第112話

「黒炎くんがいつもテスト勉強に付き合ってくれるお陰で、赤点は回避してるよ」


「そうみたいだな。でも、最終的には朱里が頑張った結果だぞ。俺は手助けをしただけだから」


「そんなことないよ! 黒炎くん、二年生からのテストで高得点だったら何かしてくれない?」


私にしては、珍しいオネダリをしてみる。それはもう、飛びっきりの上目遣いで。


「頑張ったご褒美にってことか? そうだな……デートとかどうだ?」


「それいいかも。やる!」


「朱里、今のって」


「なに?」


「いや、なんでもない」


フイっと横を向く黒炎くん。だけど、その横顔が真っ赤なのは私にはバレバレで。今のオネダリ、効果抜群だったのかな? だったら成功だ。とはいっても、身長が離れてるから自然と上目遣いにはなるんだけどね。


私がテストで高得点だったら、デートできる約束しちゃった。これで、デートの回数が増えるし、今から楽しみだな。でも、勉強は今よりも、もっと難しくなるから頑張らないと!


そういえば……付き合ってから、デートらしいデートをしていない気がする。


「そういや、デートらしいデートを朱里としてなかったな」


「え?」


思考を読まれたと焦っていた。けど、黒炎くんもそれは気になっていたんだ。


「今は学校もあるし、学年末も近いしな。春休みはデートたくさんしような」


「うん!」


今から春休みデートの予定立てるのが楽しみ。けど、そうだった。学年末の存在をすっかり忘れてた……。それだけ浮かれきってる証拠だよね。


三年生は卒業だけど、私たちは普通に最後のテストが残ってる。


「今の朱里の成績なら補修はないし、安心じゃないのか?」


「それはそうなんだけど……」


そうじゃなくて。高得点を取らないと意味がないのに。


「高得点なんか取らなくても、俺は朱里とデートするつもりでいるぞ。……朱里はそれだと迷惑か?」


「そんなことない! すごく嬉しいよ」


どうしよう。そんなことを言われたら、また好きになってしまう。でも、勉強は今後のためにも頑張らないと。


出来れば、黒炎くんと同じ大学に行きたいし。


「嬉しそうだな。その証拠に顔が真っ赤だぞ」


「え?」


言われて気付く。自分の頬を触ってみると、たしかにほんのり熱い気がする。

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