第5話 ふたりの使者とその情報


 ヨグナス国の猛者は、両手を合わせて挨拶した。頭にターバンを巻いた浅黒い男で、額にほくろがひとつある。奇妙な白い服から出ている四肢を見る限りでは、よく訓練されているようだった。

「マハメソッド、と言います」

 アルメローナ国の猛者のほうは、そっくりかえっている。鼻の下に長い、なまずのようなヒゲを生やして、頭は後ろを束ねて三つ編みにしてある以外はそり上げてあった。

「イエシン、言うですね」

 彼はそう言うと、上半身ごとペコペコ礼をした。三つ編みがぴょんぴょんはねた。手を差し出したロークスは、バツが悪くなりそれを引っ込めた。

 クラレンスが、となりで言った。

「ふたりの情報によると、この国の霊峰マヤの洞窟に、必殺の赤い宝石 バネーラというものがあるらしい。それさえあれば、人食い鬼は征伐できるそうだ」

「簡単すぎる。なぜ、自分たちだけでバネーラを取りに行かないのかしら」

 ロークスが質問すると、ふたりは声を合わせ、

「そこに行くには、魔法使いが必要なのだよ! わが国には、それがいない!」

「あ、そう」

 ほかに言うべき言葉もなかった。要するにオレは、洞窟の鍵ってことか。用がなくなったらなにをされるか、しれたものじゃないぞ。

 ロークスは、クラレンスにその話をこっそりした。クラレンスも、同じ危惧を抱いていたらしい。

「大丈夫だ。おまえに透明になれる指輪を渡しておこう」

 クラレンスは、ロークスに指輪を渡した。「洞窟に着いたらこの指輪を指にはめ、宝石をうばって逃げてくるのだ」


  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る