第4話 人生設計を立てよう(0歳)



ー翌日ー


昨晩は結局アルメリア様では無く、『ホブゴブリン』達に風呂に入れられちまったぜ・・・orz。

まさか、1日で2度もくっころ状態になるとは思わなかった。

早く大人になりたいなーとか、遠い目をして願ってしまった。

どこの子どもやねん。

まぁ、体は赤子なんですがね?

翌朝目覚めると、アルメリア様が食事にしようと言った。

どこで捕まえてきたのか、昨日見た山羊っぽい動物が、ロッジの庭で草を食べていた。


西嶋にしじまさんが、寝てる間に森で捕獲して来たっス。しばらく、必要になりますし、栄養満点で赤ちゃんには最適なんっスよ。」


ゴクゴクッ。

プハァーッ!

う~ん、確かに旨いが、母乳の方が人間にはいいんじゃないかなー?


「だから、ワタシは母乳なんて出ないっスよ。まだ、ゴニョゴニョした事ないし・・・」


ほぅっ?

その話詳しくっ!

そこん所詳しくっ!!


「い、いいじゃないっスか、別に。そ、そんな事より、今後の話をしましょうよ。」


・・・チッ。

とりあえず、アルメリア様がなぜ介入したか、までは聞きました。

『至高神ハイドラス』の『神託』がどうとか、『15年後』がどうとか言ってたような気がしますけど。


「あ、その『神託』については嘘っスね。そもそも、『英雄』に使命なんて無いっスから。請われて行動した結果、偉業になるってだけっスよ。」


えっ?

でも、『導き手』がどうとか言ってませんでしたっけ?

邪悪な竜を退治せよとか、魔王を倒せとか、そう言う使命なんじゃないんですか?


「その手の話も、請われて行動した結果に過ぎないっス。人々にとっては大変な問題かも知れませんが、ぶっちゃけ『生存競争』っスから。『地球』だとしたら、アフリカのサバンナで、シマウマがライオンに狩られるのと一緒っス。西嶋にしじまさんも自然って残酷だなぁとは思っても、ライオンを責める事は無いっスよね?」


そりゃそうだ。

『弱肉強食』。

まさに自然の摂理か。

シマウマが喰われたくなかったら、全力で抵抗するだけの話か。


「そうっス。その手段が、集団での討伐か、『英雄』に頼んでの討伐かの違いでしかなく、すなわち、『英雄』の使命なんてモノは存在しないって事っス。『神々』が手を出したら大問題ですけど、『土着神』は『アストラル体』しか持たないのでそれも無いっスね。」


なるほど。

それで、『神託』の『世界を救う』ってのは、デタラメだったって事ですか?


「ま、将来的に、そういう使命を与える予定だったとは思うっスけどね?ちなみに、ワタシは『導き手』として西嶋にしじまさんに何かさせる予定は無いっス。ワタシの目的はほぼ終わったっスから。」


例の『縁』の事ですか?


「そうっス。ワタシの目的は、『神々』より先に西嶋にしじまさんとの『縁』を持つ事だったっス。その為に『導き手』のポジションを手に入れたっス。『管理神』は『土着神』より高次元の存在なんで、先に『縁』を結べば『管理神』との『縁』が優先されるっス。『管理神』同士の場合は、元々の所属が優先される。これは昨日言ったっスよね?なので、『忘れられた神』として介入しましたが、『管理神』としてはこれ以上干渉するつもりが無いっス。まぁ、『忘れられた神』として、『15年後』までは成長のお手伝いをするっスが。」


その『15年後』と言うのは?


「それ以上は、この『生体端末』がたもてないっス。まぁ、14、5なら『アクエラ』では立派な大人っスからね。問題無いっスね。なので、後は西嶋にしじまさんの好きにすると良いっスよ。これから色々な『神々』の『使徒』が西嶋にしじまさんを訪ねて来ると思うっスが、ワタシは干渉しないので、西嶋にしじまさんが自由に興味を持った事、やりたい事を決めたら良いっス。」


とりあえず、15年の間に進路を決めるみたいなモノか。

で、他の『神々』の提案する使命なんかに興味を持ったらやってみれば良いと。

いずれにしても、この『アクエラ』についてはよく分からないが、危険な生物もいる様だ。

弱い人でもレベル100はあるって事は、戦える力は身に付けないとまずいだろう。

『魔法』についても、当然興味ある。

そう言えば、レベルってどうやれば上がるんだろう?

ってか、レベルを確認する方法があるんですか?


「もちろんあるっス。『ステイタス』っスね。流石に個人的に所有している人はほとんどいないっスけど、村や街の行政機関に行けば『魔道具マジックアイテム』で調べてもらえるっスよ。『ステイタス』ってのは、『履歴書』みたいなモノなので、特に就職活動に必要になってくるっス。」


やけに現実的だなぁ。

こう、頭の中に『ステイタス』画面が出てくるとか・・・。


「いやいや無いっス。『ゲームの世界』が現実になったのが『アクエラ』だと言ったっスけど、ゲームに似ているってだけで、結局は『現実』っスから。現実から逸脱した事は、出来ないっスよ。『地球』にも、『ステイタス』に似た指標、例えば『自分は~が得意』『あいつは~が得意』ってのが、自他共に感じたり経験から見えてくるっスけど、明確な数値としての『ステイタス』画面なんて頭に浮かばないっスよね?それと同じっス。ま、ス〇ウターでもあれば、話は別っスが。」


何ゴンボールの話だっ!?

しかし、確かにそうだな。

アイツ足速いなぁ~とか、俺足速いなぁ~ってのは、何となく感じる事で、「脚力は、たったの5か。ゴミめ。」ってのは、現実的にはありえない事だ。

明確な足の速さは、タイムを計測して相対的に比較するしかないって事か。


「まぁ、その辺りも結構曖昧っスけどね。調べてもらった『ステイタス』は数値でちゃんと示されているっスから。それも、比較対象がいないと結局はよく分からないっスけど。」


なるほど。


「けど、西嶋にしじまさんの場合、今、行政機関に行っても調べてもらえないっスよ?」


ファッ!?


「いやいや、ご自分の立場を忘れないで下さいっスよ。赤子なのはもちろんですが、『出生届』からしてまだ出されていないっスよ?王族のその手の手続きは、また特別なんですけど、ここでは割愛するっスね。もう関係無いっスから。『忌み子』として誕生してるので、『国』としてまだ『出生届』の受理が済んでないっス。その前に、殺すか幽閉だったんで。なので、西嶋にしじまさんの場合『養父母』が『里子』として登録するか、『冒険者ギルド』で仮登録しないと各種行政サービスが受けられないっス。」


せ、せやった。

ワイ、赤子で『忌み子』やった。

正確な事は分からんが、産まれてまだ1週間も経って無い筈だし、『出生届』なんて出されてる訳も無い。

って事は、名前さえまだ名付けられて無いって事か。


「今回の場合の『養父母』はワタシになるっスね。今度、近くの村に手続きに行くっスよ。名前はどうするっスか?」


・・・。

本来、自分の名前を自分で決める事など無い。

ここで、カッコいい名前を考えるのも良いが、前世の記憶がある以上、どうしても違和感が出てきてしまう。

『ニシジマ』は流石にダメでも、『アキト』は良いんじゃなかろうか?

うん、そうしよう。

危険な生物もそこらにいる世界なんだから、咄嗟の時に自分と分からんと困る事もあるだろうし。


「じゃあ、ワタシのファミリーネームと合わせて、『アキト・ストレリチア』で良いっスかね?」


うん、悪くないんじゃないかな?

ファミリーネームがそれっぽくて良い感じだ。


「了解っス。まぁ、ワタシの『管理神権限』を使えば、いつでも『ステイタス』の確認は出来るっスが。」


おい、こら、おっぱい女神。

これまでの話はなんだったんだ。


「どっちにしても、行政機関での手続きは必要っスから。それに、現時点で『ステイタス』を調べてもレベル1ですし。」


まぁ、まだ赤子だしなー。


「一応『ステイタス』調べてみるっスか?こんな感じって事で。」


うむ、どんな感じかは興味あるな。

是非お願いします。


「了解っス。少々お待ち下さいっス。」


そう言って、おもむろに僕を凝視したアルメリア様は、その後、羊皮紙みたいなモノに何やら書き込んでいった。


「出来たっス。ついでに、『アクエラ』の文字で書いてみたっス。『言語理解』の効果で、読めると思うっスけど、読めなかったら言って下さいっス。日本語で書き直すっスから。」


どれどれ?

うん、見た事も無い文字だが、何故か理解出来るな。

本当に、『英雄の因子』は謎だなぁ。

ある意味『チート能力』だな。

何が発現するかは分からんが。

紙には、次の様に書かれていた。


名前:アキト・ストレリチア(仮)

性別:男

種族:人間

職業:無職

年齢:0歳


レベル1

HP:100

攻撃力:20

防御力:10

力:10

耐久:5

器用さ:6

敏捷性:9

素早さ:8

知性:52

精神:30

運:4

魅力:83


魔素感受性:5

魔法習熟度:0


(特記事項:『英雄の因子』所持者

発現能力:九死一生・言語理解)


なるほど、分からん。

まぁ、それっぽくて良い感じだけど、比較対象が無いとなぁ。

知性・精神・魅力が高いのは、何となく分かるが。

理由としては、前世の記憶と精神年齢、『英雄の因子』の効果って所か?


「ついでに、ワタシの『ステイタス』も書いてみたっス!」


ほう?

どれどれ、比較対象になるかな?


名前:アルメリア・ストレリチア

性別:女性体

種族:高次元生命体(生体端末)

職業:管理神(忘れられた神)

年齢:ヒ・ミ・ツ


レベル∞

HP:∞

攻撃力:∞

防御力:∞

力:∞

耐久:∞

器用さ:∞

敏捷性:∞

素早さ:∞

知性:∞

精神:∞

運:∞

魅力:∞


魔素感受性:100

魔法習熟度:MAX


(特記事項:ワタシが『神』っス。)


おい、こら、おっぱい女神。

数字で書けやっ!!

何、軒並みインフィニってんだよ。

比較対象にすらならんだろうがっ!!!

年齢の『ヒ・ミ・ツ』も、ちょっと腹立つし。

数字なのは、魔素感受性:100だけやないか。


「魔素感受性は100がMAXなんで、『∞』に出来ないんっスよ。」


いや、そういう事ではなく。


「冗談っスよ。こちらが一般的な『ステイタス』の例っス。『ステイタス』は『個人情報』なので、一応配慮して現在生きている人のモノではなく、故人のモノっスが。」


『個人情報』ね。

確かにそうだな。

もしかして、これまでの話から、ゲームにありがちな『鑑定』みたいなスキルってのも?


「もちろん無いっス。『地球』と同じ様に、時間を掛ければ調べる事も可能っスけど。当然、当事者同士が『ステイタス』を見せ合う事も出来るっスよ?でも、当人の許可なく、他人が瞬間的に情報を得る方法は無いっス。せいぜい、『こいつ、強そうだな』とか『こいつは弱いな』って感じる程度っスね。ちなみに、個人の『目利き』としての『鑑定』はあるっス。」


ふ~ん。

なるほどね。

下手にゲームの知識があると『アクエラ』では思わぬ落とし穴がありそうだ。

今後も、情報の刷り合わせは密にやって行こう。

おっと、とにかく、見せてもらおうか、一般的な『ステイタス』とやらの性能を。


「赤い人の真似っスか?」


アンタちょいちょい地球の事に詳しくない?

流石、神な。


「日本の『オタク文化』は結構好きっスよ。」


神では無く、『オタク文化』の好きな外国人に見えてきたわ。

まあ、いいや。

どれどれ。


名前:ナレッチ・コンバー

性別:男

種族:人間

職業:農民

年齢:64(故人)


レベル196

HP:1429

攻撃力:1537

防御力:1491

力:1510

耐久:1486

器用さ:1347

敏捷性:1408

素早さ:1442

知性:1378

精神:1299

運:1311

魅力:1289


魔素感受性:8

魔法習熟度:0


(特記事項:ちなみにこの特記事項と言うのは、一般的に秘匿されるっス。特別な事が書かれる所なので。)


うん。

なんで特記事項が、『PS.』みたいに使われてるのかは置いておいて、これが一般的な『ステイタス』なのか。

『農民』だから力にパラメーターが振られたのかな?


「そうっスね。職業によってやる作業が違うっスから。ナレッチさんの場合、毎日畑で精を出されたって事っスね。同じ『農民』でも、サボったりしたら、この数値にはならないっスから。」


なるほどなー。

ところで気になっていましたが、この『魔素感受性』と『魔法習熟度』というのは?


「それが、所謂『魔法』に関係する数値っスね。」


おおっ!

『魔法』か~。

『魔力』ってのが無かったから、変だなぁ~て思ってたんですよ。


「『アクエラ』では、所謂『ゲーム』の様な『魔力』や『魔力保有量』と言った『概念』は存在しないっスよ。人体に『魔力』を生み出したり保有したりする機能は無いですし、仮にあったとしても、肉体という『器』を介した『魔力』は極めて弱いっス。『魔法』ってのは、神秘的な事象、って以前に、『物質世界』に干渉する力なので、人間個人で保有できる程度の『魔力』では結果はたかが知れてるっスよ。例えば、いくら『魔法』って言っても、個人の『魔力』で雷を発生させる、なんて事は物理的にありえないっス。何故なら雷を発生させるには膨大な自然エネルギーが必要なので、同じエネルギー量+物理世界に干渉するエネルギーが必要になるっス。個人で一回の放電量が、数万~数10万アンペア、1億~10億ボルト、電気使用量に換算すると900GWを越えるエネルギーを出せるか?って話っスね。」


そりゃ無理だけど。

夢が壊れるなぁ~。


「まあ、待って下さいっス。個人の『魔力』では無理でも、他からエネルギーを調達出来れば、それも可能になるっス。そもそも、『地球』における『魔術』の考え方も、元は『精霊や天使や悪魔の力を借りて』発動させる考え方ってのが普通っス。それを『ゲーム』に置き換えた場合、『魔力』って概念に代わっただけで、本来は『高次元の存在の力』なんっスよ。個人の『魔力』で発動してるってのはゲームシステム上の都合で、本来は勘違いっス。しかし、その勘違いが特に『ゲーム』では主流になってしまったっスね。だから、アキトさんも勘違いしたっスよ。ここ『アクエラ』の『魔法技術』も、『高次元の存在の力』を借りるってのが前提なんで、『魔力』が無いって事っスよ。」


なるほど。

ここ『アクエラ』は非常に現実的で、ファンタジーっぽくない。

しかし、個人の『魔力』に依存しない『魔法』は有るって事か。


「そうっス。と言っても個人的な素養、『魔力』が無いと『魔法』が使えないって考え方は似たようなモノっスね。それが、『アクエラ』だと『魔素感受性』にあたるっス。実は『アクエラ』の生物はみんな『魔素感受性』を持っているっスが、このナレッチさんの様に、『魔法習熟度』、つまり、『魔法』を使ったり学んだりして伸びる数値っスね、が、0のまま、つまり、『魔法』を使わない、あるいは使えないで、一生を終えるのがほとんどっス。なぜなら、『魔法』ってのは、あくまで『技術』なので、教えられずとも使える様にはならないし、使えたとしても、正式な知識を持ってないと、それこそ『使えない』っスから。」


ほぉ~。

つまり、誰もが魔法を使える可能性はあるが、専門的知識を学ばないと使えない技術って事か?


「その通りっス。『魔法』は危険な力も含まれますから、『魔法』使用者、つまり『魔法使い』達は一般的に『技術』を秘匿する傾向にあるっス。後継者やそれに近い人でないと、『秘術・奥義』は教えてもらえないっスね。『地球』でいえば、『一子相伝の技術』に近いっスね。」


なるほどねぇ~。

確かに、危険な力を誰もが使えたら、悲惨な事になるのは目に見えている。

人間が愚かなのは歴史が証明しているし、それはここ『アクエラ』でも似たようなモノだろう。

そういう事なら、『魔法使い』達も『魔法使い』である事自体秘匿するのではなかろうか?

誰もが『魔法技術』を学びたいだろうし、『国』などの組織に狙われてしまうからな。


「まさに仰る通りっスが、実は今はそうでは無いっス。と言うのも、かつてアキトさんの仰った通りの事態に陥り、『魔法技術』が失われた時代があったっス。ここ『アクエラ』では危険な生物も多く、そういった脅威と『魔法技術』無しで対峙しなければならなくなり、『魔法技術』の有用性に改めて気付いた各国は、なんとか復活を果たした『魔法技術』を『接収』ではなく『保護』する形にシフトチェンジしたっス。復活を果たした『魔法使い』側も、失伝してしまった技術も多く、また同じ事態に陥らないように『ギルド』を設立。交渉の末、各国と不可侵条約を締結。『魔術師ギルド』は、ある程度の技術の開示、各国側は『魔法使い』の保護を約束したっス。で、今度は各国側の事情で、一般人にまで『魔法技術』が出回るとクーデターなどを起こされる可能性があるって事で、『魔法技術』を学べる者を選別。具体的には、お金を持つ者、つまり『貴族』や裕福な家の子どもが学ぶにとどまったっス。なので、『魔法』を使える絶対数は多くないっスが、『魔法使い』が身分を秘匿する事はなくなったっス。まぁ、さっきも言ったっスけど、『上位』とか『奥義』とか『秘術』に当たる『技術』は、相変わらず後継者やそれに近い人でなければ、教えられないっスけど。」


ふむふむ。

って長いわっ!!

・・・しかし、よく分かる話ではある。

1度消滅の危機に陥らないと、学ばない辺りが『人間』っぽい。

しかも、その後の展開も非常に『人間』っぽい展開である。

整理すると、


1、かつて各国や組織による『魔法使い』狩りがあった。

2、『魔法』伝承者が滅び、あるいは全て伝授されなかった後継者だけが残り、水面下に潜る。

3、『魔法技術』が一時失われる。

4、各国はその間、『魔法技術』無しで脅威と対峙。

5、かなりの被害が出たと予想される。

6、やっぱ『火力持ち』いないと、ツライわー。

7、『魔法使い』側が復活を果たす、が『口伝』などの『魔法技術』を多く失伝。

8、これ以上やらせはしない、と対抗組織『魔術師ギルド』を設立。

9、『魔術師ギルド』と各国が交渉。『一部技術提供』と『魔法使い保護』を交換条件に、不可侵条約を締結。

10、んで、各国は権力側では無い『平民』にまで『技術流出』されたら困るので、権力側の『貴族』やそれに近い者にだけ『技術』を学ばせる。

11、『魔術師ギルド』側も、元々『秘匿』されていた『技術』の為、それを容認。条約の強化や金品のやり取りなど、ズブズブの関係になったと思われる。

12、結果、『貴族』と『平民』の格差はかなり広がり、『魔法使い』の社会的地位は磐石のモノとなった。


って、所か?

いやはや、良くある話である。


「今はむしろ『魔法使い』である事は、一種の『社会的ステイタス』なんで、秘匿どころか喧伝して回るほどっスから。多くは、その『地位』に固執するようになったっス。でも、中には本来の『技術の求道者』もいて、失伝した『魔法技術』や古代の『魔道技術』なんかを求めている『魔法使い』もいるっス。まあ、変わり者扱いされるっスけどね~。」


一度甘い汁を吸ってしまうと、どうしてもそうなるのが『人間』だからな。

そんな中、その『技術の求道者』達は好感が持てる。

多少『マッドサイエンティスト』臭がするが、『研究者』や『技術者』ってそういうモンだしな(偏見)。

『古代の魔道技術』ってのも、ロマンを感じる所だ。

そういう人が、『神々』の『使徒』として来てくれると良いんだが。

そう言えば、アルメリア様も『魔法使い』でしたよね?


「ワタシの場合は、誰かに師事したとかでは無いっス。これでも、一応『管理神』なんで、『管理神権限』を使って『データベース』に『アクセス』して、情報や知識を収集、再現してるだけっスから。なので、ぶっちゃけ、失伝した『魔法技術』や古代の『魔道技術』も再現可能っスね。」


ファッ!?

アンタ、ホンマチーターやな。

ちなみに、教えて頂くことは・・・?


「ダメっスよ。言ったでしょ?『管理神』は、世界に対して不干渉だって。『忘れられた神』としては、『現存』の『魔法技術』を教える事は出来るっスけど、失伝した『魔法技術』や古代の『魔道技術』はダメっス。それに、いきなり習得するより、苦労して習得した方が『ロマン』があるんじゃ無いっスかねぇ~?」


うっ。

それを言われるとつらい。

『オタク趣味』とは別に、歴史や遺跡などが好きな僕としては、『ロマン』と言う言葉に弱いのだ。

幸い、『現存』の『魔法技術』は教えてもらえるんだ。

自分で見つけ出すというのもまた一興だろう。


「ちなみに、失われた『古代魔道文明』には、『空飛ぶ都市』なんてモノもあったらしいっスよ~。」


なにぃっ!?

マジすかっ!!

『ラ〇ュタ』は本当にあったんすかっ!!??

・・・ますます、興味が沸いてきたな。

今現在は流石に落ちているだろうが、飛んでいた伝承があるだけでも僕としては十分だ。

もしかしたら、『ラ〇ュタ』みたいにまだ飛んでるかもしれんしなっ!

俄然テンション上がってきた~!!

『魔法』に加え、『ロマン』の塊たる『ラ〇ュタ』まであった世界など、ワイを釣るには十分な状況やないか。

こうしちゃおれんっ!

とっとと、成長して『古代魔道文明』を探す旅に出なければ。

と、言う訳で、アルメリア先生!

色々教えて下さいっ!

オナシャース!!


「良いっスけど、最初は知識から始めましょうっス。まだ、歩く事も出来ないっスからね。ま、学ぶ事でレベルも上がりますし、丁度良いっスね。」


えっ?

『モンスター』を倒したりしないと、レベルって上がらないんじゃ・・・?


「そういう方法もありますが、様々な方法でレベル上げは可能っスよ。色々な経験をして、強く成長すると良いっスね~。」


ま、なんでもいっか。

最初は、『英雄の因子』なんてモノをうっかり持っていたばかりに、巻き込まれてしまった『異世界転生』だったが、『ラ〇ュタ』がある以上、それも些細な問題だ。

地球の生活も楽しかったし、残してきた家族や友人などの事ももちろん心配だが、すでに『異世界転生』してしまった僕に出来る事はもう何もないだろう。

せいぜい、その後の人生の幸せを祈るくらいかな?

ま、僕は僕で大変だしね。

『英雄の因子』所持者として、これから『神々』の介入はあるだろうし、色々な事に巻き込まれる事は確定事項だからな。

地球の日本と違って、身近に脅威がある以上戦う力は必須だし、『魔法技術』なんて、知らない技術を1から学ぶので、思い悩む時間も無いだろうし。

せめて、家族や友人に一言残せたらなぁ、なんて、亡くなった人は皆こんな気分だったんだろうか?

まぁ、その後の皆の幸せをひそかに願うくらいは、ね?


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