第17話:天使の【双丘の双丘】。
「絵菜ちゃん遅いよ!」
「んぁ? どうした? タダコーの質問攻めにでもあったか?」
教室に入ったらもう授業が始まっていて、ルキヤの後に後輩が具合悪そうだったので介抱していたと物理の教師に伝えて席に着く。
そして、授業が終わるなりルキヤが私にアイコンタクトをしてきて、教室から飛び出したので仕方なく後を追いかけると……。
「質問攻めなんてもんじゃなかったよ……あこちゃんと仲良くなりたいからなんとか仲を取り持ってくれってしつこくて……」
この調子である。
「お前の親類扱いなんだから仕方ないだろう。むしろタダコーをそこまで本気にさせてしまった自分を呪うんだな」
「うえぇ……困るよ……それもみんな絵菜ちゃんのせいだからね? ちゃんと責任とってよ?」
責任取ってよ。
そのセリフに軽く頭が麻痺りそうになった。
「お、おう……万が一の時は私が責任取ってやるから安心しろよ」
「本当かなぁ? 信じていい?」
むぅ……こいつはどうしてこう簡単に私の心を簡単にかき回していくんだろう。
いや、簡単にかき回されてる自分が悪いのか?
私がちょろいのか……?
そう言えばさっきうさこが言ってた言葉もそれ系じゃなかったか?
あの時はちゃんと聞き取れなかったから聞き返したけど、うさこはこう言ったんじゃないか?
ちょろ可愛い、と。
可愛いなんて言われ慣れてないから耳が素直に受け入れてくれなかったが、たしかそんな言葉だった気がする。
私ってやっぱりちょろいの?
「ねぇ、具体的にタダコーはどうしたらいいかな?」
「えっ、あ……あぁそうだったな。あんな奴適当にそのうちちゃんと紹介するよとか言っておけばいいんだよ」
「えー? そんなにちょろいかなぁ?」
「誰がちょろいだと!?」
「た、タダコーがそんなにちょろいかな? って聞いただけなんだけど……どうしたの??」
「す、すまん。なんか勘違いした」
頭の中いっぱいの時にいきなりちょろいって単語が出てきて瞬間的に反応してしまった。
反省しないと……。
そのうち反射的に殴り掛かってしまいそうだ。
「とにかく、その場しのぎをずっと続けて行けばいつまでも会わずに済む作戦でいこう。完全に拒絶してもめんどくせぇ事になるしな」
「でも本当に会う事になっちゃったら……」
「それはその時だ、思い切り振ってやれ。それがタダコーの為だ」
「うぅ……なんでボクがこんな目に……」
「私達を近くで観察する事に対するリスクだと思って受け入れろ。ほら、教室に戻るぞ」
私の背中に向かってごちゃごちゃ何かを言ってるルキヤを無視して教室に戻ると、奈那がにっこにこしながら私を迎えた。
「ねぇねぇ、ルキヤ君と二人でどこに行ってたのかなぁ~?」
「ん、別にちょっと話があっただけだよ。あこの事でさ」
「あこってルキヤ君の親戚の子だっけ? てっきり二人でイチャイチャしてたのかと……」
「はぁ!? 私が? ルキヤと!? 冗談でしょ?」
そんな、そんなのしていいならしたいけど無理なんだもんしょうがないじゃんか!
「ごめんごめん冗談だってば♪ でもそうやって焦る絵菜ちゃんはすっごく可愛いよ☆」
「はいはいそりゃどーもありがとーございやした」
「あー、信じてないでしょー? 本当なのになぁ」
「私よりあこの方がよっぽど可愛いから楽しみにしてな」
「へぇ……絵菜ちゃんがそこまで言うって事はよっぽどだね! これは期待がもてますなぁ♪」
そう言って奈那は立ち上がり、腰に手をあてて胸を張った。
大きい。身長と体重の割にこれは大きすぎる。
「こんにゃろっ!」
ばいんっ。
「うおっ、なんて弾力だ……」
「ひゃっ、ちょっと……いくら絵菜ちゃんでも人のおっぱいをいきなりつつくのはどうかと思う……」
普段何をしてもケラケラ笑っている奈那が珍しく恥ずかしそうに胸元を腕で隠して顔を赤くした。
「くっ、これが女子か……っ」
「いやいや絵菜ちゃんも女子でしょーが」
同じ女子とは思えないこの可愛さよ。明らかにこの学校で誰よりも可愛い。私が保証する。天使。
ただ、そんなやり取りを案の定あいつが目を血走らせながら見てるんだよなぁ。
どうやら今回は我慢できなかったらしく机にゴンっと頭を打ち付けたかと思うとダンダンと机を叩いていた。あーきもっ。
すると奈那が私の耳元に小声で
「あのね、絵菜ちゃん……つつく時はその、場所を気を付けてほしいっていうか、変な声出そうになっちゃったじゃんか」
と囁いてきた。
何を言ってるんだこの子は。
場所を気を付ける?
こんな場所でいきなりつつくなって言いたいんだろうか。
「あぁごめんごめん。今度から気を付けるよ」
「ほんと、お願いね? ……恥ずかしいから」
そのやり取りがずっと何か引っかかっていた。
学校から帰宅し、ルキヤを部屋に呼んで、奴にメイクを施しながらもずっとその事を考えていたけれど答えが出ない。
そもそもあの言い方だと場所さえ気を付ければつついていいという事になってしまうじゃないか。
私の考えすぎだろうか?
ふとメイクで可愛くなっていくルキヤを見ていたらタダコーが隠し撮りした動画の事を思い出す。
タダコーのスマホ越しではあるものの私のスマホにはあのえっろい胸元が保存されているのだじゅるり。
……いやいや、私はいったい何を考えているんだ変態じゃあるまいしルキヤの胸なんて見たって……ん?
そうか、そうだったのか。分かったぞ!
奈那があんなに恥ずかしがってた理由は……。
「あれは奈那の乳首だったのか!」
「ぶふぉっ!! えっ、ごめんそれなんの話!? もしかして教室でのアレの事!? 乳首って、ちょっ、もうそこまで!?」
いきなり噴き出しやがってきたねぇなこいつ。
「乳首の話で急に興奮するとか変態か」
「変態じゃないし! ごく普通の反応だし!? 今重要なのは実際つついたのかどうかでしょ!?」
まったく、いくら奈那が可愛いからって乳首の話で露骨に興奮しやがって……ド変態めが。
「ほい、完成だ。今からルキヤじゃなくてあこなんだからいちいち女の乳首で盛り上がるなよ? ほら、立て。さっさと着替えろ」
「……ごめん、もうちょっとだけ待って」
……?
その後無理矢理立たせようとしたが予想以上の抵抗にあい、仕方なく五分くらい待ってやった。
意味が分からん。
とりあえず奈那のおっぱいをつつくような事が今後もあるようならば再び狙いに行ってやろう。
反応が可愛いから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます