リズムゲームと言う可能性

アーカーシャチャンネル

本編

 彼女は何時も通り、ゲーセンへと立ち寄った。周辺を見ても、置かれているのは対戦格闘や対戦アクション、クレーンゲームと言った自分に無縁なものばかり。

ヘッドフォンを首にかけ、ブルーライト対策メガネ、服装は寒さしのぎが出来る程度のちょっとした厚着程度――その彼女が探していたのは、ゲーセン発のジャンルのゲームである。

そのジャンルはリズムゲーム、平成の前半辺りからアーケードに進出し、二〇〇〇年代中盤から二〇一〇年代当たりは盛り上がりを見せた。

 しかし、肝心なリズムゲームはあるメーカーからしか出ていない状況である。家庭用では様々なメーカーも出ていたが、アーケード分野に限ってはオンリーワンに近い状況があった。

様々な権利関係もあってか他のメーカーがアーケードへ進出する事が困難だった――という大人の事情があるとまとめサイトには記載がある。

それ以外にも事情はあるだろうが、純粋にリズムゲームを楽しもうと考えている彼女に、そこまでフェイクニュースにも似たような悪意あるまとめサイトを鵜呑みにする事はない。

(有名所だと、いくつか既にプレイ済みだからなぁ――)

 周辺を見回し、発見した筺体はどれもプレイ済みの作品だった。彼女が求めているのはレア機種である。

太鼓、ギター、ドラム、DJセット――と言った形状の筺体は有名所であり、長期シリーズに突入していた。ピアノの筺体も――入りそうな可能性は否定できない。

(新作と言っても、今のご時世ではおかれているかどうか――)

 平成終盤ごろになって、アーケードよりもスマホアプリとしてのリズムゲームが増え始めていた。

それこそクオリティに関してはお察しな物もあれば、アーケードも顔負けなクオリティの作品も存在している。

中にはスマホアプリ版からアーケードへ進出したゲームも存在しているほどだ。



 次第に別ジャンルの機種ばかりを見かける為か、一休みしてゲーセンに設置されたベンチに座り込んでしまう。

隣を見ると、ベンチではスマホアプリのリズムゲームをヘッドフォン装備でプレイするゲーマーの姿もある。

ゲーセンに来たのであれば、アーケードゲームをプレイして欲しいとは思いつつも、彼らはゲーセンのゲームに魅力がないと感じているのだろう。

(それでも、最初のリズムゲームが生まれて――広がった種は、確実に花を咲かせている)

 彼女はスマホアプリのリズムゲームにゲーマーが取られているはずなのに、それを悲観的には捉えていない。

それこそ憎しみの感情を生み出し、SNS炎上のきっかけになりかねない。炎上の種を広げる事は同じゲーマーとして、やってはいけないのだから。

(これも、令和の時代と言うべきなのか)

 数分後、若干だが人の動きが慌ただしくなっていく。どうやら、新しいリズムゲームの設置準備が終わったらしい。

彼女は人の動きも気になったので、そちらの方へと移動する事にした。



 リズムゲームの筺体が大型ナノは今に始まった事ではない。しかし、周囲のギャラリーが手を出せないでいる状況は見ていられなかった。

ゲームモニターは分かるが、モーションカメラのような物は――設置されていない。コントローラーに該当する物は、ビームサーベルにも似たようなガジェットだ。

 つまり、ビームサーベルで音楽を演奏しろ――という無理難題を突き付けているのである。

リズムゲームは演奏体験と言う要素に比重が置かれているが、どうやってビームサーベルで演奏をするのか?

しばらくして、モニターにはデモムービーが流れ始める。どうやら、ビームサーベルを振って演奏するタイプのようだ。

単純に振ると言うよりも、剣を実際に振るう様な物だろうか。リアルで剣を持つなって事はさすがにない。

「リズムゲームも、移り変わっていくのか」

 彼女は思う。先行して覚えた知識に縛られて、新しく生まれていく物を否定するのは間違っている。

アイディア勝負は問題ない。被ってしまったら、それはそれで――と言えるかもしれない。

対戦格闘ゲームでは、もはや体力ゲージや超必殺技、様々なシステムで独自色と呼べるような物は少なくなっている。

リズムゲームも同じであるはずなのだ。ほぼ固定化されている傾向が見え始めた対戦格闘よりも――。

かつて、あるメーカーが独占し続けた技術、それが独占状態でなければ――リズムゲームはもっと、ユーザーが増えていた。

新しい種を飛ばし過ぎて、駄作が生まれるような状況を阻止するのはクオリティ面で案の一つと言えるかもしれない。

しかし、技術独占で新しい種すら飛ばさないような状況は逆効果になる可能性が高いだろう。 

「さて、先陣を切るのは――誰かな?」

 誰もプレイをするような様子がないので、彼女は早速だが一番手としてプレイする事になった。

そして、彼女はポケットからスマホを取り出して電子マネーのタッチ箇所に置き、ゲームプレイを開始する。

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