ペット転生~失恋後に事故で即死してしまったら、何故か振られた相手のペットに生まれ変わってしまったけれど、どうしたらいい?~

星成和貴

プロローグ 告白

「好きです。付き合ってください」


 勇気を振り絞った俺の告白。

 彼女が今、どんな顔をしているのか知るのが怖くて、俺は下げた頭を上げることができない。

 どれだけの間、こうして頭を下げていたのだろう。一瞬なのか、無限なのか。はっきりとは分からないけれど、俺には長い時間に思えた。

 そして、その時間は彼女の言葉で唐突に終わりを迎えた。


「あの、その、ごめんなさい。と言うか、その、私、貴方の事をよく知らないし、いきなりそんなことを言われても、どうしたらいいのか分からないです」


 見事に玉砕だった。いや、確かに、俺と彼女は会えば挨拶はする。けれど、そんな程度の関係でしかなかったんだ。だから、叶うとは思ってはいなかった。ただ、この告白を機に少しでも俺を意識してほしかっただけなんだ。

 なのに、何で、こんなに胸が痛いんだろう。苦しいんだろう。

 でも、そんなところは彼女には見せられない。きっと、彼女も困っているんだから。だから、少なくとも俺は……。


「ですよね。すみません。いきなり変なことを言ってしまって」


 笑顔で俺は言ったつもりだけれど、きっと、笑えていなかったと思う。


 ……


 …………


 ………………


 それからの事はもう、覚えてはいなかった。彼女が何を言ったのか。俺が何を言ったのか。そして、その場をどうやって後にしたのか。

 ただ、気付いたときには俺は自分の葬式にいた。周りの話ではどうやら、俺は帰り道で事故に遭って死んでしまったらしい。

 振られた直後に死ぬだなんて自殺したみたいで少し嫌だな、とか思ったけれど、どうせもう死んでるんだからどうでもいいか、と開き直った。

 そして、彼女の姿を探したけれど、当然のようにその場にはいなかった。だから、俺の最後の彼女との記憶は、少し困ったような表情の彼女だった。いくつもの笑顔の記憶があるけれど、それよりも、最後の表情ばかりが俺の中には残っていた。

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