第24話

「お前たちの相手はこの私だ!」

クラリスの声に反応した敵は一斉に押し寄せる


「怖い場所に連れて来ちゃってごめんね」

馬超から譲ってもらった動物の頭を優しく撫でると

「さぁ、全力で向こう側に逃げましょう!」

そう言って千代とは逆方向である攻め落とした張角の城へと向かって移動を開始した。


真紅の鎧にマント・・・

成長したクラリスは千代の姿とそっくりである!

黄忠は彼女の後を追いながら時の流れを感じずにはいられなかった

「あの小さかったクラリスがあそこまで大きくなったんだから我らも年老いて当然かも知れんな?」

傍らで馬を走らせる古くからの戦友に冗談っぽく言うとお互いの顔を見合わせて笑う。


生きて再び千代に会うことは有るまい!?

しかし、このクラリスだけは死なせる訳には行かない!

その闘志とも言える決意は付き従う全員の胸の中に固く刻まれていた。


軽量で堅牢な鎧で身を固めた彼らの移動速度は敵よりも速いのだが何と言ってもそこら中、全て敵兵だらけなのだから逃げる方向も自然と限られて来る!

どうやら敵は完全にクラリスを千代だと勘違いしているらしく大きく取り巻きながら次第に包囲網を縮めているような感じであった。


黄忠がそう考えていた通り、千代たちは敵の追撃を受けることもさほど無く危険地帯を離脱し趙雲、馬超、関羽たちの部隊と合流を果たし、孔明が待つ船へと向かっていたのだが千代の胸は張り裂けんばかりに痛んでいた!

諸将と合流した所で引き返しクラリスを救出に向かいたい思いが彼女の胸を締め付ける。


だが、ここで引き返したらクラリスの願いを無駄にすることになるのだ・・・自軍の消耗を最小限に抑える

それが今、やるべきことで今後の戦いの鍵となる!

運良く張角を発見し倒したとしても呂布は無傷でここに暮らす人々を苦しみから解放することは出来ない。


狙うは呂布の居城なのだ!

張角の城を破壊し使えなくした限りは2人が呂布の城に集結するに違いない・・・!?

そこを一気に攻め、奴らをまとめて倒すことが今の考えられる最善の策であった。


一方のクラリスと黄忠は周囲を全て敵に囲まれ逃げ場を失い徐々に消耗しつつあった。


黄忠が選び、ともに率いて来た者たちは年老いた者が多かったが歴戦の強者揃いである!

寄せ来る敵を次々に倒しながらクラリスを守り、戦いを繰り広げていたが1人、また1人と倒され死んで行く・・・

黄忠は自慢の弓に矢を2本、3本とまとめてつがえ放ち複数の敵を倒して行く!

だが敵は雲霞の如く押し寄せ際限が無い。


次第に疲労の色も濃くなり、「全滅!」という文字が頭に浮かび始めた時に黄忠は残った者たちに命令した!

「もう良かろう!? 武器を捨て投降せよ! 我らの目的は達せられたに違いない」

黄忠の言葉にクラリスは信じられないといった表情で

「敵に投降せよと? 命乞いをしろと言うのですか!?」

不満でいっぱいの彼女の問い掛けに黄忠は

「千代殿を逃がすことが我らの任務なのだ! 千代殿も言われたではないか!? 必ず生きて帰って来いと・・・」

黄忠はこの屈辱に耐え、クラリスを死なせることが無いようにとの思いで彼女について来たのだった。


クラリスは黄忠の言葉に千代の切なく哀しそうな表情を思い出していた・・・

ここで私が死んでしまったら千代をもっと悲しませることになってしまう!

彼女は持っていた武器を捨て両手を高々と上げると抵抗の意思が無いことを敵軍に示した。


「傷つけるのは構わんが殺すなよ!」

そんな声がしたかと思うと軍勢を割ってクラリスたちの前に1人の男が姿を見せ冷酷な笑いを浮かべた。

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