第30話
「この剣は人の魂までも消滅させてしまう剣じゃ!」
山神は腰から剣を外すと鞘から抜いて見せた。
眩しいほどの様々な色彩の輝きを放ち切れ味も鋭いと見ただけでわかる剣であった!
千代を始め、背後で控える張飛たち5人の将軍も感嘆の声を漏らしながらみつめる。
「本来、この剣は人が持つモノでは無く神が使う剣じゃが今回は特別にお主が持つことを許された!」
「許されたと言えば聞こえは良いが使命を与えられたということで重い荷を背負うたことになる」
剣を鞘に納めた山神は
「神として汝に命ず! この剣をもって悪を誅殺せよ」
そう言って千代の目前に差し出した。
千代は片膝をつき両手を差し出し受け取ると
「承りました! 至上の命とし必ずや成し遂げます」
そう答えた。
単なる儀式に過ぎないのだが全軍の統率者が神からの命を受けて戦いに挑むのだ!
「全軍、我に続き進軍せよ」
千代の堂々たる号令により彼女に従う全ての者たちの士気は頂点に達し燃え盛る炎
の如き勢いで水陸に分かれ進軍を始めた。
水上には孔明、黄忠、弓月ことシルヴィア!
陸上には千代、クラリス、張飛、趙雲、馬超、関羽らと山神、琢磨、未希の主力部隊である。
先の戦いで負傷した兵士を遺骨と共に本城の守りとして帰した為に軍勢は若干、減ったものの総勢7万を超える兵士と新たに加わった3人の強力な味方!
山神の進言もあり偵察をしながら歩調を合わせてゆっくりと呂布の居城を目指し進んで行く。
クラリスを帰したことにより山神の読みでは万全の態勢を整え城の前で迎撃するつもりだと考えたのだ。
3日ほど進軍しうっすらと呂布の居城と城壁が見えて来た頃、先行させている偵察部隊からの報告が次々に千代のもとに送られて来た!
「城壁の前に敵の大軍、およそ15万です!」
その報告と共に一気に緊張感も増す。
「うーん・・・敵は我らの2倍か?」
山神は偵察からの報告を記入した図面を見ながら言うと
「これだけの大軍で早くから勢揃いとはちと変じゃの!?」
城の前で迎撃態勢をとっていると予想したのは山神だったのだが変とはどういうことなのか・・・?
誰もがそう思ったのだが
「予想して置いて変とは一体どういうことですか?」
張飛が疑問たっぷりな表情で山神に尋ねるとクラリスが傍らから肘で張飛をつついた。
相手は神様なのだから遠慮しろということなのだろう・・・
その仕草を見ながら山神は
「遠慮することはないぞ」
「我らは仲間だ! 敵は我が軍の2倍もいるんじゃ、一つにならなくても普通は軍を分けて配置するじゃろう?」
図面に小石を置きながら配置してみせる。
「少人数の戦闘ならいざ知らず大軍となれば軍の向きを変えるのは容易では無い!」
「この敵軍を相手に我らが攻撃した時にこの森から我が軍の横っ腹に突っ込んで来ら
れたら支えるのは無理じゃ!?」
指差しながら山神は説明すると
「我が身が安泰だと思い込み、遊びで人殺しを楽しむ愚かな奴の考えそうなことじゃ・・・」
いつもの高笑いをした山神は
「ならばわしと琢磨の2人でこの伏兵とやらを始末してやろう!」
「お主らは正面の敵軍と思う存分に戦うが良かろう・・・始末したら加勢に来るでな」
話しを聞いていた一同は呆気にとられた表情で
「たった2人で数万を相手に戦うつもりですか!?」
口を揃えて言った!
倒した後に加勢に来るとは2人で十分というばかりか、まだ余力が有るということなのか!?
「そんな面倒なことをしなくても魔法でこの森ごと焼いてしまえばいいじゃない!」
今度は未希が山神の隣りから平然と口にする。
「自然を破壊するのは人間の悪い癖じゃ」
山神は冗談っぽく言うと笑いながら立ち上がり
「そなたを守る琢磨がおらんのじゃから決して無茶なことをするんじゃないぞ!?」
未希の肩に手を置くと優しく声を掛けた。
「はい!」
山神の言葉に素直に頷き答えた未希は琢磨を見ながら
「大丈夫よね?」
そう尋ねると琢磨は笑顔で
「お前の厄介な魔法を相手にするよりは簡単だと思うよ」
そう言いながら未希の頭を撫でる琢磨のその手はとても温かく感じられた。
山神と琢磨2人と分かれて千代は敵の大軍勢に向け前進しながら間合いを詰め始めた
敵との距離はもう100メートルぐらいだろうか!?
もうどちらが先に動いても不思議ではない距離だ!
敵軍の幅に合わせて自軍を展開している為に軍勢に厚みは無いが、いずれも安穏と生きて来た訳ではなく、悲しみに耐え、苦しみに耐え、幾多の辛い戦闘を戦い抜いて来た勇者ばかりである。
千代の右手が上がると全軍が一瞬で動きを止め低い姿勢で身構え、気合いを心身の中に溜めこむ・・・
「突撃せよ!」
千代が叫び右手を振り下ろした瞬間、あらん限りの雄叫びを上げながら全軍が敵に突っ込んだ!
その様子を城壁の上から眺めていた呂布はせせら笑うと
「そろそろ別働隊も来る頃だったな?」
「久し振りに虫けらどもに俺の恐怖を教えてやろう」
そう言いながら降りて行くと100人ほどで整列し待機していた巨人の精鋭たちを伴い城門へと向かった。
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