第二章 【レイカ】(7/8)

 怖い怖い怖い。なんなのあれ。こんな時間に。もう夜の二時だよね。徘徊? 明日から仕事だから緊張してマンジリしてたら、外で物音したんだ。ヌコ様かなーって覗いたら、お向かいの小島さんのオジサンだった。オジサン、電柱の下でじっとこっち見てんだもん。たしか、お年を召したお母さん去年死んで、独身だったから一人暮らししてるんじゃなかった? あの齢で一人ってのも、何かね。

 ママのお葬式の時に前園さんのオバサンが話してくれたけど、小島さんのオジサン、特殊要介護者で外出できないって。ん? ニーニーとおんなじだ。え? 小島さんのオジサンもセーヘキ持ちなの? そういえばウチが小さいころ、よく町営プールに連れてってもらったけど、ウチのセパレートの水着姿見て、かわいいねー。いいなーなんて言ってた、いま思えば。それって、もしやだったの?


 身内の恥になるから本当は言いたくないんだけど、ウチがセーヘキ全部に偏見を持っていると思われたくないから書いとく。

 ウチね、小さいころ、ニーニーとちょっとあったんだ。あのときのこと思い出すと、今でも体が震えてきてめっちゃ鳥肌なんだよね。今も腕にぶつぶつ出てるの見せたげたいくらい。

 そのころはまだニーニーと同じ部屋の二段ベットの上と下で寝てたんだけど、あの夜、いやな夢を見て目が覚めたんだ。そしたら、ウチのベッドの中にニーニーがいて、

「レイカ。静かにしてろ」

 って。なんでかウチ、すごく、すごく寒くて。いつもと違うニーニーが怖くって言われたとおりにしていたら……。

 だめだ、フルえがとまんなくなちゃった。とにかく、そのとき手足をバタバタさせてぶっ叩いて蹴飛ばして逃げ出して、ママに言いつけたらそれからは別の部屋で寝かせてくれたんだけど、ママはニーニーのこと全然叱ってくれなかった。ん? なみだ出てきた。ママはそれを知っててニーニーと暮らせって言ったんだよ。それとも忘れちゃったの? ママ。

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