EPISODE 2 『爛れた理想』
Re:Reversal
「クソっ……またお前らかよ!」
ベージュ色のパーカー、その下には黄緑色のシャツを着用しているのは人類保護派の1人、元十三神将のドボラック。緑色のズボンには所々に傷がある。
そんな彼女と背中合わせでお互いの背後を隠しながら立つのは、ベージュ色の髪をしている同じく元十三神将のスキンクァ。
「私とロディの相性は悪い。お願いドボラック。ロディは任せたから私はウラヌスの方を」
彼女の服装はドボラックと対になっており、緑色の洋服とベージュ色のズボンだ。彼女らが戦っているコロニーには既に人造人間の魔の手が襲いかかっている。
リベリオンズのメンバーである2人。ロディとウラヌスが人造人間を率いていた。彼らは大通りの中心で立ち止まっており、横断歩道を挟んでどちらも黒い地に立っている。
「今までとは違うよ……ボク達は、本気で殺意を持っている」
「プルくんのお願いだからね!」
オレンジ色のパーカーを羽織るウラヌスは、7年前と姿は全く変わっていない。対してロディは髪も伸び、幼い雰囲気はほとんどなくなってしまっている。
「ボク達が戦っている間に、プルートが目的を達成する……って言ってたから」
「自分の無力さに失望しちゃうんだよ、今から」
「ふざけやがって……!」
ウラヌスは上方向に向けて矢を放ち、信号を撃ち落とすと嘲笑う。地に落ちた信号は1回だけバウンドした後に様々なパーツを撒き散らした。挑発に乗ってしまったドボラックは、握っていたカプセルをトンファーへと変形させる。
「吹き飛べ!」
両のトンファーからは右、左、右の順番で風の弾丸が放たれた。信号機の3つの色が撃ち抜かれ金属片と共にロディ、ウラヌス両名に襲いかかる。
「うーんやっぱり厄介だなぁ。だってこっちも対抗すると」
口ではそう言いながらもウラヌスの身体は動き、弓を構えると一気に3つの光の矢を放ち応戦した。風の弾丸と光の矢は相殺するが、ウラヌスの推測通りそれだけでは終わらない。相殺した衝撃から小さく細い謎の物体が空中に舞った。
「……こうなっちゃう」
謎の物体の正体はスキンクァの指だった。風の弾丸と一緒に飛ばされていた5本の指は、それぞれ膨張していきスキンクァの身体に変形する。彼女の【愛しのサイコ・ブレイカー】は“切り離した身体の一部から自分自身が増殖していく”能力。一言も発していないスキンクァの分身達は右腕を針状に変化させ2人に飛びかかった。
「ボクがやろう」
ウラヌスの横を走り抜けたロディは、スキンクァの分身1人に両手での掌底を撃ち込んだ。“両手で触れた生命の無い物の時間を巻き戻す”能力である【ムーンライトフラワー】が発動し、分身は巻き戻され指へと戻っていく。しかし分身は残り4体も残っていた。ウラヌスは弓を2つに切り離し双剣に変えると、接近戦での斬撃攻撃に切り替える。
「しばらく決着はつかなさそうだけど、それはオレっち達にとっての有利状況!」
「リベリオンズに同調してくれた人造人間達が、このコロニーを食い荒らすはずだよ」
ロディは武器を持たずに手を前に突き出した。今のロディは首から下が全て機械で構成されており、故に身体能力も普通の人間より上。更にウラヌスの“声を発した対象の背後に瞬間移動する”能力の【ラヴ・イズ・ヒア】も脅威。この状況が停滞すれば自ずとドボラックとスキンクァは追い詰められてしまう。
「何も、ボク達『色』を持ってる特定の者だけじゃない。それ以外の皆も、それぞれ活躍できるんだよ。『色』を持っていなかったかつてのボク達のように…………あれ? 何か来る?」
スキンクァの分身に近寄ろうとしたロディは、何者かの気配を感じ取った。コロニー全体が少しだけ揺れた事による衝撃は他の3人にも伝わっており、お互い知り得ない勢力を警戒する。
「まさかプルくん……失敗しちゃったの?」
ウラヌスの予感は的中してしまっていた。彼の視界右端にあるビルとビルの間、その路地裏に人影が映り込み、対応するため狙いをよく定めずに矢を放った。だがその人影も矢を放ち相打ちに。
「……リベリオンズのウラヌス。あなたは確か、弓矢と双剣を扱うはず」
人影の正体はミコトだった。不意打ちの先制攻撃が失敗した事には多少驚いており、リベリオンズの戦力が生半可なものではないと再確認もしていた。彼女は路地裏から姿を現し、その背後からも2人が。
「ドボラックさん! スキンクァさん! ラールとネプです。この人も一応、今は味方ですよ」
「お久しぶり~」
ミコトが敵でない事を示したラールだったがネプは変わらずマイペース。しかしドボラックとスキンクァは勝機を掴んだと確信し笑みを浮かべる。言葉を発しているため【ラヴ・イズ・ヒア】の背後への瞬間移動対象になってしまっていたが、ウラヌスは能力を使わなかった。ここにミコトが来たという事は、プルートが出し抜かれたという事。未だ未知数な『星座の白』に迂闊な行動はできないと考え慎重な姿勢だった。
「私達がこの2人の相手をするので。お2人は他の人造人間の排除と、一般人の救出をお願いできますか?」
「言われなくても! というか、お前ウラヌスの前ではあんまり声は出すなよ!」
尚もスキンクァと背中合わせだったドボラックは、後ろ歩きで情けなくその場から立ち去っていく。スキンクァの分身達もたちまち溶けていき、ミコト達に託した様子。
「あーあ……行っちゃったね。どうするロディ」
「決まってるよ。『白』を……奪う」
「じゃあオレっちはかわいい男の子2人を狙うよ!」
ウラヌスとロディは切り替えも早かった。半ばウラヌスの独断で戦闘が始まる予感。ウラヌスは小走りでラール、ネプの元に向かい。ロディとミコトはお互いゆっくりと歩きながら近づいていった。
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