4章 俺にとってアカリという存在は
第19話
ジメジメとした空気、一年を通して晴れる日が少ない。六月、梅雨の時期に突入した。
衣替えも完了し、今は夏服。だけど、雨が続くせいでちょっと憂鬱です。
「どこにもない‥‥!!」
放課後。私は朝、置いていた場所に傘がないことに気付く。
慌ててるから間違った場所探してる? なんて思いもしたけど、たしかにココに置いた。
これは誰かに間違って持っていかれた? もしくは借りパク的なアレですか。
(最悪‥‥)
外はどしゃ降り。とてもじゃないが傘なしで家まで帰るのは無理そう。
「お迎えにあがりました」
「焔(ほむら)。こんな時くらい車の中で待ってればいいだろ」
入学してすぐに見た2年の先輩だ! 相変わらず秘書さん? みたいな人が送迎してるんだ。
焔さんっていうんだ。炎の名前がついてて、黒炎くんと同じでカッコいい名前。
今どきキラキラネームなんて珍しくないけど、焔さんや黒炎くんの名前は滅多に聞かないよなぁ。一度聞いたら忘れないだろうし。
私は小さい頃から一緒にいたから気にならなかったけど、初めて会った人は本名か怪しむレベルだよね。
車は先輩を乗せ、去っていった。私は下駄箱の付近でボーッと突っ立っていた。
「朱里、こんなとこで何してんだ?」
「黒炎くんこそ、なにしてたの?」
「俺は生徒会長に呼び出しくらってて‥‥」
「もしかして会長さんを怒らせるようなことしちゃった?」
「まぁ‥‥そんなとこだ」
最近、黒炎くんの口から会長さんの名前が度々出るようになった。生徒会に入ってるわけでは無さそうなんだけど詳しいことは何も話してくれない。
「実は傘がね‥‥」
私は自分の傘がない理由を話した。すると、「それなら俺の傘で良ければ一緒に入っていくか?」と言葉をかけてくれた。やっぱり黒炎くんって優しいなぁ。
これって世間でいうとあいあい傘ってやつなのでは!?
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