第13話
「俺の名は馬超(バチョウ) この山に住む山の民の長を務めております! 以後、お見知り置きを」
何とも表現しようの無い動物から下りた馬超は千代の前に進むと丁寧に挨拶をした。
クラリスの護衛を務めた馬岱と顔は似ているが身体つきはまるで違い、千代の隣りに立つ張飛よりも大きい!
「ところでその可愛い動物みたいなモノは何ですか?」
千代の問い掛けによほど嬉しかったのか
「他所から来た者にこれを可愛いと言われたのは初めてのことです!」
「こいつらはこの山の頂上付近で生息するとても賢い生き物で話すことは出来ませんが人の言葉がある程度、理解出来て山の民とは深い絆で結ばれておりますので今の千代殿の言葉を聴き喜んでいます」
馬超はそう言って笑った。
「私のような力無き者になぜ、加勢して下さると?」
千代は疑問に思ったことを素直に訊いてみた。
「千代殿の周囲にはこんなに大勢の豪傑が居るではないですか!?」
「人を惹きつける力こそが将の将たる所以で有り俺もそこに居並ぶ豪傑たちと共に千代殿のもとで戦ってみたいと願ったまで!」
「我らの仲間は大勢おりますし千代殿が倒すべく戦っている奴らには長い間、我らも服従を求められ苦しめられて来ました」
馬超はそう言って彼女の前に片脚をつき胸に手を当てると更に言葉を続ける。
「我らだけでは奴らを倒すことは出来ません!」
「千代殿のもとで我らも一緒に戦わせて下さい」
真剣な表情で言った馬超の手を握った千代は彼に立ち上がるように勧めると
「私は軍勢も少数しか持たぬ弱き将ですが絆という強い意思が有れば必ず勝てると信じています!」
「一緒に戦って下さるのならこんなに心強いことはありません」
歓喜の表情を浮かべながら言った。
馬超率いる山の民が暮らす地域は所々に点在する形で広がっていた!
その夜は本拠地である砦みたいな場所で千代たちは山の民の歓迎を受け大いに盛り上がった。
孔明は何やら興味を惹かれたらしく馬岱を従えて近辺を夢中で探索していた・・・
「何か気になるモノでもあったの!?」
宴席に戻った孔明に千代が尋ねると
「ここは資源の宝庫みたいな所で1ヵ所にこれだけの資源がまとまっていることは常識では有り得ないですね」
彼は笑いながら答えた後に
「ここで採取した物資を川下の我が陣地に川を使って搬入し、製造しながら装備の充実を図りましょう!」
目を輝かせながら言った。
翌朝、孔明は馬岱、クラリスと共にここに残る手はずを整え千代たちは帰ることにした・・・
クラリスと孔明を残すことに心配そうな千代に馬超は自分を信じて欲しいと言ったので千代は馬超を信じ笑顔で帰路についたのだった。
孔明は馬岱に千代の城にどんな施設が有るのかを詳しく訊くとリュックの中から分厚い手帳を取り出し、何かを書き込みながら一日を過ごすと翌日には手早く効率的な段取りを組み人々を動かす!
もと居た世界ではただの変わり者だった彼もこの世界ではその天才ぶりを如何なく発揮した。
「孔明殿は一体、何を作ろうとしているの?」
不思議そうな顔で問い掛けるクラリスに
「鉄よりも固くて軽く錆びたりしない金属だよ! それで鎧や盾、武器を作れば攻撃力も防御力も増すからね」
手帳に書いた図面をクラリスに見せながら
「それに大砲という武器に爆弾! 多くの人を大量に殺す品物で本当は作りたくないんだけど敵を倒し自軍を窮地から救い、平和をもたらす為には必要なモノです」
やや自嘲気味に答えた。
どんなモノかはクラリスに想像出来なかったが孔明の暗い表情を見ればそれがどんなに恐ろしい武器であるかは彼女にも想像出来た。
だが戦うからには勝たなければならない!
勝つためには殺さなければならない!
誠意や話し合いが通じる相手では無いのだ。
千代がどんな気持ちで戦っているのかを思うと胸が痛くなるクラリスであった。
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