第18話:美少女?の【パンツ】。


「結局なんだったんだ?」


「絵菜ちゃん、世の中には知らなくていい事っていうのがあるんだよ」


 何言ってるんだか。

 とにかく今日もメイクは成功! かなりの仕上がりになっている。

 あとはこいつを着替えさせて出発だ。


「ねぇ、今日は奈那ちゃん来るの?」


 おっと、そうだった。まだどういう予定なのかをルキヤに伝えてなかったっけ。


「今日は奈那も一緒にショッピングだ」


「ショッピングって事は……また商店街行くの? 人が多いから緊張するなぁ……」


「何言ってんだお前、今日は犬袋まで行くんだよ」


 ルキヤの顔が青くなっていく。


「ちょっと待って! 電車乗るなんて聞いてないよ!?」


「別にタクシーでもいいぞ? その場合お前が払うんだがな」


「横暴だ! だったらボクは行かない!」


「そっか。じゃあ奈那と二人で楽しくショッピングしてくるよ」


「ちなみに……何を買いに行く予定なの……?」


 おっ、食いついてきやがったな。だんだんこいつの扱いが分ってきたぞ。


「そうだなぁ。今日は奈那の服をメインで買いに行く予定だよ」


「……そう、なんだ?」


 悩んでる悩んでる。もう一押しか?


「あとは下着とかも買いにいく予定だから私が奈那に似合うのを選んであげようかなって思ってて」


「ぐはぁっ!!」


「うわっ、なんだ急に……血でも吐いたかと思ったぞ」


 ルキヤは片手で胸をぎゅっと掴み、もう片手は床についてぜぇぜぇと息を荒くしている。


 とてもきもちわるい。


「なんだ? 奈那の下着に興味があるのか?」


「違う! 絵菜ちゃんが奈那ちゃんの下着を選んであげると言うシチュエーションに興味があるだけだっ!!」


「お、おう、そうか」


 やっぱり私はまだこいつを理解しきれてはいないようだ。

 この微妙なスイッチの場所がわからん。


「後は? 後は何かあるの?」


「うん。そろそろ春休みだろ? 休みに入ったらプール行こうって話が出ててさ」


「……プール? まだ寒いよね……?」


「それがさ、奈那の父親の仕事関係の人が、リゾートホテルのチケットくれたんだってさ。ホテルのビュッフェとプールを使えるらしい」



「そ、それはまさか……そこに行くって事は、その、アレを買いに行くの?」


 ……ここだ。ここで押せばイケる!


「お互いの水着選ぼうって話しになっててさ、楽しいショッピングになるだろうな~って思ってたんだけどお前が来ないのは残念だ。でも嫌なら仕方ないな」


「……て……ってない」


「あん? なんだって?」


「誰も行かないとは言ってない!!」


 さっき言ってただろうがよ。


「あっそ、じゃあ一緒に電車で行こうな」


「ぐぅ……っ、でも背に腹は代えられない……ここは、受け入れるしか……」


「大丈夫だよ。お前どっからどうみたって可愛いあこちゃんだから」


「そ、そうかな? そうだよね。ボク可愛いもんね!」


 腹立ってきたぞ。こいつ自分があこの時の姿に自信持ちすぎなんだよなぁ。

 自信持ってくれなきゃ外に連れ出せないからいいと言えばいいんだけど、ルキヤがあこを好きすぎて私が勝てる気がしない。


 ……なんで私はこいつ自身と張り合おうとしているんだ。


 やめだやめだ! 悩んでてもしょうがない。


「ルキヤ、今日はこれを着てもらうからな。ほれ、着替えろ」


「うん、分かった。ちょっと待っててね……」



 着替えをじーっと眺めていると、上半身を全部脱いだくらいの所で、


「えっ、な、なに見てるの!? 後ろ向いててってばっ!」


 乙女かっ!

 今回は堂々と着替え始めたから平気なのかと思ったけど、テンション上がってて気付かなかっただけらしい。


 しかし……別にルキヤの裸なんて見たの初めてってわけじゃないけど……。

 結構、セクシー……。


「絵菜ちゃん」


「ひゃいっ!?」


 先程の光景を思い浮かべている時に急に声をかけられたので驚いて変な声でた。


「変な声出してどうしたの? ……それはそうとこの服着て電車のるの……? ほんとに?」



「もう着替え終わったか?」


「う、うん……」


 振り向くと、なんだか恥ずかしそうにしてるルキヤ。

 もじもじとスカートの裾を押さえるその姿は私にドストライクというか物凄い衝撃を与えた。


「おぉ……」


「そんなまじまじ見ないで……はずかしいよ……」


 完全に乙女である。


「めっっっっちゃ可愛い」


「うん、それは知ってるけど……」


 こんにゃろうめ。しかし本当に可愛いんだから仕方ない。


 私が用意した服は、黒のキャミソールと薄手のカーディガン。あと結構ミニのフレアスカート。


「こ、これ丈短すぎじゃない? パンツ見えちゃう……」


「って言ったって中身はトランクスだろ?」


「……」


 おい。何故黙る。


「お前……まさか……」


「悪い!? この年になってもブリーフで何が悪いのかなっ!?」


「い、いやそういう人もいるだろうし何も悪くはないだろ」


「いいや、こいつ高校生にもなってブリーフとかワロス!! みたいな顔してた!!」


 わろす??


「ごめん、ちょっとよくわからん。とにかく見られなきゃいいんだろ?」


「こんなミニじゃ階段上ったら丸見えでしょうが!」


「むぅ……仕方ない。だったらそんなルキヤに良い物を貸してやろう……確かこのあたりに……」


 私はクローゼットの中、下に置いてある衣装ケースの引き出しを開け、目当ての物を探し始める。


「そこに何か入ってるの?」


「ばっ、馬鹿野郎っ!! 覗き込むんじゃねぇよ!! ここは私の下着類しまってあるんだぞ!?」


「……なんだ絵菜ちゃんの下着か。別に興味ないから大丈夫だよ」


「ぶっ殺すぞ!?」


「何イライラしてるの? カルシウム取りなよ。それか乳酸菌」


 あぁこいつほんとにもう……!

 そんな可愛い顔してなんでこんなに腹立つ言動ばっかりしやがるんだ……。


「ほれ、あったぞ」


「まさか絵菜ちゃんのパンツ履けって言うんじゃ……」


「……」


「ちょっと黙らないで!? ほんとに絵菜ちゃんのパンツ履くの!?」


 間違ってはいない。が、


「よく見ろ。パンツはパンツかもしれんがそれなら大丈夫だろ」


「何これ……かぼちゃぱんつ?」


「ドロワーズってんだ覚えとけ」


 受け取ったルキヤは、自前のパンツが見えないように気をつけながら私の目の前でドロワーズを装着。


 それも下着って意味ではその姿勢もどうかと思うんだけどな。


「これはこれでちょっと恥ずかしいけど……ないよりマシかな」


 スカートたくし上げるんじゃねぇよ私を殺す気か……?

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