Ⅰ 地図の人
「その男の名前は何て言うんだ」
「海の人」
「違うよ、地図を持ってた奴だ」
「知らない」
「アヤノは何て呼んでるんだ」
「知らない」
「何だよ」
ナオトは不機嫌そうにミサトを見る。
「いいじゃない」
「その地図には、井戸の位置とか書いてあったのかな」
「何も書いてなかったって」
「古い地図らしいよ、この辺になにもなかったころの」
「それじゃ役に立たない」
「どこかに行きたいの」
「いいじゃない。いまこうしていられるんだし」
「井戸の位置は重要だよ」
「それだけじゃない気がするの」
「探検がしたいみたいな」
「男の人は好きだからね、そういうの」
「たしかに不安だよね」
「まわりにだれが住んでいるのかもわからないなんて」
「この辺には、あたしたちとあなたしかいないわよ」
「そうだよね。他に住んでいる人、会ったことないもの」
「ねえ、地図の人はどうなの」
「あの人は、ずっと動いてるみたい」
「でも、そんなに人に会ったことはないって」
「ナオト、会ってみたい感じだった」
「そうなの、でもいつ来るかわからない」
「名前は」
「地図の人?」
「わからないよ」
「何て呼んでるの」
「何て呼んでたかなあ」
「二人きりで会うから、別にいいのよ」
ミサトはあきれ顔でアヤノを見る。
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