ダンジョンの隠し部屋で

 こうして、リーフはオリバーパーティーの「荷物持ち」として働く事になった。リーフは「荷物持ち」としてはかなり安めの賃金で働かされている。おまけに、本来のパーティーメンバーなら受け渡される魔物を倒した時に得られるレベルを上げるのに必要なポイントも、「黒魔道士」には必要ないだろうという理由で振り分けてもらえなかった。故に、リーフは未だにレベルが1のままステータスも上げる事が出来ず、「荷物持ち」果ては雑用のような事までやらされていた。

 正直、リーフのこの扱いは不当なものであるのだが、リーフはこの扱いをあまり苦に感じていなかった。


(賃金はちゃんと貰えてる。暴力も振るわれる事はない。施設での扱いに比べたらだいぶいい……)


リーフは施設にいた頃、賃金は上の者に奪われるのが当たり前。逆らう者なら体罰を受けるが日常だった為、最初からそんな苦難を受けたリーフからしたら、この程度の扱いを問題あるものと捉えていなかった。最悪、必死で切り詰めてお金を貯めて、何処かで1人慎ましやかに暮らせるだけの金額を稼ごうとリーフは考えていた。リーフが与えられてる金額ではどんなに切り詰めても何十年とかかるとも知らず…………


そして、そんなリーフがいるオリバー達のパーティーは現在依頼で魔法都市「デュラン」の外れにあるダンジョンに来ていた。依頼内容はオリバーのパーティーなら簡単にやれるダンジョン内に増殖したゴブリンの討伐。この程度の依頼ならオリバー達は数分もかからずに達成してしまい、暇を持て余したオリバーがメンバーにこんな提案をした。


「なぁ!せっかくだし、もうちょいこのダンジョン探索しねえか!まだ誰も発見してないお宝があるかもだし!」


 オリバーのこの唐突な提案にメンバーは全員賛成した。ダンジョン内で獲得した物はそのパーティーの財産になる。故に、ダンジョンでのお宝探しは冒険者にとって基本的な行動でもあるが、同時に危険な行為でもあったりする。探索しすぎてあちこち回った末にダンジョンから出られなくなったり、時間が経つとダンジョン内の魔物が強化されるのである。

 だけど、ある程度オリバー達はダンジョンを調べ、ダンジョンの魔物が今のところそう大した強さの魔物がいないのを把握している。それに、オリバーのパーティーの「魔道士」はダンジョンから脱出する為の魔法を覚えている。なので、いざという時も大丈夫だと判断したのである。


 この判断がこの後危機的な状況に陥るとも知らずに…………


 


 数時間経過し、ダンジョン内をくまなく探索したオリバー達だったが、これといった物は特に見つからなかったので諦めて帰ろうかと思っていた矢先……


「ん?この扉は……まだ調べてなかったよな?」


オリバーの質問にリーフ以外のパーティーメンバーが首を横に振った。リーフは自分に意見を求められてないのは最初から分かっていたのであえて黙ってオリバーが見つけた扉を見つめる。


(……なんだろう……?なんか……呼ばれてるような……?)


リーフは何故か扉の向こうから誰か自分を呼んでるような感覚を覚えたが、気のせいだろうと思い余計なことを口にしなかった。


「よし!なら……開けるぞ!」


 オリバーはそう言って扉を開ける。すると、扉を開けたその部屋の奥に……


「おぉ!宝箱だ!!」


謎の部屋にある宝箱に、オリバーもオリバーのパーティーメンバー達も目の色を変えて宝箱に向かう。早速宝箱の前までやって来たオリバーがある事に気づく。


「ん?この宝箱は鍵付きの宝箱か?なら……鍵を開ける為の何かがあるのか?」


 鍵付きの宝箱は何処かに鍵がパターンか、魔物を倒す事で開くパターンのどちらかになるのだが、くまなく探索して鍵らしき物は見つけていなかった。だとすれば……ふと、オリバーが冒険者としての嫌な予感が湧いてきた。

 そして、その嫌な予感は見事に的中する…………



『グルオォォォ〜ーーーーーーーーーーンッ!!!!』


突如、オリバー達の背後から数m離れた先に超巨大な魔物ベヒーモスが現れたのである。

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黒魔導士のすゝめ 風間 シンヤ @kazamasinya

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