第32話
「何だか懐かしいけど様子が変ね?」
山神とシルヴィアに連れられて現代へ戻った千代は周囲を見回しながら言った。
「ここは僕が飛び降りた病院の屋上ですね?」
孔明こと遠野孝明は誰にともなく呟いていた・・・
千代と孝明が向こうの世界へ迷い込んでから相当な年月がそれぞれに過ぎ去っているのだから無理もない!?
しかも巨大な隕石はすぐそこまで接近している!
世界は消滅寸前であった。
「こんな市街地の真ん中じゃ私のフルパワーで魔法を使うには危険過ぎるわね!」
「もっと何も無い場所に移動しないと周囲に存在する物は全て粉々になってしまうわ」
一体、どんな魔法を使うのかはわからないが未希は平然とそう言って拓海に寄り添った。
限りなく気が強い未希でも拓海には素直みたいだ
拓海は寄り添った未希の手をそっと握り顔を見ると嬉しそうに微笑んだ。
「わしらは源蔵と雄治の処分を終えて、あの世界を抹消させたことを報告せねばならん!」
山神は唇に人差し指を当てながら何も喋らないよう注意しながらそう言った。
現代に戻れば全てのことは神の世界に筒抜けになる!
あの世界を無断で残して来た2人にとっては厄介事を残して来たようなものなのだ・・・
露見しないよう細心の注意を払う必要がある
いずれ折りをみて山神とシルヴィアの功績と引き換えにあの世界を神々に認めさせねばならない。
全ては未希の強力な魔法に掛かっているのだ!
「じゃあ、千代さんは家族のもとに俺が送って行く!」
「あれだけの女傑だから大丈夫だとは思うけど隕石騒動でパニック状態になってるからなぁ」
琢磨はそう言った後に
「孝明君も身寄りが無くて独りなんだろ?」
「俺の家で落ち着き場所が決まるまで暮らすといい、家は広いから遠慮
しなくても大丈夫だよ」
孝明にそう言って一緒に来るよう勧めた
千代の家を知って置く必要もあると思ったのだろう。
「琢磨さんも案外、頭がスムーズに廻るようになったんじゃないの? 花音さんのお蔭かしら・・・」
そう言って未希が冷やかすと
「そう言えば花音さんは僕の両親と一緒にこの病院にまだ居ると思いますよ!」
「僕の計算だと僕が現代を後にして消えてから1分も経っていないと思います」
拓海は言った。
「何て素晴らしい頭脳なんだ! この信じられない事実をすでに数式に換算しているとは・・・」
「もし良かったらこの先、僕と一緒に研究チームを結成して組んでもらえませんか!?」
孝明は興奮した表情で拓海に申し出た!
「勿論、いいですよ! それで未希はこれからどんな予定で動こうと考えてるんだい?」
拓海が未希に尋ねると
「そうねぇ山奥の広い場所を探しながら飛んで行ってみつけたらそこに魔方陣を描いてあんな隕石なんて塵1つ残らないように粉々にしてやるわ!」
簡単に言うと周囲を見回しココアを見ると
「あなたが連れて行ってくれるわよね?」
前にしゃがんで頭を撫でた。
「僕も未希について行って邪魔にならないかな?」
拓海が未希に訊くと
「邪魔だなんて・・・凄く嬉しいわ!」
未希は飛び上がらんばかりに喜んだ。
「じゃあそれぞれの目的や役割に向かって一旦はここで解散じゃ!」
「またゆるりと会おうかのう」
山神は笑うとシルヴィアと一緒に消えた!
「じゃあ、また後で・・・」
千代と孝明を連れて琢磨が階下に降りて行く。
「2人を乗せて飛ぶことなど私にとっては簡単なことなので遠慮なく行き先を言って下さい」
白虎の姿に変身したココアはそう言った!
背中に乗った拓海と未希はココアに行き先を告げる。
ふわりと浮き上がったココアは2人を背中に乗せたまま風のように飛んで行った!
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