第2話 お屋敷に到着

「アーサー・ライジン様。お待ちしておりました」


「よしてくれ。ライジンでいい」


「ではライジン様。お荷物をお預かりいたします。お屋敷までは少々時間がかかりますので」


さすが公爵家といったところだろうか。執事にとても大きな車、そしてお屋敷。羨ましい限りだ。


「ライジン様。お嬢様には下さい」


「ん? どういうことだ?」


気をつけるにはいろんな意味があるのだが。


「お嬢様は少々…… 気が立っておられます」


「ああ。よくあることだ」


人は時には苛立つこともあるだろう。


「それが、このところ毎日で………」


「そうなのか?」


◾️◆◇


「わぁ〜! 魔法ってすごいんだね! お父様!」


「ああ。魔法とは時に自分を守ってくれるが、時に凶器となる優れたものだ」


公爵家の主人、チャールズ・ノア公爵は優れた魔法使いであった。そしていつもお嬢様に魔法を披露していた。


「私、きっとお父様のような立派な魔法使いになるよ!」


「はは。それは楽しみだな」


しかし1年前の春………


「どうして。どうして私には魔法が使えないの⁉︎ こんなに練習してるのに………」


『うわぁ〜! 公爵お嬢様のくせに魔法使えないんだ〜!』


『落ちこぼれ〜!』


『落第〜!』


「………魔法なんて、だいっきらい〜!」


散々周りから罵倒され、今まで希望に満ちていた気持ちは消えてしまった。


「お嬢様………」


◾️◆◇


見かねた執事がこの僕に依頼してきたというわけだ。


「なるほど……… まあ、なんとかなりますよ」


よくあるパターンだ。だって最初はそうだった。それに俺だって……


「ライジン様には期待しております……」


「やめてくれ。別に俺は特別魔法が得意なわけじゃない」


「はあ? 噂に聞きますと、中々すごい古代魔法を使われることもあるとか……」


古代魔法…… あんなもの。使わない方が世のためだと思う。だからなんていう名前がついてるんだろう。


「お屋敷に到着なさいました」


「ほほう…… ここが……」


さすが公爵家のお屋敷といったところだろうか。広い庭が広がっており、中には何部屋もありそうな大きな家が立っている。


「それで? お嬢様はどこに?」


「もう少しでお帰りになられると思うのですが………」


それにしても、庭には見たことのないような美しい花や草木で覆われている。こんなところで暮らしてみると…… さぞ気分がいいだろうなぁ。

それにしても、この環境で育ったお嬢様になぜ魔法が使えないのか? 何か他に。他に原因があるのか? 期限は1年。そう言われたからには時間は無駄にはできない。


『お嬢様がお帰りになられました!』


召使いの声が鳴り響く。ふとさっき来た道を見てみると……


「…………」


ブランドの長い髪とお洒落な服装。いかにも威厳のあるオーラ。ただならない雰囲気に包まれた少女がこちらに向かってきていた。






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