デレスティナ物語

第一章 竜王国ドラグナルク

第1話

ここは、人間の国リオンの王宮。

今日も響くは少女の声。


「姫様!どこにいらっしゃるんですか?!」

中央に行く準備は終わっているのに、姫様が隠れてしまっては身支度が整えられない。どうしたものか。

とりあえず、庭のほうを探してみる。

「ひめさま~。隠れても無駄ですよ~。」


がさ


私は聞き逃さなかった。

(ふふ。姫様の考えることはほんとにわかりやすい。)

音のなった反対のほうの低木のほうへゆっくりと近づいた。

すると音のなったほうから姫様の猫のユリが出てきた。

「ひめさま~。見つけましたよ~。」

「そ、ソニア。嘘でしょ。」

「嘘も何もないですよ。まったく。皆様をお待たせしてどうするんですか!」

「えへへ。」

そのあとは、姫様が怒られている間に一足早く港に向かった。


私はソニア。

幼いころ、村を焼かれ、栄養失調で死にそうだった私を姫様とそのご家族様に助けていただき、今は姫様の下で侍女として働いている。私は、正式な侍女ではないが、王族の皆様や侍女長様その他侍女の皆様のおかげで今なおこうして働くことができています。

姫様は、私が港に向かっている間は、怒られるのが主ではなく、出発式という公の場でデレスティナ学園(通称中央学園)の入学の認証を国単位で行われる儀式に出席なさる。最も、学園に行くのは姫様だけではないのだ。その国の優秀な人材であるかに限り、中央学園の入学は認められる。余談だが、その他は国が独自で作った学校施設に入学します。なければどうなのかは知らない。お金があれば家庭教師を雇ったりはできるけれど、なければご想像の通り。リオンでは、国立の学園があるので大丈夫。さて、優秀な人材の基準においては、中央からの試験に会場はその国によって異なりリオンは王宮で行われ、だれでも受けることのできる試験である。しかし倍率は高く、試験を受けても、ほんの一握りの人しか合格することができない。なので、王族であったとしても、爵位があったとしても、平民であったとしても受かる人は受かるし、落ちる人は落ちる。一国につき50人ほど入学が認められる。また、わが主である姫様は、その試験に見事合格なさった。

そして、その最難関の試験に合格し、中央学園入学の認定式が出発式というもので、その国の国王から認定証を受け取る大事な式なのだ。


私は港に着き、姫様の荷物の整理をしていた。


「今日の海はな、どうも怪しい。」

「そうか?いい風じゃねえか。風邪でも引いたんじゃねえか?」

「お前の寒いギャグはどうにかならんのか。」

ふとそんな会話が聞こえてきた。


___


出発式が終わり、中央に向かう船に乗る入学者たちがぞろぞろと出てきた。姫様は、別で馬車に乗ってくると聞いている。

(姫様、どこにいらっしゃるんだろう。)

「ソニア!」

「姫様!もうお着きだったんですね。」

「ええ、ソニアを驚かせようと思って。」

「もう、姫さまったら。」

(もう、姫様と会える時間が少ないのね。)

私は、国で教養を受けている。中央学園に行くには優秀であることともう一つ、があることが必須条件だった。私は王族にかくまってもらい、今まで生きてきたが、物心ついた時にはまだ家族がいたが、何者かに住んでいた村が襲われ、私以外の村の住人たちはみな死んでしまった。その事件のおかげで、その村に住んでいたものすべての戸籍が消され、私は戸籍上この世に存在していないらしいのである。ついでに、この国の戸籍の制度は厳しいので国王でも改ざんできない。しかし、国立学園は戸籍がなくても入れることはできるので、私はそこで4勉強している。


すると、姫様に同行なさる先輩侍女のアルファさんが姫様の隣にすっと入り、姫様に耳打ちをする。それを聞いた姫様は、顔を明るくさせたままこちらを見た。

「ソニア!ソニア!朗報よ!」

「朗報?いったい何があったのです?」

「ソニアも途中までだけど、同行させてもらうことになったわ!」

「え?」

私は驚きが隠せなかった。

アルファさんはこちらを見てにこにこして、姫様は、もう御年が14であるにも関わらず、ぴょんぴょん飛び跳ねて嬉しそうにしている。

「ソニア!まだ別れの挨拶をするときじゃないわよ。お父様に承諾をいただいていたところだったの。ぎりぎりまで待ってくれって言われていたんだけど、ナイスサプライズだわ!」

姫様は、どや顔で胸を張って言った。すると、さきほどまで暖かいオーラでにこにこしていたアルファが、冷たいオーラでニコニコしているのが目に入った。

「姫様、先ほども申し上げましたが、淑女たるもの、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだり、胸を張ってどや顔するものではありませんよ。言いましたよね私。次やったらどうなるかと、かくれんぼなんぞの後で。」

「ご、ごめんなさい~!!」

姫様は美しいお顔を青くした。

(はぁ。けれどうれしいです、姫様。お気遣いありがとうございます。)

私は、なんだか体が軽くなった気がした。


そんなこんなで、船での移動の同行が認められた。ふと私は、大変な問題に気付く。中央学園がある中央島まで行くのにかなり時間がかかり、帰りの時間も考慮するため、旅行道具を持っていかなければならない。つまり私が言いたいのは、何の準備もしないでにいることが問題なのだ。先ほど、中央に向かう私含め姫様一行が乗る船がたち、船は海の上。私としたことがと思い、アルファさんに相談しに行った。


「大丈夫よ。ちゃんとあなたの旅行道具はあるわ。」

「え?あるんですか?」

「あるわよ。本当は最初から陛下はあなたが同行するのは認めていたから、サプライズとして隠していたのよ。フフ」

「そ、そうだったんですか。」

「荷物は、私の部屋に置いてあるから、私が下りたら思う存分使いなさいね。」

「ありがとうございます。」

部屋を出ていこうとすると、「姫様がエントランスでお待ちよ。」とアルファさんがおっしゃっていたのですぐにエントランスに向かった。

エントランスには、ゆったりとお茶を楽しんで過ごしていた姫様がいた。その姿に私はしばらく見惚れてしまった。

「どうしたの?ソニア。早くこちらにいらっしゃいな。」

「はい」

いつもの調子で私を呼んだ姫様の声で魔法にかかったような時間が動き出した。

「姫様は、不思議な方ですよね。」

「・・・どうしたの、突然。」

「いや、大きくなられたなと思って。」

「そうかしら。あなたと会ったときはまだ私が3つのころだったかしらね。生きることをあきらめたような顔をして、飢餓状態だったあなたを助けたいと思ったの。」

姫様は、少しお茶が入っているティーカップを置いた。

「それにね、あなたを美しいと思ったの。」

「え?」

思いがけない返答に戸惑った。なんだか今日は驚いたり戸惑ったりする日だなぁと頭の片隅で思った。

「不謹慎かもしれないけど、生きることをあきらめていたあなたの姿が、妙に美しいと感じたの。」

私はだまって姫様を見つめる。

「あなたの容姿のせいなのかもしれないわね。白銀の髪と金色の瞳は人間とは思えないほど美しいと思わせるのかしら。今は髪を染めて黒にしてるし、魔法で目の色を黒に変えているけれど、でも私は元のあなたのほうが好きよ。色を抜きにしても、あなたは美人だわ。わたしと5つしか違わないのに。いや、5つも、ね。あなたは私よりよっぽど大人だわ。」

私ははぁと一つため息をつき、姫様に向き直った。

「姫様、あなたのほうが美人に決まってるではないですか。それと、いつもの調子はどうしたんですか?お転婆でやんちゃでいたずら好きなのにすごくまじめで優しい姫様はどこに行ってしまったのですか。」

「・・・。正直ね、正直に言うわ!」

「二回言いましたね。」

「私はあなたと離れるのがさみしいの!!!」

「知ってますよ。私だってそうなんですから。」

「え」

一瞬、沈黙が走る。

「先ほど港にいるとき、もうお別れなんだと思いました。体が朝から重くて、5年間いらっしゃらないとなると寂しさが押し寄せてきました。あなたが私を助けてくれた日から、あなたは私の光でした。だから、私の世界はあなたがいないとなると、このままでは暗くなる一方です。」

姫様はすっと立ち上がって私の両手をそっとつかみ、ルビーの瞳でまっすぐ私の目を見る。

「いいこと?私はあなたが大好き。ついでに、今のあなたの話を聞いてあなたも私のことが大好き。私たちは会えなくても想いはつながっているの。どんなに離れていても、この気持ちは離れない。絶対に。私にとってもあなたは光よ。あなたが生きているそれだけで私の世界は明るいの。あなたもそうでしょう?」

「はい。なんだか、姫様らしくないですね。」

「あら、そんなこと言う?」

「言いますよ。私の大好きな姫様。」

私は精いっぱいの笑顔を見せた。


そうだ。いつだってこの気持ちは変わらない。きっと、いや絶対にこれからも変わらない。


私たち二人はいつの間にか他愛のない話をしていた。

時間がたつのはあっというまで、もうすぐで中央島に着く。


「ソニア~!元気でね~!!!」

姫様は大号泣だった。瞳から滝のように流れ落ちる涙の量はひどいもので、せっかく奇麗なドレスを着ているのに・・・。

「・・・姫様。手紙出しますから、泣かないでください。」

「うわーん!!ソニア~!」

「先ほどまであんなに大人のように話していたのになんなんですか。」

「ソニア~!!」

私の名前を連呼しないでいただきたい。周りからの視線が痛すぎる。

「とにかく、お手紙はきちんと出しますから、行っていらしてください。。」

「・・・うん。」


そのあとは、アルファさんにより何とか別れることができた。

やはり、少し寂しい気持ちがある。けれど、姫様が頑張っていると思うと私も頑張れる。私の光は今もなお、輝き続けている。


中央島からたってすぐのことだった。

なんだか船が騒がしい。私は近くの人に事情を聞いた。

「何かあったんですか?」

「どうやら、この先嵐のようだから、これ以上進めないそうだってよ。」





_______


どうも皆さん初めまして。暁です。

これはほぼ自己満足で書いているものなので

どこまで書けるかもほぼ気分次第で、もしかしたら途中で終わるかもしれませんが

その時はご了承ください。

この物語の世界観は少しずつですが伝えていきたいと思います。






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