第7話 派閥拡大……そして……

 俺が王になって数年がたった……。


 派閥はどんどん拡大していき様々な派閥が生まれた。


 犯罪、人助け、創作などの人間的な欲求は、素晴らしい物や見るに堪えない悲劇を生み出し、俺たちの暮らしに彩りを添えていく。


 そして他の者と融合したい欲求は知識があればあるほど拡大していった。


 魔獣、悪魔、魔人、そしてついには魔王までその手にかけた……。


 俺は玉座でその報告書に目を通す。



「ここまでだ魔王!」


 勇者が魔王に剣を突きつける!


「ぐぅ、なぜこんな短期間で実力を上げた!?」

「ふふふ、王……いや! 神の加護によるものだ!」


 へたり込む魔王によく似た小さな子共が駆け寄った。


「逃げなさいと言ったはずだ! なぜここにいる!」

「おとーしゃん、ごめんなさいぃ……」


 勇者はその光景を見て思わず剣を下げた……。


「頼む勇者……都合が良いのはわかっている……しかしこの子だけは……」

「だいじょうぶ! おとーしゃんも! これを飲めばいいの!」


 そんな我が子の言葉に魔王は首を傾げた。


「ね! ゆーしゃさん!」


 にやりと口元を歪めた勇者を見て、魔王が我が子を振り払おうとする! しかし、すでに遅かった! 魔王の子供は、握っていたネバネバを魔王の口に押し込んだ!


「だいじょうぶ、くるちいのは、はじめだけだよ♪」


 勇者と魔王の子供はニコニコとしながら、もがき苦しむ魔王を見つめるのであった。



「怖いわ! こんな報告書を読ませないでくれ!」


 俺はホラーな報告書を投げ捨てると頭を抱えた。


 その衝撃で胞子が飛んだ。


 また五匹の俺が増えた。増えた俺は近くにいた人間の兵士たちに連れられて各派閥へと送られていった。ご丁寧に悪人もその派閥の根城へと送り届けるのだ……。何そのロールが決まるまでは無敵みたいな制度……。


 そんな見慣れた光景を眺めていたら次の報告書が目に入った。


 ”植物及び、無機物への融合派閥に関する報告”


 それをペラペラとめくりながら読むと、驚くべきことが書いてあった。ついに同胞は、悟りを開くように植物や岩石や土など意識がないものと融合し始めたのだ。


「ついにここまで来たか……おれは同胞がここまで来たら決めていたことがある……」


 オリジナルに近い俺の周囲の者たちは、同じ考えに至ったようで固唾をのんだ。


「国民に発表する……」


 各派閥のトップたちは各所に連絡を取り城の周りに人を集めた。


 俺は城のバルコニーに出るとあたりを見回す。


 様々な種族が入り混じり差別なく暮らす素晴らしい都市となっていた。


「みんな聞いてくれ! 俺は先ほどある決意をした!」


 民衆たちは顔を見合わせざわついている。


「前々から決めていたことだ。私はこの度王の座を降り後を民主派に任せることにする!」


 俺の声明を聞いたものは喜ぶ人々から嗚咽を漏らして泣き崩れるものまで様々だ。中には意味がわかっていない者までいるようだ。


「そして、引退後の私はこの星と融合を果たす!」


 これは前々から決めていたことだ、自然と融合しだす奴がでたら、俺もこの星と融合し、気候を操りすべての俺を守る決意をしていたのだ……。


 俺の宣言には喜んでいた者たちも驚きを隠せないようだ。王政は好かなかったが、謎の俺の人気は衰えていなかったようだ。


 俺は体が朽ちるイメージをするとその核が露出する。分身した俺とは違い核は生前の俺とおなじような人形をしていた。


 俺は空を飛び市民上空を名残惜しく何度か回る。


 そして、はるか上空に飛び上がり核を大爆発させた。


 飛び散った俺は、この星に降り注ぎ大地に付くと中心部を目指していく。


 星へと溶け込んだ俺は、四方八方に触手を伸ばし星を掌握していく。


 そして俺は、星と融合しかすかな意識で、様々な俺を見守ることになったのだった。



 数千年後……。


 一人の神がこの地に降り立った。


「悪や正義、貧富に自然のバランスすべて完璧で手を加えるところがない……」


 試練を終えた神が引き継いだときには、この世界は完璧な世界になっていた……。神が蔑ろにされるほど裕福でもなく神を恨むほど悲惨でもない……。まさに理想の状態であった。


 しかし大きな問題があった……。


 それは……。


 魂がたった一つだけだったのである……。


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マタンゴさんは増えたい(文字制限オーバ版) タハノア @tahanoa

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