3 分かれ道
僕は見慣れない、殺風景な部屋のベッドで目が覚めた。
ボーッとする頭で部屋を見回し、現状を分析する。
なぜ僕は、こんな場所にいるのか?思い出そうにも記憶がない。
このままここにいてもしょうがないので、僕は部屋を出るために出口を探す。
出口に続くドアなのかはわからないが、ドアはすぐに見つかった。
ドアノブを回すと、鍵はかかっていなかったようだ。
部屋を出ると広い空間が広がっており、いくつものドアがあった。
そのうちの一つのドアが開き、開いて出てきた人物に驚く。
「おや、少年また会ったね。これもまた運命。君はこちら側の世界に足を踏み入れてしまったんだね」
この人はなんの話をしているんだ?
「あの時の出会いは偶然だったと思っていたけど、結果として必然だった訳ですね」
少年は怯えた顔で問う。
「貴方は何者で、ここは何処ですか?」
「そうですね。まずは自己紹介をしないとだね。私の名前は
筑波傭推は芝居がかったしぐさでお辞儀をする。
「そしてこの施設はテロリスト集団God Killerのアジトと言えばわかるかな?」
はっ?僕は拉致されたの?テロリストのアジト!?にわかに信じられない話だ。
「噂で何度か聞いたことがあります。政府でも手を出せない、ヤバいテロリスト集団がいると」
「そうだね、テロリスト集団はヤバいよね。でもうちは、君が思っているテロリスト集団ではないことは確かだ」
いやいや、テロリストってだけでも十分にヤバイでしょ。僕は隙を見て逃げ出すタイミングを見計らう。
「そして、ここはGod Killerのアジトなので少年を簡単に帰すわけにはいかない」
考えを読まれた?僕はあからさまに動揺する。
「僕の思考が読めるんですか?」
「思考を読んだわけじゃない、君の目線で逃げ出すタイミングを狙っているのがバレバレだし」
逃げることができない。しかし、この人達の目的は一体?
「あなた方は僕をどうするつもりなんですか?」
「それについては、今から話すよ。少年が動物兵器のThree faces bearを倒したことに、ボスが大変興味を持ってしまってね」
「動物兵器?Three faces bear?あの熊の化物のこと?」
「そうそう。何も取って食おうって訳じゃないから、そんなに心配しないで大丈夫だよ」
安心しろと言われても、安心できるわけがない。
「まずは少年にしてもらうことは運命力鑑定機という、太古の遺跡から掘り起こした特殊装置により少年の運を調べさせてほしい」
「運とは何ですか?それが終われば帰してくれるんですか?」
「掻い摘んで話すと、運とは神より与えられた序列だね。運が強ければ強いほど、能力の差が生まれる」
「神に与えられた序列?」
「うん。この世界の人間は、運が左右して裕福だったり、幸せだったりする」
生まれる前から、幸福か不幸か既に決まっているってこと?
「まあ、少年を帰すかは少年の能力を調べてからになるかな。そこはボスに聞かないとわからないけど」
「僕は無能です。能力何て持ってません。早く帰して下さい。それに貴方の言葉通りなら、僕は不幸だった。裕福な家庭でもない」
「そう慌てないで、君は両親を病気で失っていると聞く、どんな病気で死んだか聞いても良いかな?」
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
「いいから答えてくれ、大事な質問なんだ」
少年は迷いながらも言葉を吐き出し始めた。
「お父さんもお母さんも、朝起きたらミイラになっていました………救急車を呼んで、死因を聞いてもわからないの一言」
「やはり………」
「何で、何で………普通に一緒にご飯を食べて、お休みって言ったのに。何で僕ばかりがこんな不幸に」
「私はその病を知っている。少年、それは神の病だ。私達はその病を送り込んでいる神を滅ぼす為に戦っている」
「神の病?」
「そうだ。神は人間の運命を操り、気紛れで命を奪う。神は神の先兵と呼ばれるものを送り込んで、人間を試している」
「残念なことに、神の病の対処法は未だに見つかっていない」
「君が望むなら、神に対抗す力を手に入られる。うちに入団する気はないかい?」
「何で僕なんですか?他に強い人なんて山ほどいるでしょ?」
「それは違うよ。君には君にしかできないことがある。それは他の誰にも真似のできないことだ」
「僕にしかできないこと?」
僕のような無能が何の役に立つのだろうか。
「そういえば、少年の名を聞いていなかったね」
「僕は………
「白馬君。君はどうしたい?すぐに答えを出せとは言わない。断るのであれば、私達に関わる記憶を消して、今までの日常に戻る選択肢もある」
「僕は………」
「そうだね。ボスをあんまり待たせると怖いから半日待とう。半日経ったら、また君に返答を聞きに来るよ」
「わかりました………」
「それまでの間は、その部屋は自由に使っていいから」
傭推はそう言って自室に戻った。
白馬は先程の部屋に戻り、考える。
Three faces bearのこと、両親の死に方、傭推の異常性。
どれも普通じゃない。でも何も知らないまま帰って、普通の生活を送るのは僕には耐えられなかった。
真実が知りたい。たとえテロリストになってでも、両親を殺したやつに復讐をしたい。
白馬は立ち上がり、傭推の部屋のドアをノックする。
「おや?白馬君。まだ一時間しか経ってないけど、どうしたのかな?」
「決めました。たとえテロリストになってでも、僕は真実が知りたい。僕の両親が何故死ななければなかったのか?貴方達と一緒なら、それがわかる気がする」
「うん、賢明な判断だ。今から白馬君の能力を調べに行こう」
傭推は白馬に笑いかけ、歩き始めた。傭推の屈託のない笑顔を見た白馬は、この人は嘘をついていない。
今はこの人を信じよう。そう自分を納得させて、傭推の後を追いかけた。
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