59:小雲鯨
「そろそろ、
「クエエェ!」
討伐依頼を受けた
眼下には広大なオーウェル草原の緑が広がっている。
いちおう、デカくて見つけやすい
ノエリアたちは、荷馬車でゆっくりと合流地点に向かってるはずだから、先着したらもう少し詳しく捜索をするか。
【マスター、
合流地点に向かってディモルを飛ばしていると、
「え?
【あ、いや。お肉の味の話じゃなくて……
俺はディーレの発言の意図を取り違えていたことに気付いた。
「ああ、すまん。そうだったな。因子だったな。どうだろうか、毒と麻痺とかの因子じゃないか。あと回復系もありそうな気もするぞ」
【マスターも意外と食いしん坊なので、ディーレのことを笑えないですよ】
「いや、ほんとにすまん。完全に肉の話だと思ってた」
俺は恥ずかしさがこみあげてきて、頬が火照るのが止められずにいた。
普通にディーレが人だと思って喋ってたなんて言えないよな……。
そういえばディーレは剣だった。
肉が食えるわけないな。
【どうかしましたか? マスター?】
ディーレは瞳のように紫の魔石を明滅させ、俺に声をかけてきた。
「な、なんでもないぞ。俺もただの人間だから間違えることは多々あるのさ」
【変なマスターですね。はぁー、でもはやく因子を吸収したいなぁー。いっぱい吸収してもっと強くて頭も良くなれば、マスターのお役に立てるのになぁー。そうすればお手入れも――】
「手入れは毎晩欠かさずにしてるだろうが?」
【毎晩のお手入れとは別に、お手入れはどれだけ追加してもらってもいいんです。磨けば光るディーレなのです】
いや、たしかに手入れして磨けばピカピカに光るけどさ。
けど、やり過ぎるのも刀身が痛むんだが。
俺は心の中でディーレに突っ込みをいれていた。
「手入れの回数の件は保留な」
【えー、けちー】
不服そうに魔石を明滅させるディーレだったが、剣士としての俺は手入れのし過ぎは良くないと思う派なのだ。
長くディーレを使えるよう、いたわってやりたいからこその回数制限をしている。
本当なら朝から晩まで手入れをしても飽きないほど、綺麗な刀身をしているので、こちらとしてもかなり我慢して一日一度と決めていた。
「クェエエ!」
ディーレと手入れの話していると、前方に何かを見つけたディモルが鳴いていた。
前方に目を凝らすと、雲が動いていた。
「
距離的にまだ遠く、ゴマ粒のような雲を凝視する。
雲の塊かと思われた瞬間――
目玉がパチリと開き、身体をくねらせて空を移動し始めた。
「見つけた! いたぞ!
【は、はい! いつでも行けます!】
「ディモルは全速力であの雲に寄ってくれ!」
「クェエエ!」
俺はディーレを引き抜くと、討伐対象である
快速を誇るディモルのおかげで、彼我の距離は急速に狭まっていく。
近づくにつれ、
でかい……
近くまで来たところで、追っていた
大分、距離感が狂ってたな。
これは難儀するかもしれない。
俺たちが近づいたことに、相手の
「相手も俺たちを敵だと認識した! 来るぞ!」
「クェエエ!!」
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