第8話

もともとはベッドタウン的な存在であったこの街も近隣との合併により人口も増え、人の出入りも頻繁になって来るに連れ犯罪発生件数も大小含めて増加傾向にあった。


多くの死者を出した警察署内に於ける殺人事件があったりと治安は悪化、倉田や西岡らの犯罪組織が暗躍するに相応しい街と化してしまっていた。


そこに赴任して来たのが殺された山野署長だったのだが何者かによって殺害された・・・

犯人の見当さえつかないままである!


あの日、山野署長が殺された現場にいち早く到着した佐倉 結はその現場に何か異様なモノを感じていたが誰にも言えず憂鬱な気分で捜査を進めていた。


「結さん、顔色が悪いですけど大丈夫ですか!?」

直属の部下である城崎 健:(シロサキ タケシ)が心配そうな顔つきで聞いて来る。


「名前で呼ばないでって言ったでしょ!?」

考え事をしていた結は不意を突かれる形で問い掛けた彼を叱りつけるような口調で言った後、

「この現場を見て城崎はどう感じるか聴かせてくれる?」

視線は動かすことなく彼に問い掛けてみた。


「何の根拠もないのですが以前、この辺りを騒然とさせた連続殺傷事件と何か似ていますね・・・」


「僕はあの時、暴漢に襲われた女生徒を自宅まで送り届けたんですが彼女があの時に説明した状況は支離滅裂で何を言いたいのか良くわかりませんでした」


「しかし今、この現場を見て僕が説明するとしたら当時の彼女と同じになると思います」


「夜間とは言えこんな場所で即死に近い状態に鋭利な凶器で心臓を一突きなんて人間離れしています!」


「悪魔がいるとしたらきっとその類の仕業としか思えないとここに来た時から感じてます」

彼も視線を動かすことなく静かな口調でそう答えた。


夜間で人通りが少ないとは言っても夜の10時前後が死亡推定時刻だとすれば誰か目撃者が居ても不思議ではないのだが・・・誰1人として見た者が居ない!

むしろそちらの方が不自然ではないのか!?


警察署内で起きた集団殺傷事件・・・

彼女はその事件で愛する恋人を失った!

復讐の念に駆られて夢中で戦った黒蛇と言われる邪悪な神はあの時に消滅したのだ。


だったら今度は西岡の魔法なのだろうか?

魔法で誰にも見られず誰かを殺すことが出来るのだろうか!?・・・彼女の知識ではわかるはずも無かった。


それから一週間後、彼女は署長室へと呼ばれた

「佐倉です」

ドアの前で名乗ると入室するように言われる・・・

中に入るとデスクの前に立っていたのは新しく就任したばかりの署長と佐藤 涼介であった!

「あの事件以来だと思うが久し振りだね」

笑顔でソファーに座るよう勧める彼はキャリア組だったはずだがナゼここに・・・!?


しばらく席を外すように命じられた署長が退室すると彼はすぐに要件を切り出した!

「この事件は常識的な捜査を行っても解決はしないと僕は思ってるんだが君も同意見じゃないか?」

やはりあの事件の裏を知る彼には今回の事件も何か特別な力が関係していると思ったに違いない。


「魔法使いと噂される西岡という男が居ます! 倉田と一緒にドリームクラッシュという麻薬を扱っているのですが西岡の魔法で邪魔され検挙することが出来ません」


「通常の捜査方法では証拠を掴むことさえ不可能だと思いますが何か良い方法が有るのですか?」

彼女は正直に答えると彼の返答を待った。


「君には今日より僕の指揮下で動いて貰います!」

「上の方には了解を取ってあるから自由に動き回り情報を集めてくれないか?」


「ただマスコミには注意してくれ! 外部に漏れたらもう防ぎようがなくなるからね・・・」

「誰か信頼出来る人間を部下にするといい! 報告は直接、僕の方にしてくれ・・・連絡は絶やさないように頼むよ」

それだけ告げると彼は署長室を後にした。


入れ替わりに署長が入って来ると

「何かは知らんが大変な任務を与えられたようだが私が君に協力出来ることが有れば遠慮なく言ってくれ!」

「上が動いたとなれば任務が優先する・・・気を付けてな」

彼女は敬礼し部屋を出ると受けた任務の重要さに身震いしながら城崎の顔を思い浮かべていた。

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