第61話

「ん~、甘くて美味しい!」


私は、つぶつぶイチゴ+アイスが乗ってるクレープを頼んだ。しかも、生クリームもたくさん。頼んだ……というよりは黒炎くんに奢ってもらったんだけど。俺は会長から給料貰ってるし気にするなとは言ってくれたんだけど、さすがにそろそろ申し訳なくなってきた。


「あれ? 黒炎くんはクレープ買わなかったけどいいの?」


「いきなり甘いものよりはガッツリ食べたくなってな。クレープは朱里のを少し貰えば満足だ」


パクッ! と私の手元にあるクレープを食べる黒炎くん。そこ、私が食べたとこ……これって関節キス!?


「クレープもこれだけボリューム入ってるとガッツリかもしれないな。でも、これ結構甘くないか?」


さいわい黒炎くんは気にしてないみたいだけど、私はボフンと顔が赤くなっていく。


「甘いかな? こ、このくらい普通だと思うんだけど……」


次は私が黒炎くんの食べたクレープに口をつける番……そう思うと恥ずかしい。でも、黒炎くんも対応も普通だし、私も普通にしてなきゃ変だよね。


「ク、クレープ美味しいね、黒炎くん」


やばい、緊張しすぎて声が裏返ってる。あきらかに動揺してるのがバレる。


「朱里、なんかさっきと様子が違うけど大丈夫か? って、頬にクリームついてるぞ」


そういって右手でクリームを取って、それをペロッと舐める黒炎くん。


「ちょ……黒炎くん!?」


一体、何をしてるのかな。自然にイケメンの行動というか……それは普通、付き合ってる恋人がやることではないでしょうか。こんなの他の女子にやったら、イチコロになってすぐに黒炎くんのこと好きになっちゃうよ。


「さっきから顔赤くなったり、声が裏返ってるけど、どうしたんだ?」


相変わらず鈍感な黒炎くん。恥ずかしさもピークでおかしくなりそうなので、ここは正直に思ってることを話そう。


「あのね、黒炎くん。クレープを関節キスしたり、頬についてるクリームをとって、しかも舐めるなんて行動は恋人としかしないというか……」


「あ……わ、悪い」


あ、れ? 今度は黒炎くんの様子がおかしい。あきらかに動揺してる。というか、さっきの私みたいに顔が赤い気がする。


「なにも意識せずにやってたから気付かなかった。そう、だよな。朱里は恋人じゃなくて幼なじみだもんな。なんか、小さい頃もこうやってしてたから普通だと思ってて……」


「ううん、大丈夫。なんか私もごめん」


お互いに耳まで真っ赤だ。プシューっと蒸気があがりそうなほど。私たちのまわりだけ温度が上がった気がして、心なしか、かなり暑くなってきた。

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