第19話

「関羽と申します! 黄忠殿のお誘いによりこの軍に参加したくて参りました」

千代に出迎えられた彼は感極まって畏まったように丁寧に挨拶をする。


「そんなに堅苦しくなさらないで下さい・・・」

クラリス、張飛、黄忠、趙雲、孔明、馬超、弓月の7人を従えた千代は関羽の前に進み照れながら言った後に続けて

「数百人でここまで逃げて来た敗軍の将である私が皆の力を得て城内に入り切れぬほどの軍勢を持つに至り、更には関羽殿まで力になって頂けるなんて黄忠から詳しい話しを聞き嬉しく思います!」

「この10万を超える仲間と一緒に軍備を整え、調練を重ね、準備が出来たら敵の城へと攻め入りたいと思っています」


千代の言葉を受けた関羽は

「黄忠殿から聞かれたと思いますが敵は100万を超える大軍勢と巨大で強固な城を構えております!」

「我が主君となられた千代殿の命令があれば命を懸け戦います」


決死の覚悟を語った関羽に千代は彼の意図を察したのだろう・・・彼に微笑みながら

「敵は我が軍の十倍以上ですが敵の大将は呂布という男と張角の2人だけです!」

「彼らが死ぬか、私が死ぬかの2つに1つ・・・私は死ぬつもりはないです」

真剣な表情になると

「この世界を平和に暮らせるようにするまでは関羽殿も決して死んではなりません!」


そう言った千代は馬に跨ると

「関羽! 今日から貴方も私たちの仲間です、さぁ一緒に城へ帰りましょう」

その大きな声に全員が呼応し雄叫びを上げた。


その姿を見ながら弓月は孔明に

「これが神に選ばれし者の勇姿! 貴方も神に選ばれた人なのかも知れませんね!?」

そう言って彼の肩をポンと叩くと悪戯っぽく笑った。


「僕が千代殿と同じ、神に選ばれし者・・・?」

相変わらず馬に乗るのが苦手な孔明は馬車に乗り込むと弓月に言われた言葉を呟きながら傍らで馬に乗り静々と進む千代を見上げた。


城が近付いて来るにつれ、その壮大さと美しさに関羽はもとより建設途中で城を離れて遠征していた黄忠や趙雲を始め、新たに千代の軍に加わった人々は感嘆の声を上げながら足取りも自然と早くなっていた!

千代が暮らす居城は川沿いまで城壁が突き出し、その城をぐるりと取り囲んだ形で5つの城が等間隔で建ち並び、それぞれの城は城壁でつながっている。


張角の城と比べてもその大きさに遜色なく、遠くから見るだけでも堅固さは一目瞭然であった・・・

守ることをトコトン重視した孔明の設計である!

設計と言っても孔明は簡単な見取り図を書いただけで建築を担当するそれぞれの長を引き連れ、旗が付いた棒をしっかりと立てさせながら歩き回り、周りを囲む城の位置を示したに過ぎない。


彼らは自分が任された場所に競って建設を始めた!

孔明が建設を指示した周囲を取り囲む城は形も大きさも全く同じものだったからである。


まだ外回りの城壁だけで内部までは完成に至ってはいないのだが城門に立ち、見上げたそれは鉄壁の守りを誇っているかのような堅牢な城であった!

城門は良くある両開きの扉ではなく上から下りて来て川から引いて来た水掘りに架かる橋と兼用であった。


多くの兵が増え、千代を始めとする将軍たちが先頭になり働き、団結力が固い城兵たちは怠ける者もなく助け合いながら急ピッチで作業が進んだ結果である。


黄忠、趙雲、関羽の3人は孔明に連れられ鍛冶屋に向かい、どのような武器と防具が欲しいのかを関羽に尋ねながら職人と相談して注文する・・・

黄忠と趙雲の武具はもうすでに希望通りに出来上がっていたので受け取った。


やはり武人である関羽はその武具を手に取り見せてもらうと驚きの声を上げた!

軽くて非常に堅い鎧に切れ味が鋭く軽い長槍と長刀、固く弾力性に優れた弓・・・

黄忠も趙雲も満足しながら大喜びである!

ただこれまで被ったことがない兜については必要ないと孔明に訴えるが、千代の命令であると念を押されしぶしぶ被る姿に関羽は大笑いであった。


「未経験者にも手ほどきを加え急ぎ作らせていますが兵の全員に行き渡るには時間も掛かるでしょう!?」

「それまでの間に兵の訓練を宜しくお願いします! では千代殿の居城へと向かい今後の調練のやり方などを他の将軍たちと打ち合わせして置きましょう」

孔明の言葉に驚きながら関羽は

「私はまだこの軍に参加したばかりで将軍などと呼ばれる立場ではありません!」

そう言った関羽に孔明は冗談っぽく言った。


「千代殿の命令です! まさか逆らうつもりですか?」

頭を掻きながら歩き始めた関羽に3人は大笑いした。

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