第60話
「それにしても……」
「?」
黒炎くんが私のメイド服を上から下までじっくりと見つめる。もしかして似合ってない、とか?
接客が始まってからメイド服を着たから、そういえばちゃんと見てもらってなかったな。さっきは忙しくてそれどころじゃなかったし。
「朱里のメイド服すごく似合ってる、可愛いぞ」
「あ、ありがとう」
面と向かってそう言われると恥ずかしいな。さっきから、私だけペースを崩されてばかりだ。
「そういや朱里も俺と一緒に休憩しろって言ってたぞ?」
「え、誰が?」
「クラスメイトだ」
さっき話していた男子のことを見ると、「頑張れ!」と言った表情でこちらを見ていた。恋の応援は嬉しいけど、また気付かれてしまった。というか、ここまでくると黒炎くん以外のクラスメイトは私が黒炎くんを好きってこと知ってるんじゃ……と最近は思うようになってきた。
「だから、一緒に文化祭まわらないか? 朱里が迷惑じゃなければだが」
「全然迷惑じゃないよ! 一緒にまわろう」
むしろ、すごく嬉しい! と内心はめちゃめちゃ喜んでいたけど黙っていることにした。会長さんに黒炎くんの前でニヤけ顔はほどほどにって言われてたし。
「接客してたから腹減ったな……料理は運んでたが、俺達は食えてないもんな」
「黒炎くんの場合、人の倍動きすぎだよ。あれだと疲れちゃうよ。あんまり無理しないで」
「準備を手伝えなかった分を取り戻そうと思ったんだ。俺は男だから大丈夫だ。でも、なんであんなに多かったんだ……? メイドや執事喫茶なら他のクラスもやってんのに」
自覚がないって怖いなぁ。あれはどうみても黒炎くん目当てだよ。そう改めて思うと、黒炎くんはモテるし競争率も高い。そんな中で私が告白しようとしてるってなかなか無謀なんじゃ……。
「朱里はまず何から食いたい?」
「ん~、文化祭と言ったらやっぱりクレープかな!」
「女子って甘いもの好きだよな」
「む。そういう黒炎くんは嫌いなの?」
「嫌いじゃないぞ。どちらかというと甘いものは好きだ。よし、まずはクレープ買いに行くか」
私は黒炎くんと2人きりで文化祭をまわることにした。宣伝用だから着替えずにそのままっていうのが落ち着かないけど、黒炎くんの執事服が隣で見れると思うなら、私のメイド服も悪くない。それに可愛いって言ってくれたし。
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