第31話

「アカリにも膝枕したことあるのに、それを誰にも理解されないって辛いもんだな……」



そんな悲しそうな顔、黒炎くんにしてほしくないよ。



「黒炎くん……。私はアカリちゃんのこと好きだよ、可愛いし。それに黒炎くんとお似合いだと思う!!」



なんで私、黒炎くんとアカリちゃんの恋を応援してるんだろう。って思ったけど、でも今は黒炎くんの心が少しでも軽くなってほしかった。ただ、それだけ。



「朱里……そんなに気をつかわなくていい」



黒炎くんは多分わかっているんだ。だけど、アカリちゃんは黒炎くんの中では存在している。



それが心の支え。どうして? なんでなの。

そこまで黒炎くんを苦しめているものってなんなの。踏み込んではいけない。だけど、踏み込めないからもどかしい。



「気なんか遣ってない。私、本当にアカリちゃんはいると思ってる」



「そういってくれるだけで嬉しいぞ。ありがとな」



「どういたしまして。大分回復したから、次いこ? せっかく会長さんがくれたチケットだしもっと楽しまなきゃ! ねっ?」



私は起き上がり、黒炎くんの前で両手をいっぱいに広げた。



「遊園地って楽しいところなんだよ! なんなら、アカリちゃんとデートしてるって思ってもいいんだよ?」



「朱里。目の前にお前がいるのに、アカリの代わりにしろなんて言ったら駄目だ。お願いだから嘘でもそんなこと言わないでくれ。自分自身を否定したら……お前が消えてしまう」



「え。冗談、冗談だってば!」



アカリちゃんの名前を出したら元気が出ると思って冗談を言ったつもりが、逆効果だったとは。



黒炎くんから腕を握られた。消えてしまわないでと言わんばかりに、それはとても力強くて。



「もう言わない。だから遊ぼう?」



「それなら良いんだ」



私たちはジェットコースターに乗って叫んだり、コーヒーカップやいろんなアトラクションを楽しんだ。一段落すると、お土産屋さんを見ていた。



「う〜ん」



私はウサギと猫のキーホルダーのどっちを買うかで悩んでいた。



「あ、そうだ!」



あることをひらめいた私は二つのキーホルダーを購入した。



「黒炎くん。これ、今日遊園地に連れてきてくれたお礼!」



黒炎くんの目の前に差し出したのはさっき買った猫のキーホルダー。



「ありがとな。でも、男が持つには可愛すぎないか?」



どうやら、ちょっぴり恥ずかしいみたい。



「私はウサギなの。動物は違うけど、お揃いだよ!」



って、これってカレカノがすることじゃない!? と今の行動は流石にやりすぎかと思ってしまった。



「お揃い、か……こういうの悪くないかもな。大切にする。これを見るたび朱里と遊園地に遊び行ったんだなって思い出すことにする」



そういって私があげたキーホルダーに軽くキスを落とす。



「!」



その行動反則すぎるよ、黒炎くん。

さっき可愛く見えた黒炎くんが一瞬にしてカッコいい男の子に見えた。



「朱里?」



また何事もなかったかのように自分のリュックにキーホルダーをつけてくれた。



「いや、なんでもないの。どういたし……ちょ。黒炎くん!?」



「悪い。今から観覧車乗ってもいいか!?」



黒炎くんは私を連れていきなり走り出した。



どうしたんだろ。何かを見て慌ててたようだけど。

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