第21話

千代の号令一過、一気に押し寄せた!

もともと恐怖による支配、忠誠心に薄い張角の守備軍は予期せぬ奇襲を受けた城内は大混乱に陥り、この世界では見たこともない西洋風の甲冑に身を固めた出で立ちは剣も槍も弓も通さない。


ただ魔法と薬物で狂気と化した巨人が意外と多く、城内のあちこちで暴れ回っている!

黄忠の話から敵味方、見境なく攻撃するであろうと予測していた千代の軍は巨人を巧みに避けながら移動すると宮殿風に作られた張角の本拠とする城への城壁を登り攻めかかった。


ここを治める張角のもとで殺戮というモノに感化されてしまっているのか、武器を手に抵抗する者も多い・・・

向かって来る者は皆、敵!?

そんな巨人を相手に遮二無二、戦いを挑んでいる敵兵があちこちで数多く見られた・・・

同士討ちというより仲間という意識が最初っから彼らには無いようだった。


城と言っても10キロ四方に広がる巨大な城壁に囲まれた市街地といった感じであり、中央に位置する一段と強固な張角の城を攻め落とせばこの城郭は千代たちの支配下に置かれることとなる!

この戦いが反撃の初戦でもあり、戦力の消耗をなるだけ避けて勝利したい千代軍は作戦通りに迅速に動きながら要所を各将軍たちが押さえて行く。


兵の数では互角であるが戦闘能力と装備に圧倒的な差がある敵兵とでは優劣は明らかであり、戦闘が始まってから2時間もしないうちに千代軍の完全勝利で終わった。


戦勝の報告を船団を率いて待機する弓月に伝令を送ると千代たちは張角の居城へと向かって行った。


大きな鉄製の扉を開けて中に入ると何とも贅沢な作りで彩られた広間の正面には大きな鉄格子の扉が有り、鍵がかかっていた・・・

格子から中の様子を伺ってみるが物音一つせず、人の気配も感じられないが異様な匂いがする。


扉と中の通路が異常に大きいのは恐らく巨人が出入りするからであることは間違いないだろう!?

危険だが入って調べてみる必要があるという結論に達した千代たちは張飛と馬超を先頭に鍵を壊した鉄格子を開けると通路を用心深く奥に進んで行く。


血の匂い・・・!?

次にあった鉄製の扉を開けたときに全員がそう思った!

通路は右に曲がっており、そこから先は段差の大きな階段と両端に人間が昇降する為のものであろうと思われる

普通の階段が更に右へと曲がり奥へと続いていた。


階段の両側に分かれ下りて行くとまた通路が有り、その先に行く手を阻むかの如き頑丈そうな扉があった!

鍵を壊して扉を押し開いた目の前に広がる光景は酷いモノで一同は思わず息を呑んだ・・・

処刑用であろうか!?

部屋の中央付近にはギロチン台が有り、鎖がついた鉄製のベッドに拷問用と思われる数々の器具が並ぶ部屋の床は流れた血の跡が染みついて黒く光っている!

体の一部分と思われる巨人や人間の頭部、手足の欠片など中には内臓らしきモノまで散乱していたのだ。


扉の開く音と人の気配を感じたのか、床下と思われる場所から命乞いをする声が聴こえる!

声のする方に駆け寄り鉄製の蓋を開けてみると細い階段が有り、声はそこから聴こえていた。


急ぎ、階下に下りてみるとズラリと並ぶ鉄格子の監獄に十数名づつ閉じ込められていた

鍵を壊して扉を開けても誰一人、出て来ようとはしないのを見た千代は

「私たちは敵ではありません! ここに貴方たちを助けに来たのです! さぁ、ここから一緒に出ましょう」

中に入ると1人を助け起こしながら言った。


疲弊し苦痛に歪んでいた人々の表情は歓喜の声に変わり立ち上がろうとするが衰弱している為に上手く立ち上がることが出来ない

同行した兵の1人1人が手を貸しながら広間まで連れ出し飲み水や食料、衣服などを与えて介抱する・・・

広間は瞬く間に連れ出した人々で溢れかえった。


あの状況からみて犠牲になった人の数は計り知れないだろうがこれで拷問を受けて死んだり、巨人と変えられ意味も分からず戦い続ける運命から救えたことは喜ばしいことである!

これほどの残虐を行い、罪も無き人々を苦しめた張角と呂布を絶対に許せない。


解放された人々から呂布や張角の情報を集める一方で落城を知った呂布と張角の反撃に備え見張りの強化などの対策を整え防衛に対して準備を始めた。


それから2週間ほどが経過したが敵の軍勢も姿を見せなかった為、今後の計画を話し合うことにした

この城で敵軍を迎撃し、少しでも敵の数を消耗させようと考えていたのだが敵にとって奪い返すほど重要な拠点ではないらしい!?

ならば敵の大軍を相手に苦戦するだろうが一気に決着をつけるしかない!


千代たちは奪った城を捨てることにし城門などを破壊する・・・

食料や使えそうな物を運び出し先に出発させると人々の憎しみで廃墟とされてしまった城壁を見上げながら最後に城を出ると船に戻ることにした。

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