首無し男②
わざわざすいません、こんな路地裏に呼び出してしまって。
とはいえ、秘密の話をするには場所は選ばなきゃいけない。それこそ、あなたが求める情報をお伝えするなら人気のない場所じゃなきゃ駄目だ。
それに、別の依頼主もすぐ近くまで来てましてね。
この場所が一番都合がいいんです。
さて、どこからお話ししましょうか。
あなたの想い人――〈首無し男〉について。
はは、気色の悪い言い方ですか。
でもね、首無し男の正体は女性なんですよ。それも、とびきり美しい若い女性ときてる。首を一周するような奇妙な痣があるっていうのは噂通りですけどね。
意外でしたか?
まあ確かに、彼女の姿を見て生き延びた人間は少ない。それに、老若男女誰でも標的にしてしまう上に、捕まえた人間を必ず拷問にかけるのが常套手段という悪魔だ。女性の姿を連想するのは難しいでしょう。
つまり、首無し男について世間で語られている噂のほとんどが信憑性のないものだということです。
満月の夜にしか活動できないというのも嘘だし、政府や大企業が流した都市伝説に過ぎないという話もでたらめです。
ただ、首無し男が銀使いだって噂については的を射ていますよ。
まあ当然ですよね。〈銀の弾丸〉を心臓に埋め込んだ化け物でもなければ、三つもの犯罪組織を壊滅させることなんて不可能です。
ああ、あなたの組織を入れれば四つ目だ。ここまで来るともう、動く災害のようなものです。
……ああ、ごめんなさい。誠に勝手ですが、あなたの組織が首無し男にされたことについては調べさせていただいています。
いやあ、皆さん本当にひどい殺され方でしたね。口に出すのが憚られるほどに。
とにかく、生き残ったのは外国に出張していたあなたひとり。
これは提案ですが……どうです? 報復なんてもうあきらめて、故郷に帰って静かに暮らしてみては?
そう、彼女はもうあなたを殺害対象のリストに加えてるんです。既にあなたの住み家や行きつけの酒場も突き止められてますよ。
……え?
なんでそんなに詳しい情報まで知ってるのかって?
はは、本当に馬鹿だなあ。気付くのが遅すぎますよ。
別の依頼主がすぐ近くまで来てる――さっきそう言ったばかりですよね?
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