第1話 転生
「本当、可愛いなぁ」
そう言って彼女は俺を撫でてくれる。俺はそれが嬉しくて、本当に幸せだった。
けれど、本当にどうしてこんな風になってしまったんだろう?
俺は確かに自分の葬式を見ていたはずだ。たぶん、幽霊になって。なのに、気がついたら俺は彼女の家にいた。そして、彼女に可愛がられていた。
ウサギとして。
そう、俺は彼女のペットのウサギとして第二の人生を歩み始めたのだった。いや、ウサギだから、兎生か?
いや、そんなことはどうでもいいんだよ。問題なのは、俺が彼女に振られたのに、今は俺が彼女のペットになって愛されている、と言うことだ。
うん、振られたのに今は愛されているって、実は幸せなんじゃないか。最初はそう思ったさ。でも、俺はウサギなんだよ。ペットなんだよ。対等じゃないんだよ。そもそも、ウサギなのに、中身は人間っておかしいだろ。もし、彼女がこれを知ってしまったら、絶対にドン引くだろ。そして、捨てられてしまって、無力な俺はどこかで誰にも知られることなく、死んでいくんだ。
やはり、俺だとバレない方がいいよな。待てよ。バレるってどうしたらバレるんだ?どうやったって言葉は話せないし、バレないんじゃ……。なら、このポジションをいつまでも堪能しているのも悪くないのか?
いや、それは彼女を騙すことになる。それはダメだ。
本当、どうしたらいいんだろう?
ま、今はとりあえず、気持ちいいから撫でられておきますか。
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