第2話
12月に配属の決まった研究室は
と、思い返していたせいなのか、彼女に似た人影が視界に入る。というかむしろ、彼女ではないか。
ゼミのときと同様、こざっぱりとした服装だが、いつもは後ろでまとめられている髪がおろされていて、
(髪、長かったのか)
不覚にもどきりとしたのを見透かしたかのように視線を向けられ、補充のために持っていた菓子を片手に、頭を下げる。
大学から2番目に近いコンビニであればさほど知り合いと会う確率も減るのでは、と選んだバイト先ではあるが、実際に減ったのかどうかはよくわからない。ここでバイトしていることを知っている相手にも知らせていない相手にも、それなりに会っている。今日もまた、会ってしまった。
こちらが制服を着ているせいか、相手は気づいた様子もない。不可解そうな面持ちが得心したような表情に変わるまで、たっぷり12秒。会釈を返して、元々見ていた棚から商品を一つ取ると、レジへ向かっていく。
D1にもなって今日初めてここに来た、というのでもなかろうし、これまでにも来ていたのをこちらが覚えていなかっただけなのだろう、と思う。思うがしかし、店の奥、トイレの入口の上に設置している壁掛け時計も、自分へのお年玉として買ったスマートウォッチも、草木も眠る丑三つ時を指している。
(こんな時間に出歩いて、大丈夫なのかなあの人……)
(あの子明日ゼミだってわかってるのか……?)
春から非常勤講師として他大学に通うことが決まった。それは喜ばしいことなのだけれども、そのせいで増えた書類やら事務作業やらと、TA業務の一環として
結果が、1時過ぎの研究室退室である。深夜の。就活もあって忙しいとぼやいていたM1生たちも、さすがに終電前には帰っていた。
帰りがけにと寄った自宅最寄りのコンビニには、前回寝坊で無連絡遅刻をしていた後輩がいた。
(また遅刻しないといいけど)
布団に潜って灯りを消す。そもそも私も起きられるのだろうかと、一抹の不安に駆られながら。
桜花は一片の約束 ritsuca @zx1683
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