12章 友チョコと本命チョコと甘いキス

第101話

「霧姫朱里、このチョコを本命として受け取ります」


紅蓮会長宅。

台所で手作りチョコが完成したから、紅蓮会長に渡すとまさかのこの発言で。


「いや、それは義理っていうか……友達チョコといいますか」


「会長、俺たちの交際を心から祝福してるっていうのは嘘だったんですか」


「それは言いました。だけど、隙あらばアタックすると伝えましたよ。黒炎、貴方には言ってませんでしたね」


「黒炎、紅蓮様。朱里様がお困りですよ」


焔さんが二人の口喧嘩の仲裁に入ってくれているも、聞く耳を持たない。


「兄貴は黙っててくれ。これは会長と俺の問題なんだ」


「自身がどう思おうと、個人の自由だと思います」


「会長、さすがに俺の前でその発言はどうかって話をしてるんですよ!」


心無しか、火花が飛び散っている様に見える。


事の発端はバレンタインデー前日までさかのぼる。



「クリスマスのときは失敗したし、明日くらいは……!」


部屋で小さな決意をする私。


夢のようなクリスマスから早二ヶ月。毎日、黒炎くんと幸せな日々を送っている。楽しい時間はあっという間にすぎるというのは、どうやら本当みたい。


だけど、クリスマスには一つだけ後悔していることがある。それは、黒炎くんにクリスマスプレゼントを渡せなかったこと。どんなに忙しくても、黒炎くんは私にこんな素敵なものをくれたわけだし。


私も黒炎くんに、なにかしてあげたい。


それに明日は女の子にとっては一大イベントであるバレンタインデーなわけだし! チョコにたっぷりの愛情を込めて……けど、一人で作るのは失敗しそうだし。黒炎くん以外の誰かに先に味見とかしてもらって、出来れば友達なんかと一緒にワイワイ楽しく作りたい。と、考えているとスマホの着信が鳴った。


「も、もしもし?」


「朱里様ですか? ご無沙汰しております。私は柊……」


「焔さん、どうしたんですか?」


電話の相手はまさかの焔さんで。そう、あれから焔さんとは連絡を取るようになった。紅炎さんのこともあって、やっぱり心配だから。黒炎くんも本当のことを知ってから、お兄さんとの距離を少しでも縮めようとたまにだけど、連絡をとっているみたい。黒炎くんなりに家族のことを考えているんだろう。

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