12 新たな波乱

 プライベートジェットに乗って、十三時間後にネパールの空港に着陸した。


 そして、僕たちはネパールの首都であるカトマンズに無事に入ることができた。


 しかし、補給のために町に入ると不穏な空気を感じる。


 静穏ではあるが、嵐の前の静けさのような予感を感じさせる不気味な平穏さがあった。


 宿を探してしばらく歩くが、人がいない。だが、そこらじゅうから人の気配を感じる。


 やがて、狂花が止まれと合図する。


 人々が続々と現れ、僕らを取り囲む。


 どうやら僕達は囲まれたようだ。


 その人垣をかきわけて初老の紳士が現れた。紳士は申し訳なさそうに頭を下げる。


「ご無礼をお許し下さい、私はシバ・サノラムと申します」


 サノラムという紳士は、とても身なりが整っている。この国でそれなりに力を持つ人物だと推測した。


「不束者ですがこの国の大臣をさせていただいてます」


「大臣?」


「はい、貴女様はGod Killerの狂花様ですね」


 大臣か…狂花は罠の可能性を考え、刀に手を添える。


「大臣が私達に何の用だ?」


 サノラムは語る。


「実はGod Killer様方にお願いが御座います」


「お願いだと?」


「現在、私達の国は、危機に陥っています。差し出がましいお願いですが、God Killer様の皆様に私達の国を救っていただきたい」


 そうサノラムは懇願し、頭を低くする。それに合わせて周りの人間も頭を低くした。


 僕達が、サノラムや周りを取り囲む人々の、最後の頼みの綱であることを目を見て感じ取れる。


 それならばこそ、狂花は問う。


「この国を救えとは?」


 サノラムは苦悶に満ちた表情で答える。


「この国はもうすぐ奈落落ちと呼ばれる反乱軍に占領されてしまいます」


 だが、しかしわからない。反乱軍の目的は、ただ国を占領することとは思えん。


「奴らの目的は私の娘シバ・リナの能力 氷水炎雷ひょうすいえんらいを利用しこの国を乗っ取ることです」


 なるほど、そういうことか。


 それならば、だな。


 狂花の内心は、白馬の鍛練に行かせるのにピッタリだと思案する。


「それを助けろと?」


 サノラムは自分と比べて激しい年の差の人物達。しかし、今まで感じたこともないようなプレッシャーに気圧される。


「助けていただけたら何であっても差し出します」


「なんでもか…」


「もし断られた場合は、この国の地下に仕込んだ爆弾で、この国もろとも貴方方様も道連れにさせていただきます」


「脅しのつもりか?」


「私達は命懸けなのです。ご無礼をお許しください」


「そうか…」


 狂花は爆弾の規模を考える。この国が吹き飛ぶレベルの爆弾は、能力を使えば何とかなると思うが、それもまた一興か。


「我々はテロリスト集団なのをわかっているのか?」


 狂花の威圧を感じ、サノラムは冷や汗が止まらない。


「存じ上げています。我々は日本で例えるのであれば、藁にも縋る思いでございます。私達はそれほどのクライシスに陥っているのです」


 サノラムを含め、周りの人間の顔は嘘を言っていない、どうしたものか?乗ってみるか?


「なるほどな、その上で救いを求めるか」


 狂花は何かを思い出すように決断する。


「わかった、力を貸そう」


 サノラム含め周りの人垣は歓喜に包まれ平伏する。


 そして、サノラムの案内で、僕達は反乱軍の詳細を聞くために場所を移した。

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