2章 決意

第9話

私は、家に帰ると、黒炎くんとの会話を思い出していた。


最初は、黒炎くんがギャルゲーオタクという真実を知って混乱や驚きを隠せなかったが、今冷静になってみるといくつも疑問点が浮かび上がってきた。


まず、黒炎くんがギャルゲーオタクになった理由。


次に、私と同じ名前の“アカリ”ちゃんという人物と何かしらの関係にあるということ。


そして、ショップの店長とあんなに親しげに話していたことだ。

あの様子からすると、中学生の頃の黒炎くんを知っているみたいだった。


ということは、黒炎くんは既に中学生の頃には地元に戻って、いた?

だとすると、どうして連絡をくれなかったのか。


私の家は知っているはずなのに……。


だけど、会いに来ない理由は明白だ。


「アカリちゃんって子と付き合ってるんだろうなー」


あんなに嬉しそうにアカリちゃんのことを話していたのだから、ほぼ間違いないだろう。と、思うけど、これも本人に聞いてみないと実際のところわからない。


でも、昔の俺はいないって、どういうこと?

やっぱり可愛くて素直だった黒炎くんがいないってこと?

でも、そんな簡単な理由ではないことは、あの目を見たらわかる。


知られたくない過去の1つや2つ、少なからず、誰にでもあるだろう。


だけど、黒炎くんのは他の人とは違う気がした。


“これ以上、踏み込んでくるな” 


あの時は言われなかったが、黒炎くんの心がそう叫んでいる気がした。


「……っ」


いつの間にか、私の頬を伝う一粒のしずく。


あぁ。私……泣いてるんだ。


これは、“ただの幼馴染”と言われたことに悲しくて涙しているのか。


それとも、黒炎くんに、“アカリ”ちゃんという女の影が見え隠れしているからなのか、どっちなのだろう。


そう思うと、涙のしずくは止まらない。


その日、私は意識を手放すまで泣き続けた。



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