第12話

「ごめん! みんな落ち着いて!・・・違うのよ」

自分の声で緊張を漲らせてしまったことに慌てた彼女は落ち着くようにと全員に声を掛けて回り孔明の前に戻って来ると寄り添うようにして話し掛ける


「私もあなたと同じ年、同じ日に日本に住んでたんだけどここに来て何ヶ月も経ってるのにあなたがここに来たのも私が来た日と同じということはここで過ごした日々は私たちが住んでた世界と時間の経過が違うのよ」


「私がここに送られて来たのには理由があって、その目的を果たすのに助けが必要だったからあなたがこの世界へと送られて来たのかも知れないわ」


千代の言葉を真剣な表情で聴いていた孔明は

「じゃあ突然に出現した隕石が僕たちのこれからやらなければならない何かに関係してるということですか?」

タイムスリップしたにしてもこの世界には魔法使いらしき者が居たり、巨人が現れたり昆虫みたいなものが生存していないなど彼女から得た情報というのは彼が知っている歴史では有り得ないことだらけであった。


彼女にはまだ話していないが彼は現代で言う単なるオタクに過ぎないのである!

だが彼のオタク振りは凄まじくあらゆる方面で抜きん出た知識を持っていた。


特に軍事方面には誰にも負けない能力と知識を持っているのだが果たしてそれが実戦に通用するのかは彼自身にもわからない・・・空想と現実には大きな差がある。


「私が今、やろうとしてることが隕石と関係してるかはわからないけどここで暮らす人々を助けることが無意味だとは思わない!」

「目的を達成しても帰れるかどうかわからないけど私は私の信じた道を歩いてこの世界を平和で楽しく暮らせるようにしたいの」

千代は孔明を真っ直ぐに見てそう言った。


髪は手入れもされてなくてボサボサになり後ろで結っているだけだし藁の匂いしかしない上にどんな状況を生き抜いて来たのか、顔も手も体中が擦り傷だらけなのだ!

今まで気付かなかったが端正な顔立ちで可愛いというよりとても美しい女性だった。


「わかりました! どうせ何も確かなことなど無いのですから千代さんがそう信じるのなら僕も信じてみたいと思います」

「このまま帰れたとしても隕石が地球と衝突するのだから命懸けでやり遂げましょう!」

「そうすれば何かが変わるかも知れません・・・」


物理学を専攻し大学に入ったものの周囲と協調することも出来ず独り何かを模索しているうちに変わり者などと呼ばれ孤立すると一層、趣味に没頭するようになった。


誰かに頼られることもなく頼ることもなく、孤独という闇に生きて来た彼にとって千代はとても眩しく輝いて見えたのだ!

その彼女から頼られたことは孤独だった彼に命を捧げて協力したいと思ったとて不思議なことでは無い。


「ありがとう! 明日はまた長距離の移動になるからもう今夜はこれで休むことにしましょう」

千代はそう言って彼の肩をポンと叩くとクラリスを伴い横になると眠りについた。


普通の女子高生であった彼女がここまで堂々たる風格を兼ね備えた大将になれるはずが無い・・・

きっとこの世界で何かを成す為に呼ばれたのだ!

そうだとすれば僕も選ばれたのか!?

あれこれ考えるうちに疲れも有り深い眠りに落ちた。


「さあ、起きて! いつまでも寝てると置いてくよ」

目を開けると少女の顔が間近に見えたのに驚き跳ね起きた孔明は周囲を見回し夢ではないと悟った。


彼には他の者の言葉が何を言っているのかわからない

張飛と呼ばれる男などは怖くて顔も見れないので笑ってるのか、怒ってるのかさえもわからない始末だ

だがこのクラリスという少女は千代との交流が深い為に言葉が話せるのだった。


馬に乗り出発するが彼はまだ馬に乗れない為に趙雲という精悍な武将が馬を寄せ手綱を持ちながら教えてくれてクラリスが親切に通訳してくれたのでコツみたいなものは掴めたがここは山岳地帯で平坦な道では無い!

慣れるまでは申し訳ないが誘導して貰うしかなかった。


隊列の先頭は張飛と馬岱で後ろに続く千代を油断なく守る張飛などは鬼神の如く見えて殺気が漲っているのだが彼女に話し掛けられると案外、子供みたいな可愛い顔をして振り向くのが可笑しくて吹き出しそうになるが笑ったら多分、殺される!?


2時間ほど移動すると馬岱が張飛と千代に何かを告げて単騎で先に駆け出した!

目的地が近いのか千代は馬を止め下りると全員にしばらく様子を見ながら待つと告げた。


やがて30分もしないうちに10名ほどの男たちを連れて馬岱が戻って来た。


一同は彼らが乗って来たモノに唖然とする!

彼らが乗っているのは馬ではなくダチョウみたいな鳥なのだが足は太く逞しそうで首はそれほど長くはなく、頭はさながら恐竜みたいな形をしているが目だけは愛嬌たっぷりと言った感じである・・・

全身に鎧みたいな物が装着してあった。


こんな生き物はこれまで見たことが無い!

恐らくそれは全員が思った感想だろう?

「可愛い!」と大喜びしている千代とクラリスの2人を除いての話なのだが・・・

女性の感性は摩訶不思議である。

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