第3話 『シュプール』にて
その後、鬱蒼とした森にたどり着いたアルメリア様と僕は、山羊っぽい動物のミルクを手に入れる事に成功した。
似たような動物もいるもんだ、と舌打ちをしつつ、食事したり、ゲップしたり、下の処理をしてもらったり、賢者タイムに入ったりした。
マジで『転生』とかするモノじゃないな。
するにしても、物心ついたくらいからお願いしたい。
オムツ替えを体験する精神年齢30オーバーの赤ちゃん。
僕は、あいにく特殊な性癖は持ち合わせていない。
赤毛のおっぱい美女相手に、赤ちゃんプレイとか、くっころ状態だった。
「まあまあ、気にする必要は無いっスよ。」
アルメリア様は、優しく微笑んだ。
ああ、女神様やー。
いや、本当に女神様でしたね、てへぺろ。
僕とアルメリア様は、森を奧へと進んで行った。
ところで、どこに向かっているのでしょうか?
「この先に、ワタシ達の今後の拠点になる場所があるっス。そこで、今までの事や、これからの事を説明するっスよ。」
ほ~。
・・・ちなみに、今、瞬殺した『物体』は?
「『ゴブリン』っスね。この森には、比較的多く生息してるっス。もっとも、更に奧には危険な生物がウジャウジャいますから、
へー、ゴブリンカー。
シッテルシッテルー。
って、今さらっと怖い事言わんかったかアンタっ!?
「そう言われましても・・・。
ほ、ほぉ~。
確かに、『魔法』なんてモノが存在するくらいだから、『モンスター』的な生物がいてもおかしくないが・・・。
そんな所で、『英雄』の使命与えられちゃったんか、僕。
「それについては、完全に巻き込んだ形になっちゃって、申し訳無いっス。」
ん?
でも、無理に使命とか気にしなくもいいんじゃなかろうか?
『英雄の因子』があるとはいえ、僕は元々一般人だし。
そんなモン無視して、どこかで平和的に一生を終えてもいいのでは?
「それに関しては、後で詳しく説明するっスけど、『無理』だと明言しておくっス。ちなみに、『アクエラ』には個人個人に『レベル』があって、最高値が500っス。条件次第で、『限界突破』して、1000まで上げられるっスけど。で、どんなに弱い人でも、レベル100は普通にあるっスよ?そうじゃなきゃ、危険な生物がそこらの森にいるのに、生きていけないっスからね~。」
・・・。
い、いや、よく考えれば当たり前の話か。
地球の日本という、比較的平和な場所から来たからイメージしづらいが、
強ければ、生き。
弱ければ、死ぬ。
平和的に生きたければ、とりあえず死なない程度には強くならなければならないし、一瞬、死ねば、ルドベキア様との『リンク』で地球に帰れるんじゃね?とも思ったが、それも『英雄の因子』がある以上、無理っぽい。
あれ、詰んでね?
・・・。
こ、こうなれば、いっそ『最強』目指しちゃおっかな~?
『RPG』は、結構好きだしね~。
自分が、命懸けで『RPG』をする羽目になるとは思わなかったが。
「その意気っス。ワタシも精一杯協力するっスよ。いっそ、『限界突破』を果たして『英雄の中の英雄』を目指されたらいかがっスか?」
おっ、いいねぇ、『伝説』作っちゃうー?
「
おお、『神話』かぁー。
少年は『神話』になるんですね、分かりますとも。
「ちなみに、『HP』という概念は一応ありますが、当然『一撃死』もありえるっス。頭潰されたり、首跳ねられたりしたら、即死っスね~。ま、
その情報、今言うタイミングだったっ!?
テンション下がるわ~。
いや、大事な事だけどね?
「申し訳ないっス。仕事モードじゃないと、よく空気読めないって友人に言われるっス。」
どこのOLさんの会話だ、このおっぱい女神。
「あんっ、く、くすぐったいっス。さ、さあ、間もなく見えて来るっスよ。」
アルメリア様の豊満なおっぱいを攻撃しながら、僕は彼女の目線を追って景色を見た。
そこには、森の開けた場所に、ロッジのような建物が建っていた。
「さあ、着いたっスよ。ここが、今日からワタシ達の拠点になる『シュプール』っス。」
・・・。
あ、あえて突っ込まんぞ。
かま〇たちっぽいとか、思ってないぞ、うん。
「でも、良い名前っスよ。『シュプール』って、『足跡』って意味があるっス。
うっ、ちょっとカッコいいとか思ってしまった。
なんだか、肉体に引っ張られる様に、精神年齢も下がってるような・・・?
元々たいして高くないって?
やかましいわっ!
「さ、入るっスよ~。ちなみに、このロッジには危険な生物は入って来れないようになってるっスから、安心して下さいっス。ワタシの『領域干渉』を応用してるっス。」
・・・よく分からんが、とりあえず入ろう。
安全地帯なら何でもいいです。
◇◆◇
ロッジの中は物凄く綺麗で清潔だった。
小まめにアルメリア様が、掃除とかしてるんだろうか?
「ああ、『ホブゴブリン』達が頑張ってくれてるっス。彼らは、家事などが得意なんっスよ。」
見ると、体長50cmオーバーほどの強面で小柄な生物が、アルメリア様の周りに現れた。
こわっ!
こら、おっぱい女神っ!
危険な生物は、ロッジに入って来れないんじゃなかったんかいっ!?
「『ホブゴブリン』は『ゴブリン』ってついてるっスけど、善性の妖精っスよ?顔は強面っスけど、家の『守護神』みたいなモノっス。こうやって、労を労えば毎日頑張ってくれるっス。イタズラ好きな子も中にはいますが、ま、カワイイ子どものイタズラ程度っスね。」
そう言いながら、アルメリア様は1枚のパンと、1杯のミルクをホブゴブリン達に配っていた。
赤毛のおっぱい美女と、喜ぶ強面で小柄なホブゴブリン達。
う~ん、シュールだ。
しかし、確かに彼らからは邪悪な感じがしない。
これなら、危害を加えられる事もないだろう。
なので、ニヒルな笑みを浮かべてこちらを見ないで下さい。
怖いので。
しばらくすると、ホブゴブリン達はどこかへ消えてしまった。
「彼らは、この家の自分達の好きな場所に住んでいるっス。見かけたら、声をかけたり、パンやミルクを与えてやって下さいっス。まあ、
・・・。
こちらの世界、『アクエラ』だっけ?では、自分の今までの常識が、通用しない可能性が高い。
と、とにかく、情報だ!
情報を整理して、今後の対策を考えよう。
幸い僕には情報源(おっぱい女神)がいる。
と、言う訳で説明会を開きたいと思います。
アルメリア様も、後で説明するって言ってましたし。
「そうっスね。何が聞きたいっスか?」
何を聞きますか?
・『アクエラ』について ←
・ルドベキアについて
・アルメリアについて
・『アクエラ』の神々について
・その他
・・・。
急に『RPG』風の選択肢が出たんですが?
つーか、某宇宙生物が持ってる様な、ただのプラカードですよねー、それ?
「冗談っスよ~。まずは、
ふむふむ、ここまではルドベキア様の予想通りだな。
「で、今回いきなり介入してきた『ライアド教』。そこの『至高神ハイドラス』が、今回の件の元凶っスね。」
なん・・・だと・・・!?
いや、何となくそうじゃないかとは思ってました、ハイ。
「『至高神ハイドラス』は所謂、人々の願いや信仰を具現化したタイプの神で、信仰心=力になるタイプっス。このタイプは結構無茶苦茶やるっスけど、『アクエラ』では、ここ30年くらい『英雄の因子』所持者、つまり『英雄』が不在なんっス。本来『英雄の因子』所持者が出現するのは、完全にランダムなんっスけど、いないなら『異世界』から持って来ればいいって事で、今回
ルドベキア様も『理不尽の塊』とか言ってたしなー。
「で、『ライアド教』が
確かに、『英雄譚』には付き物だよねー。
「〇〇神に導かれた英雄△△は~」みたいな。
「そうっス。実はそのポジションは、メチャクチャ人(神?)気のあるポジションで、『他の神々』も狙っていたっスよ。さっき
そうそう、それが疑問でした。
確か、ルドベキア様の発言では、「干渉は出来ないだろうが、助言はしてくれるだろう。『英雄の因子』を上手く使えばその限りではない。」みたいな事を仰っていましたが、結構ガッツリ介入してますよね?
「それについては、『裏技』を使わせてもらったっスよ。本来ワタシ達『管理神』は、『世界』のあらゆる事には『不干渉』なんっス。これは、ワタシ達が干渉する事で、生物の進化などに悪影響を与えないようにする為っスね。あ、『土着神』は干渉しまくってますが、これは別に良いっスよ?
ここまではいいっスか?と、アルメリア様はこちらを見た。
う、うん。何とか。
「ルドベキア先輩との『リンク』で繋がっている
ふむふむ、つまり他の神々に『導き手』のポジションを取られると『縁』が出来ちゃって困るって事ね?
でも、アルメリア様は大丈夫なんですか?
「『管理神』同士の場合、元の『世界』との『縁』、つまりルドベキア先輩との『リンク』の方が優先されるっス。そして、ここがこの『裏技』の肝っスけど、この肉体は、『管理神』の『生体端末』に過ぎず、普通の人間の力と『管理神権限』の一部しか持ってないっスよ。しかも、『管理神』としてでは無く『忘れられた神』としての介入だったので、何とか上手く行ったっスよ。『英雄の因子』の影響や、元々
・・・。
結構いいかげんだなぁ~。
ルドベキア様にも言ったけど。
「まあまあ、上手く行ったならいいじゃないっスか。そんな訳で、ワタシは『英雄』の『導き手』としての『役割』を持つ事に成功して、今に至るっスね。ちなみに、この『生体端末』は
・・・案外、上手く行った原因それじゃね?
『管理神』・アルメリアが別に存在するなら、ここにいるのは『忘れられた神』・アルメリアだから、とか。
いや、知らんけども。
いずれにしても、『英雄の因子』については今後も調査する必要がありそうだ。
どういう『能力』を発現しているか分からんと、使える・使えないが判断出来んし。
今、分かっているのは、『生命の危機の時、なぜか奇跡的に助かる力』だけだし。
「『言語理解』も発現してるっスよ?『英雄』にありがちな生まれてすぐに、言葉を話した。って逸話に出てくる様な『能力』っスね。」
ますます、分からん。
いや、異世界の言語や、赤子なのに耳が聞こえたりした謎は解けたが。
とりあえず、整理をしておこう。
1、『アクエラ』では『英雄』が30年ほど不在。
2、『ライアド教』の『至高神ハイドラス』は『英雄』を使った信仰集めが出来ず、『異世界』から召喚する事を考える。
3、なんやかんやあって、僕がマルク王の元に双子の弟として『転生』。
4、『英雄』を使った信仰集めが再開出来ると、『至高神ハイドラス』は、マルク王の下にモルセノ司祭を派遣。僕の保護を提案。
5、他の神々も、『英雄』の『導き手』のポジションを狙っていた。
6、『至高神ハイドラス』や『他の神々』と、僕の『縁』が深くなると『世界』のバランス崩壊の可能性がある。
7、それを懸念した『管理神』・アルメリアが、『忘れられた神』・アルメリアとして介入。
8、話が纏まる前に、有無を言わさず僕の『導き手』のポジションを手にし、僕を保護下に置く事に成功した。
と、こんな所かな?
ちなみに、『世界』のバランスが崩壊するとどうなるんでしょう?
「『魂』は元々その『世界線』で循環してるエネルギーっス。そこに、別の『世界線』の、しかも『英雄の因子』所持者の強力な『魂』のエネルギーが入ったら、結果は見えてるっスよね?天変地異や生態系の変化や変質。『管理側』としては、見過ごせない事態っスよ。」
ま、そりゃそうなるわな。
しかし、神様の癖にロクな事せんな、その『至高神ハイドラス』とやらは。
「『土着神』の『自然崇拝』から発生した『神』は、『世界』のバランスを崩すような行いはしないっス。しかし、『人々の願いや信仰』から発生した『神』は、人々から生まれたとも言えるので、管理とかバランスとかには無頓着っス。『自分』にとって都合が良いか悪いかしか考えられない、とも言えるっスけど。」
地球の現代人としては、耳が痛いな・・・。
ま、何にもしても、なるべく関わり合いになりたくないよね、その『ライアド教』とは。
「それが良いっスね。『ライアド教』は、『アクエラ』でも1、2を争う宗教っスけど、今回の事で、『至高神ハイドラス』の力が弱まったっスから、少しずつ衰退して行くと思うっス。ま、一種のペナルティーっスね。」
まぁ、自業自得だな。
ふぁ~あ。
赤ちゃんの体は大変だなー。
もう、眠くなって来たよ。
「今日は色々あったっスからね~。今後の事は、また明日にでもお話しするので、今日はお風呂にでも入って寝ましょうか?」
んっ?
今、お風呂と言ったかっ!?
当然、自分まだ赤子なんで、アルメリア様が入れてくれるっスよねっ?
裸っ?
ねぇ、アルメリア様も裸ですかっ?
「あぁ~。ほ、ホブゴブリンさん達にお願いするっスかね~?」
なんでじゃー!!
そこは、アンタがやる流れでしょーが。
シャス、シャス、オナシャス!!!
「ホブゴブリンさ~ん、オナシャース!!!!」
待てこらー!!!!!!
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