第102話

交際を認めてくれたとはいえ、私は紅炎さんのことを全て許したわけじゃない。特に焔さんに対する扱いは未だに変わっていないと聞くから尚更。黒炎くんもおそらくそれが心配なんだろう。


だけど、焔さんの今の主は紅炎さんではない。前に見た二年の先輩だ。紅炎さんの所に行くのは不定期だと聞くし、それが唯一の救いだろうと私は思う。

今の主、先輩は焔さんをとても大切にしていると焔さん自身から聞いた。とはいっても、私はその先輩と接点がないから直接話したことはないんだけど。


「明日はバレンタインデーですので、良ければ一緒に手作りチョコを作らないかというお誘いを……」


「! 是非お願いします」


悩んでいるタイミングで焔さんから誘ってくれるなんて。これで明日の夜には黒炎くんに本命チョコを渡せそう。しかも、焔さんは料理はプロ並みに上手いと聞くし教わって作れば完璧なのでは?


こうして明日の約束をし、電話を終える。やっぱり電話をしてる分だと焔さんが男の人ということを忘れてしまう。見た目も髪は長いし、口調も仕草も私よりも女性らしいからわからないんだけど。


黒炎くんのお兄さんだけど、見た目だけなら似ても似つかない二人だからなぁ。


だからなのか、焔さん自身を女性だと思い込んで接してしまってる私もいるわけで。相談もしやすいんだよね。多分、私に対して恋心を抱いていないという点が大きいんだろうけど。紅蓮会長だったら、そうはいかないし。


そういえば紅蓮会長、第一志望の大学の推薦が決まったとか言ってたなぁ。名前は誰もが聞いたことがあるような有名私立大学だったけど、あそこってめちゃくちゃ偏差値高いんだよね。


私だったら一生かかっても、合格出来ないようなところ。まぁ、紅蓮会長は常に学年トップだったわけだし、頭のいい大学に行くのも納得だけど。


いずれ私も大学行くわけで、進路とかどうしよう……全然考えてないや。

黒炎くんは大学どうするんだろ。って、今は明日のこと考えなきゃ!


そうだ。これからもずっと一緒にいられますようにってチョコに願いを込めよう。と思った矢先、再びスマホが鳴る。


……紅蓮会長さんからだ。噂をしていたらなんとやらってやつだよね、多分。噂じゃなくて、ただ、少し気になっただけなんだけど。

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