第4話:【逆襲】作戦始動。
「そもそもさ……いつからそういう趣味になったの? っていうかもう趣味っていうより性癖だよね?」
昔はこんな子じゃなかった筈なんだが……。
「性癖って……。まぁ確かにそうかもしれないね。いいよ認めるよ。百合好きはボクの性癖だ」
キメ顔で何言ってんだこいつ……。
「百合って何? 花?」
「……マジで言ってるの? まさか絵菜ちゃんがそこまで頭悪いとは思ってなかった……」
あぁ殴りたい殴りたい……。
「いいから教えて」
「あのね、女の子と女の子がイチャイチャしてるとするでしょ」
「うん」
「それが百合」
……? なんでそれが百合って表現になる?
「本当に友達として仲良くしてるだけだった場合は?」
「……他の人から見て百合に見えてるならそれは百合。百歩譲って百合予備軍」
なるほど。女の子同士の恋愛とかを百合と表現するって事だけは分かった。理由はわからんけど。
「私と奈那はただの友達なんだが……」
「いや、少なくともあのやり取りは既に百合……さっきも言ったけど百歩譲って百合予備軍だからね」
だからねってお前……私の恋愛感情を勝手に女子相手に向けるんじゃねぇよ……。
「ん? ちょっと待って。それってレズビアンとは違うの?」
「……はぁ~」
ルキヤは本当に呆れた、という表情で深くため息をついた。
「あのね、それを語り出すといろいろと議論を呼ぶんだけど、同一視する人はいるよ。レズも百合も一緒だってさ。だけどね、ボクは断言させてもらうよ。その二つには明確な差があって、ボクが尊いと思っているのは断然百合だという事をね」
やっべぇ奴だこいつ。
要するにこいつの中での感覚では、女の子同士がほのかな恋愛感情とかを持ちつつイチャイチャしたりしてるのが百合で、肉体関係持っちゃってるようなのはレズだという事なのかもしれない。
違うのかもしれないけどもうあまりこの話題に深く突っ込んじゃいけない気がした。
しかし冷静に考えるとめちゃくちゃ腹が立つ。
本当にこいつ殺したい。
でも今ここでぶん殴って私の気が晴れるのかと言われると多分そんな事はないだろう。
こいつが病院送りになって、部屋に一人取り残されてから枕がびちょびちょになるに違いない。
それに下手をすると私は部屋に一人じゃなくて独房に一人になってしまうかもしれない。
本当にそれでいいの?
答えは否。
こいつにもっと、私が味わったのと同じか、それ以上の苦しみを味合わせてやりたい。
そうでもしなきゃ私の気が済まない。
……私は閃いてしまった。これは妙案だ。
上手くいくか分からないけれど、なんとしても成功させてみせる。
その為にもまずは……ルキヤも私達ともっと近い所まで来てもらわなきゃならない。
「そんなに私と奈那がイチャイチャしてるのを見たいの?」
「見たい」
「じゃあなんであんなに遠くから見てるの?」
「百合の中に男なんて必要ないんだよ! 女の子の間に挟まりたいなんて言うバカは死ねばいいと思ってる」
お、おう……そうか。それはどうでもいいけど。
「もっと近くで見たいと思わない?」
「思うさ。すぐ近くで見れたらどんなに幸せだろうってボクはいつだってそう思ってるよ。だけどそれはダメなんだ。男のボクがそこに混ざっちゃいけないんだよ!」
めんどくせぇなこいつ……。
「私が、男が介入しない方法でめちゃくちゃ近くから見れる手段を用意してあげるって言いったらどうする?」
「そんな方法があるわけ……ない」
お、否定しながらも少し揺らいでいるのが分かる。目が泳いでるし身体が少し震えてる。ほんとに可愛い奴だなぁ。
……はっ。
ダメだダメだ。私がこんなんじゃ……。気をしっかり持て。こいつを地獄に落とすんだ。
「私に任せなさい。絶対損はさせないから。すぐ近くで見れるいい方法、試してみない?」
「ほ、本当にそんな方法があるの……?」
乗って来た!
「勿論だよ。ほら、目を瞑ってごらん。それと両手を前に出して」
「……? こう?」
ルキヤは大人しく両手を出して目を瞑った。
期待と不安で震える唇が妙に艶っぽい。
はぁ……。このままキスでもしてやろうか。
そんな事を考えながら私はルキヤの手首にガムテープを巻いた。
「え、何してるの?」
「まだ目は開けちゃダメだからね。ほら、次は足!」
私はルキヤの足を前に伸ばさせて、両足首を纏めてガムテープで縛る。
「え、絵菜ちゃん……? え? 冗談でしょ?」
「冗談で私がこんな事すると思うか?」
「と、東京湾に沈められる!!」
「沈めねぇよ」
こいつ私の事なんだと思ってんだ……なんだか悲しくなってきた……。
そして……。
「ねぇ……まだ?」
「まだ。もう少し」
両手足拘束して無理矢理……とか背徳感が半端ないな……。
ちょっと変なアレに目覚めてしまいそうだ。
「…………ねぇ、まだ?」
しかもこいつの不安そうな声が私の何かを刺激するんだよ……。
「もうちょいだって。待ってろ……よし、もう目を開けていいぞ」
私はルキヤの手足からテープを剥ぎ取る。
「いったぁ……なにするんだよ……」
文句を言いながら私を見上げるルキヤに、私は顎でサインを送る。
鏡を見ろ、と。
「……だ、誰?」
私も想像以上の仕上がりに驚いている。
「天使……?」
残念だけどお前だよ。
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