第3話 俺でも目的が違うやつが出てくる

 森の見える範囲が俺で埋め尽くされ頃それは起こった。


「なんか俺さ……増えるよりデカくなりたい」


 俺のうちの一人が本体である俺によくわからない相談を持ちかけてきた。


「別に好きにすれば良いんじゃね?」

「おう! ありがとうマタンゴ太郎! 俺はデカさを極めるよ」


 分身お俺たちはなぜか俺のことをマタンゴたろうと呼び、何をするにも許可を求めてくるようだ。別に好きにしたら良いのに……。


 もしかして誰かに認めてほしいという欲求の現れなのか? それとも教育という名の洗脳で許可が必要だと刷り込まれた弊害か……。


「俺もデカくなりたい!」


 俺の人混み略して”俺ゴミ”をかき分けて一人の俺がデカくなりたい俺と合流した。


「お前もデカくなりたいの? じゃあ融合しない?」

「おお! 良いねそれ! さっそく体積二倍になれるぜ!」


 意気投合したデカくなりたい派の俺がすぐに融合を始めた。気もキノコ人間同士のくんずほぐれつは見るに堪えない……。そっと目を背けていると「できた!」と大声が響いた。


 恐る恐る視線をそちらに向けるとなんと背丈が少し高くなったマタンゴがいた。


「やった! 俺が一番でかい!」


 その声を聞いた途端「俺もデカくなりたい!」とあちこちから声が上がりデカくなりたい派と増えたい派に分かれる流れができてきた。


 増えたい派の俺たちはどんどん増え、デカくなりたい派の俺は一つにまとまり見上げるほどにデカくなっていく。


 どんどん増える俺たちの中からデカくなりたい派が生まれる……。これを繰り返すうちに両者の規模はどんどん増えていくのであった。

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