第二章 【レイカ】(6/8)

 ハローワーク行ってきた。

オメーが勝手に会社辞めたのがワルイみたいな扱われ方でムカつく。

三か月も失業保険出ないってどぃうこと? 会社事情で辞めたらすぐにもらえるのに。

どんな辞め方しよーと、今、ここにお金がない苦しさはみんないっしょだろって。それともシュートーに準備しないと辞めちゃダメだっての? やっぱ、そうなの? 


ジコセキニンってやつ?


 ウチの退職金、ポチ袋だったし、貯金なんてしてないし。このままじゃ生活費も出せない、どうしようって思ってて、紹介されたのが、


役場の夜間窓口業務。


だめもとで面接受けたら、びっくり、受かっちゃった。


 配属先に挨拶に行ったら、なんと同じ課にミワちゃんいた。ミワちゃん、やっぱりおかーさんになってた。おめでとーだよ。

 あんなことがあってもジモトに残ってよく頑張ったね。いいことってあるもんだね。とにかく、ミワちゃんがいてくれて、ウチ的にはめっちゃラッキーだった。きっと、あれだね、ミワちゃんとウチは赤い糸で結ばれてるんだね。

てか、ミワちゃん、


おっぱいでっかくね?


もとい、仕事場にミワちゃん。ほんと心強い。昼間の窓口担当がミワちゃんで、夜間がウチ。二十四時間営業ってやつ。


仕事場は「特殊戸籍課」


っていうんだけど、あれかなLBTとかBLTとかなんとか言った、それはサンドイッチか。


LGBTだね。


ウィキにあった。

 何年か前にシブヤとかで始めたあれだよね。真ん中の子たち同士の結婚とか、養子縁組とか届けるところだと思うんだ。ウチのイナカも捨てたもんじゃないって。

 あの子たちってば、やさしいんだよね。人の気持ちが分かるっていうか、なんでも相談に乗ってくれて。セク原のときだって、誰にも話せなかったけど、たぐおちゃん(女の子に興味ないほうの男の子)が真剣にハナシ聞いてくれてケッコー助かったもん。だから恩返しになったらいいなって、仕事するのが少し楽しみ。

 と言っても、仕事は窓口で書類受け付けるだけだから、めっちゃラクショーそー。定時以降は、上長っていうんだって上司のこと、それがいないから、スマフォいじってても怒らんなさそーだし。そんな真夜中、そもそも誰も来ないっつーの。あ、そうそう。お風呂セット持って行くんだ。役場のお風呂、本当は介護施設らしいけど、夜勤の人は使っていいからって。引き出しん中にシノバセとく。ウチの机、ミワちゃんと共用だからね。旅行用のちっさいやつにします、ソコハ。それに、ニーニーのいる家ではお風呂とか絶対入りたくないもん。やっぱね。


 来た来た。あ、ニーニーの介護士のオバサンね。

ご挨拶に上がるってから今日は家で待ってた。知らなかったんだけど、ニーニー、


特殊要介護者だった。


やっとそのセーヘキを認めてもらえたんだ。


よかったね、ニーニー。死ね!


「高倉でございます」

 三つ指ついてメード喫茶かよ。いろいろめんどーな説明されて、

「兄上様が、夜間はお部屋からお出にならないで欲しいとのことでございます」

 だって。

「ご承知してございます」

 どうせ夜は仕事だし、ニーニーの顔なんか見たくもないし。

 高倉さんは週三でお掃除とお食事の用意をしにくるんだって。鍵を預けてあるから、

「ご在宅いただかなくても結構でございます」

 これで一年我慢すれば、二千万か。ちょろいんじゃね?


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