人類進化論

風見☆渚

人類進化の原因は

遺跡の様に廃坑したビルの地下室で、二人の男が何かを探している。


「おーい。灯りくれ!」

「わかった。ちょっと待ってくれ。今、・・・・・・あれ?おっかしいなぁ。少し冷えるから、温めてっと。よし、コレでどうだ?」


一人の男が冷えきった手を温めると、その手が発光し辺りを照らし出す。


「サンキュー。こっちの施設なら・・・あったぞ!

コンパクトタイプのハンディカムだ。」

「これ、映るのか?」

「古いが、電源さえあれば大丈夫だろ。」


もう一人の男がハンディカムの電源に手をかざすと、小さな青白い光を放ちバチバチッと音がした直後、壊れているのではと思われていたホコリまみれのハンディカムの電源が入り起動した。


「これで、証拠が見つかれば人類の希望にも繋がるはず。」

「動画は残っているようだ。

しっ!誰かがしゃべってる。」


ハンディカムの小さな画面には、白衣を着た初老の男性が映っている。どうやらこの廃墟となっている場所が元は研究施設で、その男性が研究の成果を語っている動画が残されていた。


このデータを見ている者よ。君は研究者か?

それとも、偶然これを発見した一般人か?

そんな事はどうでもいい。今、世界で起こっているパンデミックについて、私の研究と見解をこのデータに残す事にする。もし、研究機関にこのデータを届けられる状況なら是非お願いしたい。私にはもう時間がないのだから・・・

まずは、世界で起こっている状況の発端について説明しよう。

最初、人類が生きるには過酷すぎる環境である標高の場所で生活する民達が、ある日雲よりも大きな大鷲の姿を目撃した時が始まりだった。

その大きすぎる大鷲が民達の頭上高くを飛び回ると、その翌日民達の間で奇病が蔓延しだした。奇病と言っても風邪症状など体調を崩すモノではなく、体のある一部に異常をきたすモノだった。

最初は小さな少年の手が発光し、皆物珍しそうにその光景見ていたが、その直後次々に民達の手から炎や電気を出現させられるようになった。ある者は、その掌で自由に風を操ったらしい。神の力を宿したとして、民の皆はその力を喜び生活に取り入れていった。しかし、最初の少年が超常と言える能力を開花させてから5年後、次々に民達は突然命を落としていった。数日後、その民のほぼ全ての人間が死滅してしまったのだ。唯一生き残った者は、なぜか子供だけだった。当初は原因不明の疫病が蔓延したのかと思われたが、子供だけに感染しない事や最初に死んでしまったのが少年ということもあり原因がわからなかった。しかし、子供達にはもう一つ共通点があった。それは、能力を開花させた者同士から生まれた子供だけが生き残ったのだ。

まだ生まれたばかりの子供も多く、生きていくには知恵も体力もない。結局、その民達は全滅という運命を辿ってしまったのだ。

それから数年が経ったある日、雲よりも大きな大鷲が地上の空にも現れるようになると、戦闘機や航空機などで大鷲の目撃報告が次から次に増えていった。そして、我々でも目視出来るようになると、民達と同じように人間の手に様々な能力が開花するようになった。世界各地で異能を手に入れた人類は、突然変異した能力によって世界のあり方そのものが変わっていった。ある者はその能力を正義の為に使い、またある者は悪の組織を作るなど、超常の力はあっという間に世界の当たり前になった。

そして、世界各地で民達と同じように毎日何処かで超常の能力を開花させた人類が突然死するという事件が起こりだしたのだ。開花した能力の種類や革新的に進化した医療によって5年という日数を超える寿命を手にした者もいたが、結局のところ第一世代の人間はそう長くもたなかった。

こうして研究が出来ている私ですら、すでに第三世代の人間ではあるが、やはり寿命は以前まで言われていたような100歳や60歳などという長い生命は維持出来ていない。私も今年で43になる。そろそろ寿命が近づいているようだ。

ここで本題だ。私の見解を伝えよう。この奇病とも言える人間の突然変異による進化の根源は、大鷲の体に付着した種が原因であることがわかった。その種の大きさは1ピコ㍍で、電子顕微鏡でも確認する事は難しい。そして、その種は一粒で人間に超常の力を与えられる程の力を持っている。拡散した種は人の体の中で成長し、5年という月日で新たな種を人体に埋め込んで、体外にも放出させる。飛沫でも感染するの種は、世界各地に拡散しほぼ全ての人類の体内で今も成長を続けている事だろう。

拡散する種の感染を止める方法は存在しない。しかし、その種のおかげで人類は新たな進化を遂げる事が出来たのだが、代償として短命の種となってしまった。

この映像を見ている者は何代目の世代の人間だろうか。

もし、人類の寿命を延ばす事が出来たのであれば、私の研究も少しは役に立てたのだろう。

最終的に、人類の希望か神の怒りかわからないが、種の拡散による影響が何処までなのか、それを知りたかった。では、長生きしてくれ・・・新世代の人類よ・・・



映像はここで切れている。

白衣を来た初老の男性の言っている事に驚いた二人は、廃墟となっているビルを後にした。

二人の男が外に出ると、雲より大きな大鷲達が大空を我が物顔で飛び回っている。


「ごほっごほっごほっ・・・・・・ごぼっ!」

「大丈夫か?!」

「あぁ、俺ももう18だ。昔の人類は100年も生きたらしいし、あのおっさんだって40歳を超えても生きている。俺はあと2年持てばいいほうだろうな。」

「大丈夫だって。この映像と研究所の場所を異能庁のお偉いさんに届ければ、俺たちもあと数年は寿命がもらえるかもしれない。だからあと少し頑張れ。」

「そうだな。俺もお前の親父さんみたいに26歳まで生きられるかな。」


ここは、西暦3025年の人類。

人類は、命と引き換えに新たな進化を手にれた。


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人類進化論 風見☆渚 @kazami_nagisa

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