第5話 6歳になりました。



みなさん、ご無沙汰しております。

西嶋明人にしじまあきと、改め、アキト・ストレリチアです。

先日、6歳の誕生日を迎え(『出生届』を提出した日を、便宜上の誕生日とした)、結構良い感じに成長していると思います。

僕が住んでいる『シュプール』は、『魔獣の森』などと呼ばれる森林地帯の、比較的浅い場所にあります。

地理的に説明すると、『アクエラ』の『ハレシオン大陸(地球で言う所の、ユーラシア大陸。世界最大の大陸)』、その南東にある国『ロマリア王国(一応、僕はその国の王子)』の北側に広がる大森林地帯が『魔獣の森』です。

王都『ヘドス』からは、数百㎞、一番近い村『ルダ村』ですら、10㎞以上離れています。

現代日本に住んでいた時は、「何だそんな程度の距離か」と感じましたが、こちらには電車もバスも飛行機もありません。

基本は、徒歩。

場所により、馬や馬車がせいぜいです。

しかも、綺麗に舗装された道など『街道』くらいしかありませんから、移動にはかなり時間を取られてしまいます。

そんな、訪れにくく、しかもかなり危険な場所にも関わらず、結構人が訪れます。

と、言うのも『魔獣の森』は薬草の宝庫で、素材となる『モンスター』や『魔獣』も数多く生息しているので、『冒険者』にとっては、良い稼ぎ場だからです。

『冒険者』と言うのは、主に探索・採取・討伐を生業とする、ぶっちゃけ『何でも屋』です。

その仕事内容は多岐に渡り、村や街の内外で依頼される『代行業者』のような仕事から、治水や街道整備といった国や領主から依頼される『公共事業』の肉体労働者としての仕事、指名手配された盗賊団やモンスターなどの捕縛・討伐をする『賞金稼ぎ』など、様々です。

『冒険者』と聞くと、『荒くれ者』みたいなイメージを持つ人もいますが、そのイメージはある意味当たっていて、ある意味違います。

元々、『冒険者』は、他国からの『移民』や『戦災孤児』などが、盗賊稼業に身をやつしてしまった事から端を発します。

盗賊ですから、当然捕縛や討伐の対象になりますが、その頃その任に就いていたのは、村や街の『憲兵』、国の『騎士団』、村や街の有志で募る『自警団』でした。

しかし、他国から流入する『移民』や『戦災孤児』などを、水際で止める手立てなど無いに等しく、日々増え続ける盗賊に対して、捕縛側の絶対数が足りなくなってしまいました。

元々治安維持の任を持つ『憲兵』はともかく、『騎士団』には他の任が、『自警団』に至っては、自分達の本来の仕事があります。

被害状況や被害額が増加し、人材の確保が急務となった国は、発想を転換して、ある一計を案じました。

つまり、盗賊自体に盗賊の監視や捕縛・討伐の任を与える事を考えたのです。

『戦争』などの事態に見舞われ、行き場を無くして流入してきた『移民』や『戦災孤児』の中には、仕事に就けず、仕方なく盗賊になった者達も少なからずいました。

そういう者達に、『市民権』と『仕事』を条件に交渉をしたのです。

それが、『冒険者』の始まりでした。

『市民権』と『仕事』が得られると言う事で、彼らは精力的に活動しました。

最初は、『傭兵』のような仕事から始まり、やがて危険で誰もやりたがらない仕事を率先してやり、需要や立場を高めて行きました。

そうしたのち、『冒険者』側と国の合意の元、利益の確保と『移民』や『戦災孤児』などの犯罪予防の『受け皿』として、『冒険者ギルド』を発足して、今日の様な形になったのです。

今では、各国に『冒険者ギルド』の支部は存在します。

『冒険者ギルド』に登録すると、仮の『市民権』を得る事が出来るので、一部を除き、各種行政サービスを受けられます。

その事により、住居の確保がしやすくなり(もちろん資金は掛かります)、ある一定以上貢献すれば、本物の『市民権』を得て、定住・転職する事も可能になるのです。

今日では、若者、特に男性の若者の『憧れの職業』の1つになりましたが、元が盗賊から始まっているので、『荒くれ者』のイメージが付いて回るのです。

もちろん、中にはそういった者達も存在しますが、ある一定以上のキャリアを持つ『冒険者』には殆ど居ません。

なぜなら、彼らが普段相手にしているのは、道理の通用しない凶悪な盗賊団や、危険なモンスターですから、ただの『荒くれ者』に務まるような仕事では無いからです。

慎重かつ現実的でシビアでないと、生き残れない、と言う事ですね。

長々と説明して来ましたが、何が言いたいかと言うと、「それでもアホはどこにでもいる」と、言う事です。

今も目の前で、半年ほど前に我が『シュプール』の『同居人』になった『鬼人族』のおねーさんと、『冒険者』のパーティーが揉めていますから、ハイ。



◇◆◇



アルメリア様の『予言』通り、この6年間、半年に一度くらいの頻度で、『神々』の『使徒』達が、ここ『シュプール』を訪れた。

しかし、『領域干渉』の効果で、『シュプール』内はおろか、庭先にすら進入出来た者達は皆無だった。

アルメリア様によれば、『領域干渉』とは、本来は『領域』、つまり『テリトリー』を自身の制御下に置き、何らかの影響や効果を付随させる『技術』なんだそうな。

僕は、イメージ的に、神社のような場所を護る『結界』みたいなモノと解釈している。

そういった『技術』は、ここ『アクエラ』にも在るそうなのだが、アルメリア様の『領域干渉』は、『管理神権限』を使い、更に高度な『応用』まで施されていた。

ここ『シュプール』には、ホブゴブリンと言う、強面の『妖精執事』達がいる。

今ではすっかり仲良しだが、最初の頃は顔も含めて怖かったなー。

まぁ、それはともかく。

『地球』における『結界』とは、悪しき存在の侵入を防ぐ、あるいはその力を軽減させるイメージだが、『アクエラ』だと、『結界』=『シールド』で、『人間種』以外の侵入を一律で防止するモノである。

『地球』と違い、目に見える『脅威』としての『モンスター』がいる世界ならではの『技術』と言えるが、それだと『ホブゴブリン』のような『善性の妖精』なども進入不可能である。

アルメリア様の『領域干渉』は、それとは違い、『人間種』・『妖精』・『モンスター』を問わず、『害意』や『悪意』を持たない存在は進入出来るのだ。

逆に言うと、進入出来ない存在は、『害意』や『悪意』がある、と言う訳。

『前世』の事も合わせると、40近い年齢を持つ僕としては、そういう『思惑』や『計略』は在って然るべきモノだとは思う。

マンガ・アニメ・ゲームでも、そういった要素は盛り上げる為にも必要だしねー。

しかし、それは大人同士の話で、『英雄の因子』を持つとは言え、見た目6歳の僕に対して、『害意』や『悪意』を持って近付こうとするのは、流石に擁護出来ない。

そんな訳で、『領域干渉』の効果を僕は最大限利用させて貰っていた。

『領域干渉』の効果範囲は、『シュプール』を起点に半径1kmくらいである。

ここまで進入出来た者達には、話を聞く価値があり、進入出来ない者達には、話をする価値すら無いと一種の線引きをしたのだった。

変な事に巻き込まれてはかなわんからなー。

が、今だ進入出来た者達は皆無。

いやいや、小1くらいの子ども(見た目)に、『害意』や『悪意』を持って近付こうとする『大人』って・・・。

『地球』で言う所の、『変なおじさんorおばさん』やん。

『アクエラ』には、『犯罪者』しかおらんのかいっ!?

と、思っていた時に、初めて接触に成功したのが、この『鬼人族』のおねーさんだった。



「だ~か~ら~、入って来れないなら、貴方達にはその『資格』が無いんだから、さっさと立ち去ってよって、言ってるのっ!」


『鬼人族』のおねーさん、『アイシャ』さんが『冒険者』パーティーの男達にそう言った。

それに、パーティーリーダーらしき男が答える。

どうせ入って来れないなら、その内立ち去るのに、アイシャさんは、律儀と言うか、何と言うか・・・。


「ちっと待ってくれよ、『鬼人族』のねーちゃん。俺らは、『魔獣の森』探索で疲労しちまったから、目に入った建物で休憩させてもらおうとしただけよ。」


発言の通りなら、助けるのはやぶさかでは無いが、『領域干渉』に引っ掛かってたら『アウト』ですよ。

今も、5人組の男達が、下卑た目でアイシャさんを見てるし。

アイシャさんは、まだ14歳だが、『鬼人族』特有の『角』と170を越える身長を除けば、男としては非常に魅力的に見えるだろう。

しなやかな肉体に、ボン・キュッ・ボンのダイナマイトボディ。

可愛いと言うより、綺麗と言った感じの顔立ち。

男としては理解できんでも無いが、そこ、情欲を向けないように。

しかし、その事からも、彼らが『冒険者』としてまだまだ未熟である事の証明だった。

『鬼人族』と理解しておきながら、美女(美少女?)1人だから油断してるのかもしれないが、認識不足である。

『鬼人族』と言うのは、高地に住む『少数種族』であり、特徴的な『角』と高い平均身長(男性は2m、女性は180㎝)を除けば、見た目は『人間』とあまり変わらない。

しかし、その身体能力は『人間』の比では無いのである。

『アクエラ』には、『レベル』と言う恩恵があるが、それでもむやみやたらと敵対すべき相手では無い。

それぐらい、身体能力に基本スペックの差があるのだ。

『鬼人族』とまともに戦り合うならば、最低でもレベル300は欲しい所だ。

おっと、『前世』のゲーム脳が出てしまった。

つまり、彼らはそこまで理解していないので、『未熟』と言ったのだ。

しかも、物陰からこっそり様子を窺っている僕に気付かず、伏兵らしき存在もいない。

そんな事では、『魔獣の森』の奥に入ったら全滅ですよー?

今は、『領域干渉』の内外で揉めているが、ここに赤毛のおっぱい女神ことアルメリア様まで現れたら、この男達のボルテージは上がりきってしまい、何を仕出かすか分かったモノでは無い。

未熟かつ小物臭がする者達は、後先考えない事が多い。

侵入出来ないなら炙り出せば良い、と言う事で、火でも着けられたら、森に暮らす者としては堪ったモノでは無いし。

そろそろ介入するか。

特に気負う事も無く、僕は『冒険者』パーティーとアイシャさんの間に進んだ。

ここに来て、やっと僕の存在に気付く男達。

アイシャさんはとっくに気付いていたぞ?


「あっ、アキト。危ないから、『シュプールうち』に行っててっ!」


若干心配性な感じに僕に声を掛けるアイシャさん。

過保護過ぎません?

子ども扱いしないでよねっ!?

いや、見た目は完全に子どもですけどね?

その様子に、男達は一斉に僕を取り囲んだ。


「へぇ~、ボウズ。『鬼人族』のねーちゃんの『身内』かい?ボウズから、言ってくんねぇか?『結界』解いて、俺らを中に入れてくれるようによぉ。」


ニヤニヤと、威圧的に僕に言う。

確かに、ただの子どもなら怖がって言う事聞いちゃうかもね?

ま、ただの子どもじゃないし、そもそも、『魔獣の森』の浅い場所とは言え、こんな場所にいる子どもは只者じゃないですよー?


「お兄さん達が、何の用があってここにいるのかは知らないけど、アイシャさんの言う通り、『結界』を通れないなら、『資格』が有りませんので、どうぞお引き取り下さい。」


一応退去勧告をする。


「んな事言わずによぉ~、頼むぜぇ~。」


1人が話し掛けながら注意を引き、他の者達は僕を捕らえようと動き始めていた。


「アキトっ!」


焦った様子で、アイシャさんは僕の名を叫ぶ。

ちゃんと分かってるから、大丈夫っス。

・・・ところで話は変わるが、僕は『前世』で『ゲーム』をやっていた時に、たまに疑問に思った事がある。

『システム』上、そこまでリソースを割けないのだろうが、男性が股関を強打しても、『ゲーム』ではダメージ量が上がったり、行動不能ペナルティが発生する事は無いのである。

ここ『アクエラ』も、『ゲーム』に良く似た世界で、『HP』の『概念』や、防御力・耐久などが存在するが、やはり『現実』なので、「いや、悶絶モンでしょっ」って攻撃は、ちゃんと反映(?)されるのだ。

つまり、何が言いたいかと言うと、


「「「「「うぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」」」」」


は超有効なんですわ。

いや、鬼かと言われましても・・・。

一流や超一流と呼ばれる『冒険者』達は、そう言った対策もしっかりしているし。

下着の上、もしくは、ズボンの上に『ファウルカップ』の様な動きを阻害しない防具をしっかり身に付けているのだ。

彼らは経験上、股間攻撃が恐ろしいモノだと知っているからである。

笑い話の様に聞こえるが、そんな動きや力が大幅に制限される状態で、『モンスター』に囲まれたら一貫の終わりだからな。

その事から、彼らは『中級冒険者』に成り立ての、『初級冒険者』の域を出ない『未熟者』であると確定した。

そもそも、6歳くらいの子どもの身長って、世のお父さん方にはある意味『天敵』だ。

頭が、股間、もしくはお腹辺りの高さしかなく、しかも、その状態でやたら元気に飛び込んできたりする。

『市役所』時代、何度か悶絶しているお父さん方を目撃したモノである。

世のお父さん方、本当にご苦労様です!(T_T)ゞ

僕は、持っていた杖で素早く5人の股間を強打すると、『詠唱』を開始した。


「アキト・ストレリチアの名において命ずる。

森と大気の精霊よ。

いにしえの盟約に基づき、我が敵を拘束せよ。

出でよ、『バインド』!」


『印』を結び『魔法陣』を描きながら、『詠唱』を交えて、『魔法』を発動させる。

『バインド』とは、木の根やツタなんかで、敵対者を拘束する地系術式である。


「「「「「なっ!?はっ、うぐぅ、はなせぇ!おっ、ふぅぐぉう・・・!」」」」」


悶絶しながらも、のたうち回る男達。

地に落ちたイモムシみたいだなぁ。


「離す訳無いでしょ?人の警告無視して、僕を捕らえようとしたみたいだし。『冒険者』なら常識だろうけど、こんな人気の無い所でいさかい起こしてたら、何をされても文句言えないよ?ま、それが狙いだったんだろうけどねぇ~?」


ここ『アクエラ』では、法整備が整っていないのが現状だ。

村や街の中ならともかく、街道とか森の中なら『犯罪』なんてやりたい放題である。

ま、だからこそ、返り討ちにしても、特に問題はないのだが。


「あ~ん、アキト~。危ない事はしちゃダメだよ~。」


アイシャさんが、いつの間にか後から抱き付いてきた。

柔らかくて、良い匂いがします。

まぁ、好み的にはどストライクなのだが、歳がねぇ。

後、5年、10年したら、最高なんですけどね。

あ、僕がまだ6歳でしたね、てへぺろ。


「アイシャさんもね。こういう人達に、逐一対応しなくて良いから。放っておけば、『結界』に阻まれて退散するし。」


逆に、アイシャさんや、アルメリア様(彼女は不用意に姿を晒したりしないが)なんかの姿を見つけてしまうと、男達なら強く興味を引かれちゃうしね。


「うん、これからは気を付けるよ~。」


すりすりと、僕を撫でながら反省の弁の述べる。

あの、離れて貰えませんかねぇ?

男としては、嬉しいが、恥ずかしくもある。


「この人達は、どうするの?」


アイシャさんは、悶絶しながら拘束されてる男達イモムシ達を見た。


「特に何かされた訳じゃないけど、危害を加えようとしたのは明白だし、一応『ルダ村』の『冒険者ギルド支部』に突き出して来るよ。ついでに、ストックしてある『薬草』や『素材』なんかも換金して、生活必需品を買ってくるかなぁ・・・?アイシャさんも一緒に行く?」

「う~ん、私もアキトと行きたいけど、この国の『人族』と『鬼人族』はあんまり仲が良くないからね~。『ルダ村』の人達は大丈夫だろうけど、『冒険者』を連行する『鬼人族』は外聞が良く無いしね。今回は、止めておくよ~。」


確かにここ『ロマリア王国』は、『鬼人族』だけでなく、『他種族』とあまり良好な関係では無い。

友好的に接しているのは、『ドワーフ族』くらいのモノだろう。

他国だと、『鬼人族』は寧ろ優秀なアタッカー兼壁役として、特に『冒険者』人気が凄いらしいが。


「そう?じゃあ、ちょっと行ってくるよ。アルメリア様によろしく言っておいてね。」

「うん、分かった~。気を付けてね~?」

「はいはい。」


僕は、自分の使役している『魔獣』達を呼び出す。


「お~い、クロ~!ヤミ~!!出掛けるぞ~!!!」


僕が声を掛けると、『シュプール』の方から、二匹の狼が走ってきた。

体長2mを越える二匹は、『白狼はくろう』と呼ばれる『魔獣』で、『魔獣の森』の深部では、食物連鎖の頂点に君臨する『森の主』である。

が、この二匹は見た通り『黒い』ので、『群れ』から赤子の頃に『見捨てられた』。

自然界でも、しばしば目にする『異端児』の『追放』である。

それをたまたま僕が見つけて、保護したのだ。

以来、面倒を見てしつけをして、主従関係をしっかり教え込んだ。

元々、知能の高い『魔獣』のようで、先程のように『領域干渉』に引っ掛かる様な者達には、始めは警戒するのだが、侵入出来ないと分かると、完全に放置する。

入ってこれないと、しているからだ。


「「「「「うっ、ぐふぅ、ひっ、ひゃあぁ、うわぁ!」」」」」


男達イモムシ達もクロとヤミの出現には、悶絶し、拘束されながらも、驚愕し、脅えている。

うん、単純にデカイもんね。

しかも、その『爪』と『牙』は鋭利で、人間の身体など軽々と引き裂きそうだし。

気持ちは分かる。

これでも、もうちょい大きくなるみたいよ?

僕にモフモフされながらも、男達イモムシ達を軽く威嚇している。


「「グルルルル(んだ、こいつら・・・!)」」


これこれ、止めなさい。

漏らされたらかなわない。


「これから『ルダ村』に行くよ。悪いけど、クロとヤミにはこの人達を連行してってもらうね。」

「「ワフゥ~(えぇ~・・・。)」」


う~ん、あまり気乗りしないんだろうなぁ。

『白狼』は非常にプライドが高い。

自分より、『格』、『序列』が低い者達を背に乗せる、なんて事は有り得ないのだ。

クロとヤミも、その『習性』をしっかり受け継いでいる。

アイシャさんでさえ、触ったり乗せて貰える様になるまで、随分時間が掛かったからなぁ。

一応、僕の『魔法』だけでも行けない事は無いが、『市中引き回しの刑』みたいになるし・・・。

ここは、『必殺技』を使うかっ!?


「頼むよ。もちろん、タダとは言わない。『高級肉』と『ブラッシング』。これでどうかな?」

「ワンッ(マジっすか!?)」

「ガウッガウッ(嘘じゃないっすね!?)」

「当然だよ。交渉成立って事でいいね?それじゃ、2人ずつ頼むよ。僕が1人連れてくから。」

「ワンッ(了解っす!)」

「ガウッ(お任せっす!)」

「・・・何でアキトは、クロちゃんとヤミちゃんの言葉が分かるんだろう?ちゃんとコミュニケーションが成立してるモンね~?」


アイシャさんがぽつりと呟く。

それは、僕にも分からないっ!

多分、『英雄の因子』(ご都合主義)の力だと思うけど・・・。

騒がれたり、暴れたりして、振り落とされても面倒なので、男達イモムシ達を僕が『魔法』で眠らせる。


「アキト・ストレリチアの名において命ずる。

火と大気の精霊よ。

古の盟約に基づき、我が敵を眠りに誘え。

発動せよ、『スリープ』!」


そして、クロとヤミに2人ずつ簡易的にツタで固定して、『薬草』と『素材』も忘れず袋に入れて持ってもらい、1人は僕の『魔法』で連行する。


「アキト・ストレリチアの名において命ずる。

風と大気の精霊よ。

古の盟約に基づき、我が歩みを助けよ。

発動せよ、『クイックムーヴ』!」

「行ってきま~す!」


クロとヤミを引き連れて、僕は『ルダ村』へ向けて出発した。

僕達の移動速度だと、10㎞ちょっとなら、30分も掛からない。

二匹の散歩にはちょうど良いだろう。

アイシャさんに手を降りながら、僕はそう思った。

1人の男を『市中引き回しの刑』にしながら(無慈悲)。


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