第90話
その中でも主人公と同級生で同じクラスの黒崎アカリはクラス委員長だが、ツンデレで主人公になかなか素直になれない女の子。けれど、デレた姿は男心をくすぐる。
俺はアカリに一目惚れしたんだ。一瞬でギャルゲーの虜になった俺は、その日を境にその手のギャルゲーを買い漁った。
正直、今まで自分が本当にしたいこと、好きなことは特になかった。ようは一つのことに熱中するような何かが見つからなかったのだ。会長のアシスタントをしていても、それはあくまでも仕事と割り切っていた。生きるためにはお金を稼ぐのは必要。
それに家を出てからはそんなことを考える暇はなかったしな。あのまま家に残っていれば、柊グループとして決められたレールを歩くだけ。たしかにそれは悪くないかもしれない。けれど、俺にとってそれは本当にしたいことではない。
だけど、俺は見つけたんだ。自分の道は自分で決め、切り開くんだとこのギャルゲーをして学んだ。
だが、一人暮らしを始めると時より寂しさと孤独感に襲われた。母親の死と美羽さんの失踪が頭の中をかき回す。父親が俺を柊グループに連れ戻そうとする悪夢を見たりもした。
おそらく、それの影響だろう。
自分だけの世界を創り、殻に閉じこもるようになったのは。アカリを二次元の存在ではなく、実在の人物として見るようになった。いつも俺の側にいて、支えてくれる。
話しかけてくれることはないとわかっていても、俺にだけは声が聞こえる。そうすると、何故だが心の安定が保てるようになった。一人でいても寂しさに駆られない。むしろ、アカリといるから大丈夫なんだと思うようになった。
ギャルゲーをしてる間、アカリのことを考えている時は辛いことを全て忘れられた。
それから数年が経ち、俺は会長と同じ高校である星ヶ丘学園の入学を決めた。自分(会長)の目の届く範囲だと心配がないからと言われた。俺が知らないとこで、いつの間にか“ 堅物会長”というあだ名で生徒から呼ばれているとか。
自分と接点があると被害が及ぶから極力、学校では知らないふりをしてほしいと予め言われていた。そのため、会長とは他人のように接することを決めていた。まさか高校になっても、会長とこんなに関わりを持つなんて思わなかったけどな。
そして、高校生の春……俺は朱里と再会した。
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