第17話

「生徒会長の如月紅蓮です。下校時間になりました。部活をしている生徒、自主勉強をしている生徒さまざまな事情はありますが、全校生徒すぐに帰宅するように。それと寄り道は厳禁です。以上」


音楽が流れると思いきや、まさかの放送だけ。しかも、生徒会長自ら放送するなんて、この学校はどうなってんの。BGMが一切ないせいで、声だけで威圧感を感じさせた。外で部活をしていた男子生徒は「やべ、早く帰らないと堅物会長から反省文が来るぞ!」と叫びながら慌てて制服に着替えようと更衣室に走っているのが見えた。


一部ではなんて噂もあったけど、男子生徒のほとんどが「堅物会長」って呼んでる気がする。反省文ってなんのことだろ。


「会長さんの放送もあったことだし、私達もそろそろ帰ろっか」


「ああ、そうだな。って、こんな遅くまで勉強してたのか、気付かなかった。朱里、途中までだけど送るぞ」


「えぇ!? い、いいの……?」


勉強会に続き、今日は帰りも一緒のようです。黒炎くんは「女子を夜道一人歩かせるのは危険だからな」と言って私のことを心配していた。が、スマホの時計を見るも19時。


黒炎くんって、もしかしなくても過保護? と心の中でツッコんだ。「朱里のスクール鞄ってこれだよな?」


「そうだけど、なんで?」


「朱里のことだから教科書持って帰るんだろ? 重いだろうから持ってやろうと思ってな」


そういうと黒炎くんは自分のスクール鞄と一緒に私のも持ってくれた。

小学生の頃はまだ子供だったのに、今では女の子に気遣いも出来るほど男の子になっていたなんて驚きだ。


「あ、ありがとう」


私達は図書室を後にした。


「それにしても19時で全員帰宅って早くない?」


「あー……。それ、生徒会長の前で絶対言わないほうがいいぞ」


黒炎くんは濁すように言葉を吐きだしたかと思いきや、次に発した言葉は力強かった。


「そういえば、図書室に行く前に会長さんと会ったんだよ。ぶつかったんだけど、自分の不注意ですって謝ってくれたし、私の怪我の心配までしてくれたんだよ。あの時は優しそうに見えたけどなぁ」


まぁ、私が「堅物会長」とか言ったせいで怒らせちゃったから声は少し怖かったけど。

「……女子には多少なりとも優しいってことか」


黒炎くんは納得していない様子で一人でブツブツと言っていた。


「高校入学したばかりなのに会長さんのこと詳しいよね、なんで??」


私は会長さんについて知ってそうな黒炎くんに疑問を抱き、聞いてみることにした。


「そんなに詳しそうに見えたか? あの人、一年の頃から学年一位で学校の規則にやたら厳しくさ。俺たちの間でも有名な人なんだよ。

成績トップだから教師も何も言えなくて、放課後の放送なんかもさっきみたいに任されたり、他にも色々あってだな‥‥」


「そ、そうなんだ」


ただ者じゃないとは思っていたけど、まさか三年間学年トップだったなんて。それに加えて、規則に厳しいって、まさに生徒会長の鑑。


放送部ではなく、生徒会長自ら放送って‥‥そういう事情だったのかぁ。教師が何も言えないってどういうことなの。実は御曹司で学校に高額の寄付とか? いやいや、今はそういうのも無くなったって聞いたしあるわけないよね。


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