LOL』ギルド長、『近衛騎士ロイヤルガード

年齢:26歳


レベル:500

HP:5000

攻撃力:4900

防御力:5000

力:4900

耐久:5000

器用さ:4700

敏捷性:4700

素早さ:4700

知性:4700

精神:4700

運:2639

魅力:4700


魔素感受性:50

魔法習熟度:0


(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・善

『LOL』ギルド長

称号:戦士ファイター剣士ソードマン聖騎士パラディン神聖騎士ホーリーナイト近衛騎士ロイヤルガードなど

特殊技能:剣術、槍術、斧術、盾術など)



◇◆◇



名前:N2

性別:男

種族:ハーフエルフ族(『アバター』の見た目上)

職業:『LOL』メンバー、『砲撃手ガンナー

年齢:23歳


レベル:500

HP:4700

攻撃力:4800

防御力:4800

力:4800

耐久:4800

器用さ:5000

敏捷性:4900

素早さ:4900

知性:4700

精神:4700

運:3680

魅力:4700


魔素感受性:50

魔法習熟度:0


(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・中立~善

『LOL』メンバー

称号:狩人ハンター弓使いアーチャー狙撃手スナイパー野伏レンジャー砲撃手ガンナーなど

特殊技能:剣術、弓術、砲術など)



◇◆◇



名前:キドオカ

性別:男

種族:人間

職業:『LOL』メンバー、『忍者ニンジャ

年齢:30歳


レベル:500

HP:4700

攻撃力:4700

防御力:4700

力:4700

耐久:4700

器用さ:5000

敏捷性:5000

素早さ:5000

知性:4800

精神:4800

運:2169

魅力:4700


魔素感受性:50

魔法習熟度:0


(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・悪~中立

『LOL』メンバー

称号:盗賊シーフ密偵スカウト追撃者チェイサー暗殺者アサシン忍者ニンジャなど

特殊技能:体術、剣術、格闘術、忍術など)



◇◆◇



名前:ウルカ

性別:女

種族:人間

職業:『LOL』メンバー、『大司教アークビショップ

年齢:20歳


レベル:500

HP:4700

攻撃力:4700

防御力:4700

力:4700

耐久:4700

器用さ:4700

敏捷性:4700

素早さ:4700

知性:5000

精神:5000

運:2465

魅力:4700


魔素感受性:100

魔法習熟度:1000


(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・極善

『LOL』メンバー

称号:聖職者クレリック神官プリースト高位神官ハイプリースト司教ビショップ大司教アークビショップなど

特殊技能:体術、杖術、根術、白魔法、神聖魔法など)



◇◆◇



名前:アラニグラ

性別:男

種族:魔族(『アバター』の見た目上)

職業:『LOL』メンバー、『暗黒魔道士ダークウィザード

年齢:25歳


レベル:500

HP:4700

攻撃力:4700

防御力:4700

力:4700

耐久:4700

器用さ:4700

敏捷性:4700

素早さ:4700

知性:5000

精神:5000

運:3247

魅力:4700


魔素感受性:100

魔法習熟度:1000


(特記事項:『異邦人』、『異能力者』、『カルマ値』・極悪

『LOL』メンバー

称号:魔法使いマジックユーザー魔道士ウィザード大魔道士アークウィザード黒魔道士ダークメイジ暗黒魔道士ダークウィザードなど

特殊技能:杖術、短剣術、黒魔法、暗黒魔法、古代語魔法など)



※・『TLW』時の『ステータス』はこの世界アクエラ基準の『ステイタス』に再構築されている。

・『スキル』・『魔法』に関しては、『TLW』時のモノをそのまま使用可能。ただし、この世界アクエラ基準に『変化』あるいは『劣化』している場合がある。

・なお一部『スキル』に関しては“感覚”に置き換わっている。


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