第6話
裕太、調理師目指すのか❓
久しぶりに遊びに来た叔父は、
ちょっと話そうか。と穏やかに口を開いた。
…洋ちゃんが、久しぶりに遊びに来るなんて、
やっぱおかしいと思ったんだよね💦
母さんから、聞いたの❓
母の弟の洋介は、
母の実家の洋食店を祖父と一緒にやっている。
俺は小さい頃から、そこが大好きだった。
静かで落ち着いてて、
祖父が作る料理は、ファミレスなんかより
ずっとずっと美味しくて、
高3になった秋、
初めて両親に料理をやりたい。と打ち明けた。
正直、今まで料理なんて食べるの専門で、
家ではおろか、家庭科の調理師実習さえ真面目に参加していない。
それでも将来なりたい職業を考えたら、
祖父や洋介と同じ洋食の料理人だった。
裕太、
辞めろ。って言いに来たんじゃないよ。
むしろ逆。
応援しに来た。
裕太の広いとはいえない自室の床で、
洋平と向かい会ってる。
いつも穏やかで静かに話す洋平は、
今日もゆっくりと優しく語りかける。
今日は、裕太に秘密を打ち明けに来たんだよ。
誰も、知らない秘密。
裕太にだけ教えるね。
爺ちゃんがやってる
洋食小山
将来 裕太は継いでくれる❓
え?でも、あそこは洋ちゃんが継ぐでしょ?
俺、料理やりたい!って言ったけど、
小山で働くとか跡を継ぐとか
そんな風に考えてた訳じゃない。
小山は好きだけど、大好きだけど、
あそこは洋ちゃんが継いで、
んで、俺は将来ライバル店を自分で作るから!
洋介の提案が、
裕太に料理人へのレールを用意してあげる。と云う、優しさなのだと勘違いした。
ちゃんと腕を磨いたら、
将来の居場所を保証するよ。と云う
優しい洋平が思い付きそうな甘え。
裕太は、ちゃんと自分で頑張るから!
真剣に進路を考えて出した道だから!と
自分の熱を伝えたかった。
違うよ、裕太。
これは、お前の為じゃなくて、
僕の逃げ道なんだ。
お前が、料理をやりたい。って言ってくれて、
僕は心底嬉しいんだよ。
そして、ホッとしてる。
ちょっと興奮気味に、自分の想いを口にした
裕太の手を取って洋平は話続ける。
裕太、
僕 ゲイなんだ。
…男の人が好きなんだよ。
静かに語る洋平の手は震えてる。
父さんには…爺ちゃんには、
生涯現役で居て欲しい。
だから、父さんが店に立ってる間は、
あの店は父さんの店で、
…ゆくゆくは僕が受け継ぐかも知れない。
でも、僕はゲイで、
将来 家庭を持つことはないんだ。
当然、子供も出来ない。
だから、裕太が、
料理人を目指すなら、
いつかあの店を、爺ちゃんの
洋食小山を継いでくれると嬉しい。
思っていなかった洋平の告白に
裕太の思考回路はついていけなかった。
ただ、声を震わせて語る洋平の告白を
冗談に出来るほど薄情でもなかった。
将来、祖父の店を継ぐのは、
本当のところは嬉しい。
裕太にとって、あそこが目指すべき場所だから。
だから、祖父と洋平に認めて貰えるのなら、
それは願ったり叶ったりではある。
それよりも、洋平が実はゲイ。って事の方が
裕太にとっては衝撃だった。
洋平は裕太の母の5歳年下の弟で、
現在32歳だったかな?
そろそろ身を固めてくれないかしら〜。と
裕太の母も心配してた。
穏やかで物腰も柔らかく、人当たりも良くて優しい。
ルックスだって、年齢の割に若く見えるし、悪くない。
多分、学生時代とか普通にモテたと思う。
けど、今まで洋平に付き合ってる人がいるとかって話は聞いた事がない。
子供の自分の耳に入らないだけだと思っていたけど、洋平のカムアウトを聞いて納得した。
裕太、ビックリさせてごめん。
でも、真剣に将来、店を継ぐ事考えて欲しい。
進学の事は、姉さんに僕からも後押ししておくから大丈夫だよ。
言葉の通り洋平は、裕太の母に話を付けてくれて、裕太の調理師専門学校進学の後押しをしてくれた。
それから、調理師学校時代、
裕太は洋平と密に連絡を取るようになった。
そして2年後の春。
無事、調理師免許を取得し、
神戸の洋食店に就職も決まった。
免許取り立ての自分が洋食小山に入ったら、
きっと甘えて駄目になる。と判断して、
敢えて遠方に就職した。
その頃には、
洋平がゲイである事は受け入れていたし、
祖父が引退したら、小山を手伝おう。と決めていた。
で、洋平に恋人がいる事も知った。
ゲイの世界ではパートナーっていうんだっけ?
彼の話をする洋平は幸せそうで、
こんな話が出来るの裕太だけなんだよ。と
ここぞとばかり惚気る。
湊くん。という洋平のパートナーは、
洋平より11個も年下なのに、爽やかで落ち着いてて、超イケメンらしい。
実際に会った事はないので、
色眼鏡ってやつだな。と裕太は話し半分で聞いてる。
だって、俺と4つしか違わない男が、クリスマスに薔薇の花束とか送るか⁉️
ちょっとキザすぎて逆にヒクってゆうか面白い。
そのくせ、バレンタインに洋平が手作りチョコレートケーキをプレゼントしたら、泣いて喜んだりするらしい‼️
カッコイイのか可愛いのかどっちだよ!
洋平はカッコ良くて可愛いよ💕って言う。
わかんねぇ!つーの。
ま、洋ちゃんが幸せならいいや。
今度、そっち帰った時は会わせてね!
なんて言ってたのに。
その約束は果たされる事はなかった。
その年の冬。
買い出し中の洋平が歩く歩道に
暴走車が突っ込んだ。
一瞬の出来事だった…。
優しい恋 佐倉由乃 @yumeko_fujoshi
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