52:人馬一体
「クエエエッ!」
見ると、さっき逃げ去ったはずの冒険者たちが、今度は羽根の生えた蛇と大きな口をした大蛇の群れを引き連れて戻ってきていた。
あいつら、今度はなにをやらかしたんだよっ!
街道に近い場所でそう何度も魔物の群れを引き当てるなんて、よっぽど日頃の行いが悪いやつらか!
冒険者を襲っているのは、
そこを口に
「面倒なことをまた持ってきたな……」
ディモルが馬車に向かってきそうな冒険者を威嚇しているが、あのままだとスザーナのいる馬車に向けて
「ノエリア、剣を! 俺は急いで戻る!」
「え? あ、はい! どうぞ」
ノエリアから魔剣を受け取ると、俺は身体強化した脚力を使い、スザーナのいる馬車へ駆け出した。
その最中、馬車に向かって全速で駆けている俺の背中を、誰かがグイッと持ち上げた。
見ると、さっきの
「乗っけてくれるのか?」
「ブフィフィーン」
一声鳴くと、
はぇええ! この速さ、空を飛ぶディモルとためを張るかもしれない。
まるで風を切り裂いていくようだ。
尋常でない速さで駆ける
「キシャアアア!」
「待たせたな。出番だぞ!」
『は、はい!! お仕事ですね! 今度こそ血が――』
俺は魔剣を引き抜くと、まずは空を飛んでいる
分断された頭と胴体は地面に落ちてもしばらくは動いていた。
『はぁ、因子あり! ウマー』
「喋ってる暇はないぞ。次」
魔剣が因子を吸収していることに愉悦していたが、今はそれどころではない。
襲いかかってくる
「ブフィフィーン」
信じられないことに、俺が攻撃をしやすいように相手との位置取りを確かめながら、自分も攻撃しているのだ。
やっぱこいつかなり高い知性を持ってるよな……。
それにこいつ本当に
普通、これだけ近かったらたてがみの匂いで、俺が混乱しててもおかしくないはずだが。
俺を乗せて戦っている
「おまえ、やっぱただの
「ブフィフィーン」
話しかけた俺に『戦闘中によそ見をするな』と、言わんばかりのいななきを返してくる。
俺はそのいななきで再度集中し、飛んできた
「そんなことは言われなくても分かってる」
『マスター、さっきから馬と喋ってます? ディモルちゃんから浮気ですか?』
「ち、違うぞ。そういうわけじゃない! おしゃべりはなしだ! 数が多いから魔法も解禁するぞ!」
『ああ、もっと因子がぁー』
「熱く燃えたる一群の矢となりて我が敵を狩りつくせ。
俺の詠唱が終わると、魔剣の魔石から大量の火矢が撃ち出され、飛んでいた
すぐに群れていた
「ふぅ、これで――」
安心したところで、急に
あまりに急な動きでバランスを崩しかけるが、その時さっきまで俺がいた場所を
「ブフィフィーン」
「すまん、助かった」
何度か
そして、
「キシャアアアっ!!」
顔に大きな蹄の痕を残した
「そうはさせるか!」
俺は
魔剣は
『げふー。満足です。これでまた勉強がはかどります!』
魔剣は魔石を光らせ、満足気な声をさせていた。
「満足したか。じゃあ、手入れはなしでいいな」
『っ!? それは別腹です!! マスターのお手入れと因子吸収は違いますからっ!!』
手入れをしないでいいかと言うと、魔剣が慌てていた。
なんだかんだで手入れを怠ると拗ねるので、あとできちんと手入れはするつもりだ。
「嘘だよ。あとでしっかりと魔物の血は落としておいてやる」
『やったー! お手入れー!!』
そうやって、魔剣と喋っていると俺の前に
「ブフィフィーン」
「おまえにも助けてもらったな。というか、絶対におまえって
俺の問いかけに
それに関しては答えたくないようだ。
「そうか、答えたくないなら仕方ない。だが、礼だけは言わせてもらうよ。ありがとな」
「ブフィフィーン」
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