10 ネガティブ機械少女
修行から二ヶ月後、僕は狂花に呼ばれて、作戦会議室と下手な字で書かれた部屋をノックした。
「入れ」
承認を得て、作戦会議室に入ると、狂花が普段とは違う雰囲気で目が泳いでいた。
白馬をソファーに座るように誘導して、ボス自身もソファーに腰を下ろす。
「実は頼みがあってな、ラストナンバー候補がいるんだが、何度誘ってもフラれ続けてるんだ」
「つまり僕に勧誘しろと?」
「話が早くて助かる」
ボスはウンウン頷いた。
「じゃあ任せた。部屋の鍵渡しとくから、初任務絶対成功させろよ。私は寝るから、頑張れー」
丸投げかよと思いながら、僕は渋々頷き、部屋を出た。
確かボスが言ってた部屋は……僕の部屋の左隣から三番目。
白馬は預かっていた鍵でドアを開けると、部屋の隅っこに布団を被った何かが震えていた。
布団を被った何かは、僕が入って来たのに気づき、先程より震えが大きくなった。
「どなたですか?今はどなたにも会いたくないです。出ていって下さい」
澄んだ綺麗な声で聞き惚れる。
「僕は黒水白馬、君の名前は?」
しばらくの沈黙が続き。少女?は口を開く。
「ミナ……サ」
「ミナサさんですか?」
少女はコクコク頷く。
「ミナサさんは、どうしてラストナンバーに入るのを嫌がっているんですか?」
ミナサは激しく首を振り。
「嫌、嫌、嫌、嫌、嫌。私なんかが入ったら足手まといになる。それに迷惑だろうし、部屋から出たくない」
白馬はイタズラ心で、ミナサの被ってる布団を剥ぎ取った。
そこには人間とは思えない、美しすぎる機械少女が震えていた。
「布団返して」
と少女は泣きながら震える。白馬は謝り布団を返して隣に座った。
「君は私を怖がらないの?私は人間じゃないんだよ」
「何で?何で怖がらないといけないの?」
「だって私は人間じゃないし、声だって変だし」
「僕は綺麗な声だと思ったし、怖がる理由がないよ」
「変な人ですね」
とミナサは微笑んだ。
僕は今までのこととか、ボスの愚痴とかを話した。
ミナサは無言で僕の話に頷いてくれて、たまに目が合うと布団を被り恥ずかしそうに俯く。
夕方になり傭推さんが夕御飯だと呼びに来てくれた。
「また明日も来て良いかな?」
ミナサはニッコリ微笑み頷いた。白馬はミナサに手を振ると、またねっと別れた。
次の日の修行を済ませた僕は、ミナサの部屋をノックして部屋に入る。
ミナサは相変わらず布団を被っていたが、震えてはいなかった。
白馬の顔を、布団から顔を出してジーっと見るミナサ。
「白馬は変わり者だね」
ミナサは笑った。
「ミナサは、いつも何で布団を被って隅っこにいるの?」
「死にたくなるから。友達いないし、リア充爆発しろ」
白馬は苦笑する。とはいえ、ミナサと一緒にいると、何故だか懐かしい感じがする。
「だったら、僕と友達にならないかな?」
白馬は手を差し出した。
「やっぱり変わり者だね」
ミナサは微笑んで握手をしてくれた。
「友達である白馬の頼みだから、私ラストナンバーに入るよ。でも、その代わり部屋の外へ出る時はずっと一緒にいて下さい」
「僕でよければ、そばにいるよ」
ミナサは恥ずかしそうに布団を被った。
「嬉しい」
その声は今まで聞いた声の中で、一番澄んでおり、聞いた白馬も少し照れて布団を被りたくなった。
その後は傭推さんが呼びに来るまで、いろんなことを話して笑い合った。
そんな僕らは今日も、また明日って別れた。
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