バージョン3.5 攻略結果

 スマートシティーにおけるランキング。当初は女性のみが対象だった。とある男子高校生が女子高校生のおっぱいの大きさを測り、ランキング形式で発表するアプリを開発した。おっぱいランキングではあまりにもエロいため、おっぱいを包む布、ブラジャーの名を冠して『ブランキング』と名付けられた。ブランキングは瞬く間に世界中の男子高校生に入手された。



 あきが便所から出てきた。すっきりした顔をしていた。だが、最早2人の間には、ムードというものが全くなくなっていた。いつのまにかオープンになったシャッターの向こうで10発の四尺玉が大きく花開くのが見えた。清は涙目でそれを眺めた。


「あれ……?」


 あきが言った。用意されている下着が頼んだものと違ったのだ。あきは戸惑いを隠せないといった表情をしていた。


「どうしたの?」


 清は落ち込んでいるのを隠してなるべく優しく尋ねた。何か自分に粗相がなかったのか、心配なのだ。


「あのね、違うの……。」

「違うって、何が?」

「それが、言いにくいんだけど。ブラジャーもショーツも……。」

「そんなことって……直ぐに交換させよう!」

「いっ、良いの! パネルには表示されてなかったけど、こっちの方が……。」


 高級品なのだ。1着だけで海外旅行に3度は行けるほど。それをあきは別の表現をした。


「……清くんの側にいるには、似合うのかもしれないから」

「ははは。よく分からないや……。」


 清は、あきの表情が明るくなったのを見て安心し、途端に素っ気なく返事をした。そして、自分は何の変哲もない作業着を着た。


 あきは思った。身なりで人を判断してはいけない。たとえ作業着姿でも、たとえ便所掃除係でも、男としての懐が広いかもしれなくて、何でも与えてくれるかもしれない清の側にいられれば、自分も幸せになるだろう。ランキングを決めるのは、身に纏う布ではなく中身なんだ、と。だから、用意されている超高級品を、ありがたくいただくことにした。


「どう? 似合う?」

「これは、グッとくるよ!」

「ふふふ。ありがとう!」


 そのあと、あきは再び戸惑ってしまった。上着も頼んだものと違う。だが、清の側にいるには似合うからと言って高級下着をゲットしていたから、上着をイヤとは言えなかった。あきが着てみると、意外なほどの着心地。あきが知るどの高級品よりも動き易く、通気性が良い。だから余計に、気恥ずかしさが増し増しになった。その姿を見て、清が言った。


「うわぁっ、メイド服みたい!」


 みたいではない。まんま、メイド服だった。清は思った。こんなにおっぱいの大きいメイドさんが自分の身のまわりの世話をしてくれたら、どんなに幸せだろうか、と。同時にあきも思った。自分のようなおっぱいだけの女は、偉大かもしれない便所掃除王にとってはメイド程度なのだ、と。


 そのあと、清はAIのアドバイス通りにあきをリードした。ベッドに腰を下ろし、便所掃除について熱く語り、部屋を出てエレベーターホールへ行き、直ぐに別の便所掃除をするからと言って別れを切り出した。そして別れ際には、あきの方から抱きついてきたから、清はしっかりと抱き返そうとした。大きいおっぱいの柔らかさを存分に楽しむために。


 ところが、その瞬間にエレベーターの扉が開いた。清はあきのおっぱいの余韻もへったくれもなく、抱擁を解きエレベーターに乗った。何だかイヤな予感がした。

 エレベーターの扉は瞬時に閉じた。清のイヤな予感は的中した。清を待っていたのはお説教、罵詈雑言だった。


「何ですか? 2度も取り逃すとは! 何故もっとゆっくりと過ごさないのです?」

「ゆっくり過ごすって?」

「ベッドです! あき様はベッドの遠い端に腰掛けました」

「そうだったね……。」

「本当は、もっと2人で過ごすひとときを楽しみたかったんですよ!」

「そ、そうなんだ……。」

「体力の回復を待っていたんです」

「そんなの、俺には想像もできないよ……。」

「あき様は所詮はチュートリアルのチョロインのようなものです!」

「そんな言い方……。」

「それを勝手に焦って2度も取り逃すだなんて!」


 エレベーターを降りたあとも、AIの説教は続いた。それが終わったのは、9階の執務室に入ってからだった。

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