第5話 魔法なんてだいっきらい!
「ふん💢! 私、貴方なんか雇った覚えはないんだけど?」
「お、お嬢様…… せっかく来て下さったのに……」
「そんなの関係ない! 私に家庭教師なんて必要ないの! 私は才能がないんだから………!」
うん。やっぱ落第っていう称号が相当な重荷になってる。まるで昔の僕だな。
「お嬢様……… 僕は…… すぐに去ります」
「…………」
「ら、ライジン様………」
「ただ…… 一つだけ聞いておくことがあります」
深呼吸をして尋ねる。
「魔法は…… 魔法はまだお好きですか?」
「うっ…… うっ………」
エミリーの目には涙が溢れていた。
「魔法なんて…… 魔法なんて……… だいっきらいよ!」
「…………」
「魔法があるせいで私はいじめられた。魔法があるせいで私は誰かと比較された。魔法があるせいでお母様は………」
そう。エミリーが魔法を嫌いになった理由はもう一つある。
◾️◆◇
半年前………
「お父様! お母様が狙われてるって………?」
「ああ、エミリー…… お前は気にしなくてよいのだ。ちゃんと私が守るからね」
「じゃあ安心だね!」
当時、エミリーの母が何者かに狙われるという事件が頻発していた。誰が何の目的で狙ってるのかもわからない。
「お母様! 大丈夫?」
「私は大丈夫よ。エミリー。こんな可愛い娘を残して死ねるわけないじゃない!」
「私もお母様がだ〜い好きだよ!」
エミリーはほんとに母が大好きだった。もしもの時は自分が身代わりになれるくらい好きだった。
しかし………
「きゃ〜⁉︎ な、何⁉︎」
突如チャールズ家の屋敷が襲われる事件があった。
「エミリー! 早く逃げるんだ!」
「でもお母様がまだ中に!」
「でもお前は魔法がまだ使えない! お前は先に逃げろ!」
「いやよ! 私も………!」
「………エイブ。頼む!」
「承知いたしました……」
「離して! お母様!お母様〜!」
泣きじゃくるエミリーを連れて、執事のエイブは離れていった。
◾️◆◇
「だんな様…… 犯人は……?」
「まだ見つかりそうもない。私は必ず仇を討つ。くれぐれもエミリーに手出しはさせるな」
「はっ…… 承知いたしました」
◾️◆◇
「お嬢様…… ですからお母様は………」
「あれはお父様のせいよ! 守るって言ってたのに………」
「だんな様はご立派でした………」
エミリーの目は赤く腫れ、まだ微かに涙が潤んでいた。
「もう魔法なんて……… お父様なんて……… だいっきらい!」
◾️◆◇
「もういい! 私に家庭教師はいらないって言ったでしょ! 帰って!」
仕方ない……
「わかりました……もう1度だけ聞きます。魔法はお嫌いなのですね?」
「そ、そう言ったわよ! もう出てって!」
「………承知しました。ではキアラ。行こうか?」
「良いのですか?」
「まあ……… 魔法がほんとにお嫌いなのであれば仕方ありません」
「そうですか……… ではお嬢様。失礼します」
僕とキアラはその場を後にした。
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