第7話 気を利かせたんだけどな。


 ロークスは、結界をやぶった。

 バサッバサッと翼がはためく音がした。ロークスは、指輪を素早くはめて、洞窟の奥へと走り込んでいく。洞窟の外では、剣戟と雄叫びと、おそろしい怪獣の声が響き渡っている。見ているヒマはない。なんとしてでも、赤い宝石バネーラを見つけ、それを奪わねば。

 ロークスは、腰をかがめて洞窟を進んで行く。奥には、宝石だけでなく、貴重な植物の実などが保存されていた。

「これは……?」

 ロークスは、ひとつの大きな袋を見つけた。あのドラゴンが大切にしているもののようだ。中を見ようとした。

「おい、なにしてる。見つけたのなら、早く帰ってこい!」

 クラレンスが、洞窟の入口でささやいている。ロークスは、これが赤い宝石バネーラだろうと思い、ひっつかんで外へ飛び出した。

 それと入れ違いに、ドラゴンが、二人の猛者に押されるようにして、洞窟の中に入っていく。ロークスは、いそいで魔法の結界を結んだ。どうにかこうにか、ドラゴンは封じられた。

「いいところだったのに」

 猛者ふたりは、文句をぶーぶー言っていたが、ロークスの見る限りでは、人間対ドラゴンでは、勝ち目はないに決まっているのである。気を利かせて悪かったね、とロークスは思った。

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